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2015年10月19日

笈川幸司さんの日本語指導に見るソーシャル・ネットワーキング・アプローチ

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス



(動画はポーランドでのご講演)

冒険家の皆さん、今日も灼熱の砂漠で秘密の井戸から水を盗み飲んでいますか?

最近、家からインターネとにほとんどアクセスできない状態が続いており、ろくにブログの更新ができずに失礼しております。

さて、先日、笈川幸司さんのご講演を聞きに行きましたので、簡単に感想を書いておきたいと思います。

笈川幸司さんはご存じの方も多いかと思いますが、漫才師や国会議員秘書などの多彩な世界を経験されたあとで、日本語教育の世界に入ってこられた方です。特に漫才の修行で磨かれたと思われる、プロの話術には脱帽します。こんなに笑いの取れる日本語教育の講演というのは初めてでした。

これまで僕は笈川さんとは接点がなかったのですが、行ってみると、単にFunnyという意味だけでなく、interestingという意味でも非常に面白い部分がありました。それはご自分ではあまり意識していらっしゃるかどうか分かりませんでしたが、當作靖彦先生のソーシャル・ネットワーキング・アプローチに非常に近い考え方を持っていらっしゃることです。

ソーシャル・ネットワーキング・アプローチというのは、このブログでは何度も取り上げているので「またか」という声が聞こえるようですが、初めての方もいらっしゃるかもしれないで簡単に書いておくと、ようするに「畳の上で泳ぎ方を教えるのではなく、まず海に放り込んでしまおう」という考え方です。

もちろん、実際に水泳の練習でそんなことをするのは大変危険ですが、外国語の勉強に限れば、このブログで取り上げているようなさまざまな補助ツールがあるので、実はけっこうコミュニケーションができてしまうのです。

例えば僕は今週末にロシアに出張に行くので、日本語の分かるロシア人の主催するグループで、Google翻訳などを使いながらロシア語でコメントしたりしています。そうすると「это」は「これ」らしい、とか「я」は「私」っぽいけど、違う形になることもあるらしい、とか初歩的なところは想像がつくようになります。
https://www.facebook.com/groups/1504780866406515/permalink/1663431790541421/
このリンクはFacebookのアカウントがあれば誰でも読めます。料理の動画に「和食が大好き」というキャプションがついていたので、「和食は僕も大好きですが、これって和食?」と聞いたつもりです。僕のロシア語が正しいかどうかはともかく、回答を見ればすくなくともコミュニケーションが成り立っているのはお分かりになるでしょう。

と言っても、ソーシャル・ネットワーキング・アプローチは別にインターネットを使うことだけに限定されたものではなく、アナログの文通でも、実際に相手に会ってもいいので、「つながる」というところまで授業でやりましょう、という考え方です。

笈川さんも正規の大学などで教えていらしたので、上記の僕のロシア語のやり方を推奨していらしたとは思いませんが、それでも、言葉の端々に従来の先生がたとは違う新しい世代の教え方が見て取れました。

特に、笈川さんが教えていらした中国のある学生さんのお話が非常に印象的でした。その学生さんは、20人のクラスでいつも順位は20位で、笈川さんの話によると、もう日本語の勉強をやめたいとまで思っていたそうです。それに対して、笈川さんがした対応は、以下の4つです。
1.とりあえず朝1時間一緒に走って、その間、彼の日本語を聞く。笈川さんは相槌を打つだけ。
2.かばんを持ったりして、みんなのサポート役になるように指導。
3.日本人留学生と旅行に行かせた。
4.日系企業でアルバイトさせた。
日系企業のアルバイトを終えた頃には、彼はすっかり見違えたように積極的な質問をするようになり、今は東京大学の博士課程に在学しているそうです。

ここで留意したいのは、1から4のどれを見ても、笈川さんは従来の意味では「教える」という仕事をしていないことです。

そして、そのどれもが、「日本語話者との接点を作る」、つまり「つなげる」という仕事であることです。(1に関してはつながる相手がご自分なのですが、日本語教師としての専門性の必要な関わりではないので、とりあえず日本語話者とのつながりと見てもいいでしょう。)

つまり、まさにソーシャル・ネットワーキング・アプローチなわけです。

ちなみに僕の提唱している「冒険家メソッド」は、こうした「つなげる」という部分もソーシャル・メディアを使えば自分でもできるよ、という考え方です。しかし、笈川さんのいらした中国では国外の主なソーシャル・メディアへのアクセスは遮断されてしまっているので、やはり笈川さんのように日本語教師がその部分を担うのが、ごく自然な考え方ではないかと思います。

そして冒険は続く。

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posted by 村上吉文 at 01:31 | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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