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2015年09月09日

急増する冒険家



冒険家の皆さん、今日も熱気球をあげてそこから双眼鏡であたりを偵察していますか?

さて、Facebookに「日本語」(The Nihongo Learning Community)というグループがあり、先日、そこの会員数が一万人を突破したというので、このブログからもお祝いを申し上げたいと思います。

このグループは単なる交流サイトではなくて、日本語教育の有資格者のみが学習者に指導していいということになっています。もちろん、ソーシャル・メディアで自分の関心のあるアニメや武道について日本語で交流することも冒険家の皆さんが日本語力を伸ばすには非常に役に立つことなのですが、そういう一般の交流サイトでは日本語以外のコンテンツが中心なので、それを語る日本語については学習者が質問しても質の高い回答が得られるとは限りません。そこで、冒険家の皆さんは、「日本語を使う場所」と「日本語を学ぶ場所」を分けて使うわけです。

これは日本語学習に限ったことではなく、たとえば僕もハンガリーの質問サイトで日本語について質問があった時はハンガリー語で答えたりして、そこは僕にとって「ハンガリー語を使う場所」という位置づけになっています。ところが、そこで相手の反応の中で分からない表現があったりすると、ハンガリー語学習グループに行って質問したりします。

今まで、Facebook上には「学習者が日本語を使う場所」というのはいくつかありましたが、こうした専門家集団による日本語学習に特化したグループというのは今までになかったので、ソーシャル・メディアを使って自律的に外国語を学ぶ「冒険家」のみなさんにとっては、一つの有効な道具になってくれているようです。

さて、この「日本語」グループは管理人さんがご自分で「分析屋」と言っているぐらい、さまざまなデータを公開しています。そこで、たいへん興味深い事実がいくつもあるのですが、中でも僕たち国際交流に関わる人間が注目しなくてはならないことは、学校で学んでいる学習者の数と、こうしてオンラインで自律的に学んでいる学習者の数は、必ずしも比例するわけではない、ということです。

これは以前、このブログでも書いたことがありますが(参考資料を参照)、この当時は中東に住んでいたので、中東という域内での比較になっています。

ここでは、国際交流基金の日本語教育機関調査のデータと、Lang-8という作文添削SNSでの国別ユーザー数を比較して、サウジアラビアが非常に特殊な状況にあるということを示しました。要するに、教育機関で勉強している人に比べて、オンラインで自律的に勉強している人がサウジアラビアには非常に多いのです。つまり、日本語学習のニーズを学校が満たしていないので、独習者をきちんとケアすることができれば、学習者数が伸びる余地が非常に大きいということを意味しています。

僕は今、中東欧の日本語学習に関心があるのすが、今回のFacebook上の「日本語」グループで非常におもしろいと思ったのも、やはり機関調査と全く違う結果になっていることです。

たとえば、基金の機関調査によれば、ヨーロッパで日本語学習者数が一番多いのはフランスで、二位がイギリス、三位がドイツです。これは人口の大きさや日本との関係で考えれば、それほど驚くような状況ではないでしょう。しかし、前述の「日本語」グループのアクティブユーザー(自己紹介で国名を名乗った人 2,022名)内の国別順位では、全く違う風景が見えてくるのです。このグループの分析で、ヨーロッパ最大の国はどこだったと思いますか?

答えはコソボです。

こうした結果を予想できた人は、ヨーロッパで日本語教育に関わっている人の中にもいなかったことでしょう。だって、コソボには日本語教育機関はひとつもなく、当然、ヨーロッパ日本語教師会の支部があるわけでもなく、僕の知っている限り、個人で日本語を教えている人もいなかったからです。もちろん機関調査でも学習者数はゼロと報告されています(実際に日本語学習機関で学んでいる学習者はいないので、この調査自体は正確です)。

上記「日本語」グループの国別学習者数ランキングのヨーロッパからの参加者数は以下、ポーランド、ロシア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニアと続きます。

イギリスやフランス、ドイツなどの日本語教育大国がこうしたランキングの上位に出てこないのは、もしかしたら日本語学習ニーズを学校が満たしているからかもしれません。実際に、ランキングの上位に出てくるボスニア・ヘルツェゴビナやマケドニアも最近までコソボと同じく「日本語教育機関ゼロ」としてカウントされていました。

しかし、学校を通した調査だけでは見えてこない、別の世界もあることが、こうした調査などで見えてきます。僕たちは、このことをもう少し真剣に考える必要があるのではないかと思います。

たとえば日本語教育機関の人たちは、オンラインコースを開講すればこうした地域の人たちを顧客にすることができるでしょう。

そして、日本語学習者数を増やしたい場合は、こうした人たちを丁寧にケアしていく必要があります。というのも、僕がこのブログで紹介している「2年で日本にも行かずに独習で日本語能力試験N1に合格!」というようなトップクラスの人たちの周りに、広大な裾野が広がっているからです。彼らの中にはちょっとした支えや動機づけがあれば日本語学習が続けられるのに、孤立しているせいで挫折してしまう例がたくさんあるのです。

想像してみてください。あなたが英語を勉強したいと思っていて、でも毎日の仕事や家事のせいでなかなか上達しないという情景を。ハリウッド映画を見るのが好きで、その半分でも理解できるようになっればいいなあ、と思っています。自発的に英語学習を初めてみたものの、そもそも生活圏内に英会話教室もないし、毎日の忙しさに流されて、いつの間にか勉強から離れてしまっています。今までに、2回か3回、英語学習を始めてみたものの、同じような感じでやっぱり続きませんでした。

こういう体験、よくありませんか?

しかし、そういうところに、たとえば英国の国際交流団体、ブリティッシュ・カウンシルが接触してきたらどうでしょう。

最初にあなたのニーズを聞いて、ビジネス英語なのか、ハリウッド英語なのか、シェークスピアなのか、もしかしたらハーレクイン・ロマンスなのか、そうしたコンテンツの選択肢と、あなたの英語レベル、週に何時間ぐらい勉強できるのかなどによって学習カリキュラムを提案してくれ、定期的に進度もチェックしてくれます。そして、進度が遅れてきたらさりげなく励ましてくれ、動機が下がってきたら学習コンテンツではなくて楽しめるコンテンツやオンラインイベントを提供してくれて、また一気に盛り上げてくれます。もちろん、1人で勉強するのが苦手な人は、そのコンテンツを使って学んでいる他の学習者とも交流することができますし、わからないところをお互いに質問し合ったりすることもできます。オフ会もあるし、オンラインで顔を見ながらそのコンテンツについて話し合うこともできます。しかもそれが全部、無料。

まあ、これは空想にしか過ぎないわけですが、しかし、オンラインで無料で学べるコンテンツがこれだけネット上にあふれている今、そうしたリソースに横断的な知見があり、コミュニティー運営のノウハウがあれば、こうしたことはそれほど難しいことではありません。

そうして、こうした支援を待っている日本語の独習者たちの姿は、確実に存在します。しかも、僕たちの見えている世界とは全く別の形で。こうした皆さんを支援するにはどうしたらいいのか、一緒に考えていきませんか?

そして冒険は続く。

【参考資料】
Facebook「日本語」グループ(The Nihongo Learning Community) https://www.facebook.com/groups/The.Nihongo.Learning.Community/

むらログ: 隠れた日本語教育大国サウジアラビア
http://mongolia.seesaa.net/article/200224652.html

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posted by 村上吉文 at 11:48 | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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