2014年11月01日

ファーストフード的におまかせで勉強したいですか?

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

さて、冒険家メソッドにかぎらず、学習者が自分でコースデザインをする自律的な学習方法について、ときどき「コースデザインなんかお金を払って教師という名の職人にやらせればいいんだよ。スローフードでしっかり管理して食べたい人もいれば、マクドナルドで食べる余裕しかない人だっているんだから」というような批判を聞くことがあります。

まあ、そういう考え方が分からないわけでもありません。実を言うと、僕自身もそのように考えていた時期もあります。特に、忙しい社会人などが勉強する場合、「俺はただ喋れるようになりたいんだよ。教材とか学習方法とかは先生のおまかせに従うから、とにかく喋れるようにしてくれ」という人もいるんじゃないかと思っていました。というより、実際にそう考えている人はたくさんいます。

しかし、ここには学びに関する大きな誤解が潜んでいるように最近は思うようになってきました。

というのも、食事と違って、学びにマクドナルド方式はないからです。

人間が生命を維持するために必要な栄養の補給をする場合、顎や歯の問題がある場合は流動食がありますし、たとえ消化器官が病気で機能しないようなときでも、点滴などを通して直接的に体内に栄養を取り込むことができます。人間の体が栄養を補給さえできれば、こういう極端な場合でも生命を維持することができるのです。

それに対して、学びにはそんな簡単な方法はありません。映画『マトリックス』にはディスクにあるデータを人間の脳にインストールすることができましたが、まだ何年かはそういう方法は実現しないでしょう。ファーストフードでは食品の仕入先も仕入れ方法もお任せして安く早く栄養を補給することは可能ですが、学びにおいてはそのような方法はないのです。

つまり、外国語を身につけるには、相当な時間を投資しなくてはなりません。その中でも日本語は、もっとも難易度の高い言語になっていることもあります。

これは母語などにもよるので一概には言えないのですが、たとえば英検一級程度まで日本語レベルを上げるには英語ネイティブの比較的優秀な人材の場合、2200時間程度かかるという資料もあります(正確な条件などは参考資料でご確認を)。 

日本語能力試験の場合、旧試験では一級に合格するには900時間の学習時間と設定されていましたが、これは国内で、かつ漢字圏を多く含む時間数だったと思います。

いずれにせよ、幅広い状況で日本語を使いこなせるようになるには、1000時間程度の付き合いが必要になるのです。1年365日、毎日1時間勉強したとしても3年間のお付き合いです。

3年間、毎日マクドナルドが食べられますか?

食べられる人もいるでしょう。そういう人はもともとマクドナルドが大好きな人なのです。健康的にどうなのかは別として、そういう情熱がある人はそれでもいいでしょう。あるいは、マクドナルドは嫌いなんだけど、そこにいつも来ているお客さんと話すのが好きだから我慢してマクドナルドに3年間通い続けることができる人もいるかもしれません。

でも、そういう情熱がある人はかなり特殊だし、そのコミュニティが好きで通い続ける人のことを考えたら、カレーも牛丼も何でも好きなものを食べられる方がいいですよね。

だからこそ、海外の一般的な公開講座では、一年で学習者の数が半減したり、あるいはそれ以下に減ってしまったりするのです。

教室に来なくなった人たちはどうなったのでしょうか。中には一斉授業の限界に気づいて、その時点で冒険家に華麗な転身を遂げた人もいるでしょう。しかし、一斉授業以外の発想がその学習者にない場合、教室に来なくなるということは、学習をやめるということを意味します。

つまり、提供された学習方法にたまたま適性を持っている一部の人以外にとっては、自分でコースデザインしない限り、学習は続けられないのです。卒業証書のかかっている教室ではもう少し学習を続ける力も強くなるかとは思いますが、それは要するに強制力が強いということにすぎません。

別に大学のコースデザインが悪いというつもりはまったくないのですが、ある人にとってパーフェクトなコースデザインが、別の人にとっても完璧であるとは限りません。昔は学生はみんな同じようなものを食べて同じテレビを見て同じような親に育てられていたのですから、完璧なコースデザインがひとつだけ存在すればそれも充分に機能したことでしょう。しかし、これだけ世の中が多様化してしまうと、みんなが同じカリキュラムで勉強するということにはかなりの無理があります。

じゃあ、優秀な先生が学習者一人ひとりのコースデザインをしてあげることができるでしょうか。まあ、それも無理とは言えないと思いますし、これだけリソースが有り余っている時代には、語学教師の仕事はむしろそういったコンサルタントに近いものになるのではないかと思います。しかし、それが難しい場合には、やはり学習者が自分でコースデザインを考えるしかないのです。

ということで、「ファーストフード的におまかせで勉強したい」という学習者に対しては、「やれるものならやってみろ」と僕は言いたいですね。マクドナルドに3年間通えて、しかも健康的に過ごせるのなら、それはそれでハッピーなことです。そして御多分にもれずそれが無理だったら、それが自分で自分の学びに関して考える入口になるでしょうから。

そして冒険が始まる・・・。

【参考資料】
英語話者に対する言語習得難易度表:日本語は最高難度 - A Successful Failure
http://d.hatena.ne.jp/LM-7/20090919/1253362856

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posted by 村上吉文 at 19:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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