2014年09月05日

デジタルバッジ

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス




冒険家の皆さん、今日も山の上の深い谷間に木を切り倒して橋にして恐る恐る渡っていますか?

さて、冒険の動機というのは他人や組織に認めてもらうためのものではなくて、あくまでもその人が内なる欲求から掻き立てられるようなものだという印象があります。ですから、他者からの評価はあくまでも結果であって目的になってしまってはいけないのですが、それでも、評価してもらえるのは嬉しいものでしょう。

教育の分野でも、最近注目されているのが「電子バッジ」です。カリフォルニア大学などの例がメディアに載るようになってきています。

実は僕も最初は教育分野でバッジなんて変だなあと思っていたのですが、そういえばFoursquareというサービスを思い出してみると、確かに教育に応用できることは想像にかたくありません。Foursquareというのは今はSwarmという名前になっていますが、簡単に言うと自分の位置を共有するサービスで、空港やレストランなどに入った時にスマホなどで「チェックイン」すると、それが自分のFoursquare上の友達に共有されるというものです。

Foursquareのバッジのリストはこちら(http://www.4squarebadges.com/foursquare-badge-list/)で見ることができますが、今のところ、なんと250種類ものバッジがあります。とにかくどこでもいいので最初にレストランなり公園なりに「チェックイン」すると、それだけで「Newbie」というバッジがもらえますし、それ以降も定期的に利用していればバッジがどんどん増えていきます。

もちろん、実物のバッジが郵送されてくるわけではなく、バッジのマークが表示され、それが自分のデータに記録されるだけですが、「プラスの評価が示される」という意味では、従来のバッジと同じです。

英語版wikipedia(現時点では日本語版がまだないので誰か書いてください)では、デジタルバッジの機能として「参加のための動機付け」「協働のための動機付け」「承認と評価」「成績証明書(Credential)」などが挙げられています。

最後の成績証明書としての機能は、きちんとやろうとするとちょっと面倒くさいかもしれません。その根拠などを外部に証明できるようにしなければなりませんから。でも、それ以外の面ではもっとカジュアルにできそうですよね。

僕が今感じていることは、このデジタルバッジは、今までの定期テストなどよりも、学習者の多様性に相性があり、自律性を高めるのにも役に立ちそうだな、ということです。というのも、例えば「facebookで初めて母語話者にコメントしました!」とかいうようなバッジなら、その会話をしているURLなり画面キャプチャーなりで評価対象にできますし、CBIなどで「キメ台詞を自分の母語に訳しました!」などというバッジを発行することもできます。

もちろん、従来の一斉授業でもデジタルバッジはとても役に立つとは思うのですが、多様性のない授業では同じ試験問題を作成して、同じ評価基準で成績を出してしまうほうがずっと簡単ですよね。自律学習のような多様性の豊富な授業では、こうした評価ができないためにポートフォリオ評価などが中心になってきたのですが、教師や学校がある程度公式に示す評価としては、デジタルバッジは試験結果に代わるものとして有効なのではないでしょうか。

また、単に「四年勉強しました」などと時間ベースで評価したり、どれだけ漢字を覚えたかなどの知識の量をベースにした従来の評価基準よりも、「実際に日本人と話したことがある」などの評価はその本人の課題遂行能力を直接的に表現するものですから、キャンドゥに基づいたシラバスにも相性が良いように思います。

こうしたデジタルバッジへの批判としては、僕が今読んでいるデシの名著『人を伸ばす力』にも出てくる例ですが、デジタルバッジをもらうことが目的になってしまうと、学校を卒業したりして報酬がもらえなくなると学習をやめてしまうという可能性が指摘されています。これは前にも書きましたがアンダーマイニング現象といって、デシの実験の様子は以下でも読むことができます。
http://cs-d.awg.co.jp/csd/common/artcl/artcl_grp?artcl_grp_code=0201051#a_article_21

ただ、デシの例は、僕の知る限り、金銭での報酬だったのではないかと思いますので、こうしたデジタルバッジによる評価でも同じことが起こるのかどうかは分かりません。少なくとも、以前ご紹介した『学ぶ意欲の心理学』ではアンダーマイニング現象とは逆に、動機付けがないところでは外発的動機付けが有効なので、学習の入り口でデジタルバッジを発行するのはいいと思いますし、僕が実際にFoursquareを利用してみた実感でもあります。そして、実はその後Foursquareを使い続けているのは、少なくとも僕にとってはバッジがほしいからではなく、その本来の目的である、「自分の行ったところを共有する」という目的に効果的だからです。あくまでも僕個人に関しては、仮にFoursquare(今のSwarm)がバッジシステムをやめたとしても、使うのをやめるということにはならないと思うのですよね。

ということで、僕も秋からの授業でさっそく使ってみたいと思います。

なお、国際交流基金が開発したJMOOCの「Nihongo Starter」でもデジタルバッジによる評価システムは利用されており、学習者がバッジを共有して自慢しているところなどが報告されています。

そして冒険は続く。

(コメントはfacebookツイッターなどでお願いします)


【参考】
むらログ: 学ぶ意欲の心理学
http://mongolia.seesaa.net/article/360807316.html

UC Davis's groundbreaking digital badge system for new sustainable agriculture program @insidehighered
https://www.insidehighered.com/news/2014/01/03/uc-daviss-groundbreaking-digital-badge-system-new-sustainable-agriculture-program

Digital badges - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Digital_badges
posted by 村上吉文 at 12:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック