2007年04月17日

日本語教育振興協会の有資格者

「どうしてこんな当たり前のことをいまさら書くのか」と不審に思う人もいるでしょうが、日振協のことを妙に敵視する人たちがいて、そこに共通するところに根深い問題点が見受けられますので、今さらではありますが書いておきます。なお、私は日振協とは何の関係もありません。日振協認定の学校で働いていたこともありますが、それは私のキャリアの中では一割未満の非常に短い期間にすぎません。
日振協を問題視する非常によくあるパターンは、日本語教師養成講座を選ぶときにささやかれるこんな台詞です。いわく「日振協の有資格者になる必要なんてない。日振協認定校は国内の日本語教育機関のうちの二割に過ぎない。つまり、8割は日振協と関係ないんだから、有資格者になれない養成講座でも大丈夫」。

このうち、8割近くは日振協と関係ないというのは、事実です。平成17年の文化庁の調査でも、日振協の認定校は全体の2,047校のうちの415校という数字になっています。しかし、養成講座を選ぶときに有資格者になれないことが問題ではないかというと、そんなことはありません。

というのも、上記の調査に出てくる「国際交流協会311機関」、「任意団体278機関」、「地方公共団体73機関」、「財団法人・社団法人51機関」、「特定非営利活動法人49機関」(全体の3割以上)などはボランティアが多く、有償だったとしても交通費しか出ないことも珍しくありません。つまり、この中の多くは就職先としては数に入れることができないのです。東京だけでも「百数十」のボランティア団体が日本語を教えているそうですから、全国規模だとどのぐらいの数になるのでしょうか。
東京日本語ボランティア・ネットワークとは
日本語ボランティア団体は、街で見かける外国人の数と比例するように過去数年間で急速に増加し、現在、東京だけでも百数十の団体が活動をしていると言われています。
http://www.tnvn.jp/002tnvnactivities/

その他、この調査では「大学等」が625機関(日本語教育機関全体の3割以上)となっています。しかし、大学などで教えるには、日振協の資格だけでは、まだまだ足りません。論文をどこの学会誌に何本載せたとかいうことが採用基準になる世界で、大学院まで行って修士論文や博士論文を書いた人でないと応募資格すらないのが普通です。日本語教師養成講座を出て、これらの職場にすぐ入ることはまず不可能だと思っていた方が現実的です。大学院にすぐ就職できるという日本語教師講座はありませんので、養成講座選びの時にはここは無視した方がいいです。採用されるのは養成講座ではなく、大学院などの出身者ですから。

以上でお分かりのように、「養成講座を出てプロの日本語教師になりたい」という人にとっては、日振協の有資格者になることはまず第一歩として絶対に必要です。

日本語教師の求人情報を載せている「NIHONMURA」で、今朝の求人情報のうち上から10校を見てみましたが、日本国内のものはすべて「420時間の養成講座」「検定」などが必須とされています。
http://job.nihonmura.jp/
東洋言語学院の求人http://job.nihonmura.jp/2007/04/post_c12f.html
明生情報ビジネス専門学校http://job.nihonmura.jp/2007/04/post_25c5.html
マネジメント・アンド・コミュニケーションズ・コンサルタンシー株式会社 (MACC)http://job.nihonmura.jp/2007/04/macc_355f.html
ビジネス日本語協会[BNA]http://job.nihonmura.jp/2007/04/bna_1b8f.html
これらのうち、一番下の「ビジネス日本語協会」は就学生でなくビジネスパーソンが主な対象ですから日振協認定ではないだろうし、「MACC」というのも同じようにビジネスパーソン対象です。つまり、日振協認定校でなくても、就職の時に日振協の有資格者になっていないと就職試験すら受けられない現状になっているわけですね。

ちなみに、「早稲田エデュケーション・タイランド」のように、海外なのに日振協の資格を要求しているところもあります。

つまり、もはや日振協の定める資格は、事実上のスタンダードとなっていると言っていいでしょう。「日本語教育振興協会認定の日本語教育機関は2割しかない」というのは事実です。しかしプロになりたい人に対して「だから、養成講座は日振協の有資格者になれなくてもいい」というのはちょっと問題があるのではないかと思っています。

日本語教師志望者向けの雑誌などで日振協の有資格者になることが重視されているのは、そういうごく単純な事情があるからであって、決して悪の秘密結社が裏で陰謀をめぐらせているわけではないのです。

しかしながら、日本語教育能力検定に合格させるにしろ、規定を満たした420時間の養成講座を開くにしろ、日振協の有資格者を輩出するには、きちんとしたコースデザインや優秀な教員が必要です。日振協の資格を必要以上にあしざまに言う養成講座は複数知っていますが、私の見る限りそうした能力や人材を欠いている機関が多いようです。良心的な講座だったら「既に有資格者になっている人が対象です」などと明記してあっても、「日振協の資格は役に立たない」などとは宣伝しないものです。

もし、あなたが受講を考えている養成講座が「日本語教育機関のうち8割は日振協と関係ないんだから、有資格者になれない養成講座でも就職できますよ」などと宣伝していたら、そこは避けておいた方が無難です。

参考になるページ
(1) 全体の動向
 2,047機関・施設となっており,前回調査(平成16年度:1,816機関・施設)と比べ,231機関・施設(12.7%)の増加,4年前(平成13年度:1,589機関・施設)と比べ,458機関・施設(28.8%)の増加となっている。

(2) 機関・施設等別の状況
 一般の施設・団体が1,422(69.5%)と最も多く,以下大学が434(21.2%),短期大学が98(4.8%),高等専門学校が54(2.6%),大学院が39(1.9%)の順となっている。
 そのうち,一般の施設・団体数について見てみると,(財)日本語教育振興協会認定施設が415(29.2%)と最も多く,以下国際交流協会(グループA及びBの合計)が311(21.9%),任意団体が278(19.5%),教育委員会(グループA及びBの合計)が131(9.2%),地方公共団体(グループA及びBの合計)が73(5.1%),学校法人・準学校法人が56(3.9%),財団法人・社団法人が51(3.6%),特定非営利活動法人が49(3.4%),株式会社・有限会社が20(1.4%)の順となっている。
http://www.bunka.go.jp/1aramasi/17_nihongokyouiku/gaikoku_2.html

機関・施設等数 教師数 学習者数
大学等機関 大学院 39 191 1,248
大学 434 5,118 41,470
短期大学 98 461 1,842
高等専門学校 54 108 298
小計 625 5,878 44,858
一般の施設・団体 1,422 24,206 90,656
合計 2,047 30,084 135,514
http://www.bunka.go.jp/1aramasi/17_nihongokyouiku/gaikoku_1.html
posted by 村上吉文 at 07:17 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
古い記事ですが、勉強になりました。日振協が事業仕分けでなくなったようですが、これからどうなるんでしょうかね。また勉強させてもらいます。
Posted by 池田敦史 at 2010年10月13日 23:00
コメントありがとうございます。
池田さんって、もしや看護関係の日本語をやってらっしゃる池田さんですか?
Posted by 村上吉文 at 2010年10月13日 23:56
日本語教育振興協会の定める有資格者が採用条件になっている、日本語学校に応募しました。
日振協 資格 有資格者 の意味合いが、このむらログの開設を読んでも理解できません。
私は、福岡成蹊学園(福岡外語専門学校)の基金訓練615時間を受講終了したものですが、その有資格者に該当しますか?
また10月検定、1月検定がありますが、そのいずれの日本語教育能力検定が日振協と関係があるのですか?
Posted by 古賀 淳典 at 2012年03月11日 11:19
古賀さん、コメントありがとうございます。「福岡成蹊学園(福岡外語専門学校)の基金訓練615時間」のシラバスが分かる資料はありますか? (名前と時間数だけではちょっと判断できませんので)
それから、日本語教育能力検定試験は10月です。「1月検定」とは何でしょうか。「全養協日本語教師検定」のことでしたら、内容はいいものかもしれませんが、知名度が低いので海外ではほとんど効力はないものと思った方がいいと思います。

よろしかったらこちらもご覧ください。

むらログ: 日本語教師の養成講座選びはとりあえず経営者や講師の名前でもググれ。
http://mongolia.seesaa.net/article/255967695.html


むらログ: 英語の教師が日本語教師になるなら420時間よりも検定がおすすめ
http://mongolia.seesaa.net/article/251720097.html
Posted by 村上吉文 at 2012年03月11日 19:21
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