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2013年12月30日

成毛眞『勉強上手』



冒険家の皆さん、今日もナイフ一本でワニと戦っていますか?

さて、マイクロソフトの日本社長だった成毛眞さんの『勉強上手』を読みました。けっこう、僕の考えに近いところがあったので、ご紹介しておきます。

同業者の皆さんに一番共有したいのは、ある種の語学教師が得意とする、異なる表現の微妙な違いの説明とかにどれほどの意味があるのか、という疑問です。例えば僕は中学一年の時に英語の授業でBigとLargeの違いを学びましたが、今思えばどうでもいい問題ではないかと思います。BigとSmallの違いが分からなかったらどれだけ大変かを想像してみれば、みなさんも同意してくれるのではないでしょうか。少なくとも中学一年で学ぶにはもっともっと大切なことが山ほどあるはずです。

この『勉強上手』では、ベストセラーになった各種の勉強法を検討する章があるのですが、そこで、僕も以前ご紹介したGoogle日本支社社長、Google本社副社長の村上氏の本をとりあげ、以下のように書いています。

 私もマイクロソフトに入るまで英語を話せなかったが、独学で話せるようになった。それも村上氏と同じような方法で勉強したのである。単語カードもノートもマーカーも一切使わなかった。(中略)
 英語や英会話の教師、英文学などで英語を専門的に学ぶ人、翻訳家や通訳を目指す人など、英語を職業とする人の勉強法と、外資系で働く人たちの英語の勉強法は別物だ。(中略)
 英語教育の専門家よりは、私たちのような外資系にいた人間のほうが、より実践的な「使える英語」を教えられるのではないかと思う。(中略)
 英語を職業とする人たちは、文法をきっちりと学び、意味のない英文や使えない単語を暗記する必要がある。
実は僕もパナソニック・アメリカの社長だった日本人に「日本語能力試験の一級(今のN1)なんて俺でも満点は取れない。うちで働くのなら日本語は二級で充分」と言われたことがあります。もちろん、それは必要条件であり、充分条件ではないわけで、仕事には企画力やら正確性やらも必要になってくるかと思いますが、少なくとも一流の日本企業のトップや、Googleやマイクロソフトなどのグローバル企業の日本人社長でさえ、語学教育で常識とされている細かいニュアンスの違いなどを「必要ない」と明言していることには留意する必要があります。

もちろん、成毛氏の言うように、翻訳家などはそういった微妙な表現の違いを正確に理解できないと、きちんとした訳書はできないでしょう。ですから、そういう職業を目指す人なら、細かいニュアンスの違いなども勉強する必要があるかもしれません。

しかし、そういうことが求められる職業って、じつはそれほど多くないのではないでしょうか。そして、教室で日本語を教える教員も、ただ「教科書に載っているから教える」のではなく、自分の学生がどんな職業を目指しているのか、その職業ではどんなレベルの日本語が必要とされているのかを常に考え続ける必要があります。

さて、成毛氏はそれとは別にソーシャル・メディアについてもいくつか書いているのですが、これも僕と似た感覚のようなので、ご紹介しておきます。

 それでは、どのSNSから始めればいいのか。迷っているぐらいなら、全てやってみるべし、と私はいつもアドバイスしている。(中略)
 SNSをどれだ早く始めるかによって、100万、200万と生涯賃金にどんどん差がついていく。これは煽るわけではなく、実際にそうなってきているのだ。
よく「村上さんってえらいですねー、みんなのために自分の時間を削って情報提供して」とか言われることがあるのですが、何となく違和感があるんですよね。昔から「情けは人の為ならず」って言いますが、やっぱりツイッターで僕をフォローしてくれる人が僕に情報提供してくれることはたくさんありますし、また、僕が業務として広報しなくてはならないことがある時に、そういう人たちがRTしてくれたり、フェイスブックでシェアしてくれたりすることはとても多いです。まあ、それを成毛氏のように生涯賃金で考えたことはあまりありませんでしたが、国際交流基金の上級専門家も2年か3年の任期で、次の契約を得るには再受験しなくてはならず、年に10人も採用されない厳しい世界ですから、広報をきちんとできるかどうかも次の仕事かあるかに関わってくるかもしれないと考えると、もしかしたら、200万円どころの差ではないかもしれませんね。

そして、冒険は続く。


posted by 村上吉文 at 19:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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