2013年12月14日

「デジタルネイティブのための近未来教室」の主題は技術ではなく、教授法だった!

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


Digital natives

冒険家の皆さん、今日もロープの切れそうな吊り橋を駆け抜けていますか?

さて、『ディジタルネイティヴのための近未来教室 ―パートナー方式の教授法―』を読みましたので、簡単にご紹介しておきます。この本の著者、マーク・プレンスキーの名前は「テレビゲーム教育論―ママ!ジャマしないでよ勉強してるんだから」で非常に印象に残っていたので、新作が出たということで、さっそくアマゾンで取り寄せました。残念ながら、現時点ではソニーリーダーストアはもちろん、Amazonキンドルでも電子化されていないようです。

さて、前著の方向性と、今回のタイトルから「教育における技術」が本書の主題かと思っていたのですが、実は違っていまして、良い意味で裏切られました。もちろん、技術はこの本の重要な要素ではありますが、中心にあるのは「パートナー方式」と呼ばれる教授法です。この教授法は技術を使えばより有効に使えるかと思いますが、それはこの教授法の本質ではありません。

では、パートナー方式というのはどんな教授法かというと、先生は教えないのです。そして、教える代わりに、質問します。たぶん、この背景には「知識はすぐに手に入る」「現代の子供は与えられた知識よりも自分で見つけた知識の方が身につきやすい」というような前提があるのではないでしょうか。そして、僕もその時代認識は正しいと思っています。

もちろん、質問にも「レベルの低い質問」と「レベルの高い質問」があり、「〜国の首都はどこか」「そこの主な産業は何か」といったことから、「なぜ戦争は起きるのか」「戦争を防ぐために最も有効な対策は何か」といったことまで、パートナー方式で扱うことができます。

ここでは、従来の「情報リソース」としての教師の役割が大きく変わっていることがわかるのではないかと思います。教師が何かを教えるとしたら、それは質問を通して「何を学ぶべきか」を教えるのであり、それは教科の内容ではもちろんないし、「どう学ぶか」という方法論ですらありません。著者は以下のように書いています。

「たとえ課題の内容が<文章の書き方の学習>であったとしても、紙にエッセイをしたためる以外にも、より適した方法がいくつも考えられることを心に留め、生徒にもそのことをわからせてあげなければならない。生徒の多くはそのことにすでに気づいており、「とにかく、どのような目的を達成すればいいのかだけ教えてほしい。どうすればいいかは自分たちで見つけ出すから!」といった声が生徒の間から聞こえてくる。」
「パートナー方式において利用可能なテクノロジーならどんなものでも使うことは、ちょうどパートナー方式のための質問に答え、動詞スキルを使い習得するのと同じように、教師ではなく生徒の仕事なのである。(中略)
 パワーポイントはどうだろう? それは教師のものではない。それは生徒に使ってもらうものなのだ。」

文中にある「動詞スキル」というのは、要するに「キャンドゥ」です。厳密には違うところもありますが(レベル分けされていないとか)、「スキル」という言葉が明示する通り、能力の記述であり、したがって、課題遂行能力の育成を徹底的に追求しています。たとえば、歴史の授業ですら、歴史の内容そのものを学ぶのではなく、それを通して、未来を予測するスキルなどを学ぶのだそうです。だとすると、歴史の単元も「株式市場の暴落」「戦争の始まり方」などと歴史上何度も繰り返されてきたパターンを、パターン別に学んでいくのが正しい歴史の学び方なのかもしれませんね。時代順ではなくて。

なお、この本では、そうした能力記述を「動詞スキル」と呼び、タブレットやソフトウェアなどの技術的な道具を「名詞ツール」と呼んでいます。そして、動詞スキルは永続的にいつでも必要とされるものである一方で、名詞ツールは常に変化し続けているとしています。

そして、名詞ツールに関しては教師よりも学習者のほうが詳しいので、教師はこうしたツールを利用する必要はなく、むしろ学習者に任せるべきだと主張しています。

語学の学習に関しては、以下のように述べられています。
「語学は、いろいろな意味で子どもたちにとって最も現実的な教科であってほしい。なぜなら、語学は仲間との実際のコミュニケーションに関わるものだからである。生徒はおよそ文学や文法についての語学学習は嫌がるが、仲間と話したり別の場所に新し友だちをつくることは好む。」
「こんにち、語学学習はもはや「いつかそこ(その言語が使われている場所)に行くため」のものではない。外国語の授業では、生徒は仮想的に「そこ」を訪れ、現実的な生活や興味と外国語を結びつけることが可能であり、できるだけ頻繁にそれを行ってほしい。」
このあたり、SNA(Social Networking Aproach)や冒険家メソッドなどともかなり近い考え方のようです。

この本は、技術に関心のある若い教育関係者はもちろんですが、情報リソースが教師以外には乏しかった時代に育ったもっと上の世代の人にもぜひ読んでいただきたいですね。

そして冒険は続く。


posted by 村上吉文 at 21:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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