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2013年12月05日

技術を賢く使うか、愚かに使うか。ブダペストに来て思ったこと。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、こんにちは。

ご挨拶が遅れてしまいましたが、11月10日より、ハンガリーで仕事をしています。
このブログでもご紹介して来ましたように、ハンガリーに赴任することが決まってからほそぼそとハンガリー語の勉強をしてきたのですが、こちらに来てあらためて思ったことが2つあります。

一つは、学習言語の話される地域で勉強するのと、地域外で勉強するのでは全く違うな、ということと、もう一つは、技術が人を強くも愚かにもするのだということです。

一点目は、まあ、今さら言うまでもないことですが、学習言語の話されない地域(たとえばハンガリー語学習者にとってのエジプトとか日本)にいると、勉強しようという意志がないと、全くハンガリー語に触れるチャンスがありません。情報をもらう側が力を入れるという意味で、「プル」と呼ばれることもありますが、まさに引っ張ってこないとハンガリー語の情報が手に入らないわけです。

その一方で、ハンガリーにやってくると、こちらは何もしなくても、ハンガリー語は向こうからどんどん飛び込んでいます。それどころか、こちらが積極的に何らかの目的を達成するにはハンガリー語を理解しないといけないようなことがたくさんあります。

たとえば携帯電話の登録に行くと、こんな表示があります。



これはタッチスクリーンになっていまして、プリペイドカードの購入とか、電話機の購入とか、自分の目的に合わせて番号札を取らないと、サービスを受けることができません。

こうして、ハンガリー語を全く学ぶ意志がない人間でも、ここで生活していく限りは、少しずつハンガリー語を覚えていくことになります。情報を受け取る側の積極的な意志が必要でないという意味で、これは「プッシュ」ですよね。

また、次々にハンガリー語の表現が目に飛び込んでくるので、それが通りすぎて消えてしまわないうちに、何らかの形で「つかまえて」おいて、流行(はやり)の言葉でいえば「ポートフォリオ」に入れておく必要があります。

といっても、そんなことは、あらためて僕に言われるまでもなく、語学学習に少しでも関心のある人ならだれでも知っていることでしょう。

ただ、ここ数年の技術の発展で、この状況に変化が出てきているのではないかと思うのです。それが2点目。

たとえば、とにかく英語圏に留学してしまえば英語が上手になるとか思ってい日本人がいるわけですが、それは今でも有効なのでしょうか。

インターネット以前なら、オーストラリアなりニュージーランドなりカナダなりに行ってしまえば、日本語で手に入る情報は極端に少なくなってしまい、日本の友人ともコミュニケーションできなくなり、現地でできる知り合いや友人は全員が現地人ばかりという、ホームシックにはなっても、語学学習にとっては理想的な環境を整えることができました。勉強する意志が弱くても、現地に行ってしまえば語学は何とかなるというのが、これまでの常識でした。

逆に、ハンガリー語などのマイナー言語の場合は、どれだけ強い意志があっても、現地に行かない限り、学習言語のリソースは限りなく少なく、目で見ることも文字で見ることもほとんでできませんでした。

しかし、今ではたとえふるさとから遠く離れたところにいても、facebookやGoogle+ハングアウト、facetimeなどを通して、古い友人の近況を知ることも、リアルタイムで顔を見ながらコミュニケーションすることもできます。自室に引きこもってネットだけに耽溺していれば、それは母国にいるのとほとんど変わりません。

そして逆に、今では母国にいたままでも、学習言語の話される地域の人達と、学習言語を使ってコミュニケーションすることができるのです。僕自身も、日本にいるときにハンガリー人の日本語学習者と、ハンガリー語と日本語を使いながらハングアウトで話したりしていました。

そう考えると、ここでも「技術はよく使えば薬になり、悪く使えば毒になる」ということが言えそうです。

インターネット以前は、たとえば「母語話者の多くいる地域に行けば外国語は上手になる」のが当たり前だったのですが、今では「現地に行っても意志の弱い人は外国語が上手にならず、現地に行かなくてもやる気があれば外国語で話す機会はいくらでも作れる」という状況になってきているのです。

要するに、「技術を使うほど賢くなる」のではなく、「技術を賢く使う人はさらに賢くなり、愚かに使う人はさらに愚かになる」ということですね。技術がこれほど普及してしまった今、それを「使うかどうか」はもはや問題ではなく、それを「どう使うか」が問われているのではないかと思います。

そして冒険は続く。
posted by 村上吉文 at 14:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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