2013年11月08日

ウェアラブル・コンピューティングは状況論的学習を促進するか。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


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冒険家の皆さん、こんにちは。
あと3日でハンガリーに立つ今日(11/07)、佐々木俊尚氏のセミナー『スマホ、タブレットを超える「ウェアラブル」の衝撃』に行ってきました。

本当に「スマホ・タブレットを超える」衝撃なのかはちょっと分かりませんでしたが、教育や人の学び、特に語学に関しても大きな可能性を持っているの確かであるという印象を受けました。

佐々木氏によると、ウェアラブルの特徴はいくつかありますが、中でも語学の習得に関係がありそうなのが、「コンテキスト」と「プッシュ型」ではないかと僕は思います。

「コンテキスト」というのは「文脈」とも訳されますが、ウェアラブルの場合はそれを着用している人の位置、心拍、寝ているか起きているか、運動しているか静止しているか、その場所の気温などもセンサーが補足します。何かをするときの背景としてそういう状況があるわけですが、それがコンテキストですね。スマホの場合も位置ぐらいは分かりますが、それ以外はポケットや鞄の中にあるので、ウェアラブルほど明確に把握できるわけではありません。

そして、従来の外国語学習でよく問題になるのがまさにその「コンテキストの不在」です。よく、日本から遠く離れた国で「大阪城に行きましょう」とか勉強していますよね。あれです。コンテキストから全く切り離された状況で学んだことは、それが必要な状況になっても使えないということがよくあるのです。つまり、学びというのは、それが活かされるコンテキストがあって初めて起きるのです。

例えば「暑い」「寒い」というのは、暑くも寒くもない教室でフラッシュカードなどを見ながら覚えるよりは、寒いのに窓が開け放たれていて窓を閉めたいときに、相手に「寒いですね」と言わなければならない状況で覚えて、そしてすぐに言ったほうが、ずっと身につきやすいのです。

そうした状況で、自分から情報機器を操作せずに(つまりプッシュ型で)アプリなどの方から「寒い」という語彙を学習言語と媒介語で表示(もしくは読み上げ)してもらったら、すごいと思いませんか? 

あるいは、位置情報を学びのコンテキストとして活用すれば、「駅」「電車」「〜駅で電車に乗ります」などという表現が逐一表示されるのです。音声でもいいですけど。また、メールやウェブブラウズの閲覧などをコンテキストとして活用すれば、「〜を買う」「〜日の〜便のフライトを予約する」「〜という映画を見る」などの表現が学習言語で耳元に囁かれたり、メガネに表示されたりするのです。

僕も今、ハンガリー語で自分のやっていることを言ってみる練習というのをよくやりますが、それも、その状況で覚えなければ身につかないという理由と、自分に関係がない表現を覚えている余裕がないからという理由もあります。

でも、そんなの遠い未来の話だと思う人もいるかもしれませんが、そうでもありません。実際、アンドロイド携帯を利用している人なら、「Googleナウ」ですでにそれに近い体験を母語のみでしているのではないでしょうか。それを学習言語と母語の両方で、もっと大量に、浴びるように行うのです。基本的な要素はすでにできているのですから、それほど難しいことではないのではないかと思います。

もちろん、そうした学びは従来の画一型の教育とは全く違うものです。しかし、それぞれ多様な学習者の生活にぴったりと合った、一つ一つが個性的な教材になることは間違いがありません。そういうことが技術的に可能になるのは、それほど先のことではないでしょう。そのとき、今の教育制度は果たして行き残れるのでしょうか。

そして冒険は続く。

【参考】
IT最先端セミナー|佐々木俊尚氏 先駆情報から新しい事業をつくりあげる!|WEBtantSeminar
http://www.webtant-seminar.jp/special/saisentan.html

むらログ: 『電子書籍の衝撃』
http://mongolia.seesaa.net/article/154696823.html

【おまけ】
先日、海外日本語教育学会で僕が紹介したグラノベッターの「弱い絆の強み」を佐々木さんも紹介されていて、その偶然に驚きました。というより、近年のネットの普及によって、彼の研究が再び注目される状況が生まれているのかもしれません。
posted by 村上吉文 at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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