2013年08月01日

「海外における日本語の普及促進に関する有識者懇談会」による「議論の総括と政策提言」全文

The Man

 海外における日本語の普及促進に関する有識者懇談会による「議論の総括と政策提言」の全文が外務省の公式サイトで公開されました。新聞やテレビなどでも取り上げられたので、ご存じの方も多いかと思います。全文がこちらでご覧になれます。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000009623.pdf

 今回は、第4章の「具体的施策提言」で「日本語教育におけるIT化の推進は、需要、供給両方の観点で活用できる施策であるので、(3)として独立した形でまとめた。」とされている通り、IT化が非常に注目されていることに留意したいですね。

 以下、ITに関連する部分を共有します。(なお、こういう行政機関の出している資料などは著作権で保護されませんので、自由に転載できます)
 一定以上の人数が学校や教室に集まって学習する場合、物理的・時間的制約が多く、せっかく日本語学習をしたいと思っても適当な学習の場や教材がない、地方在住者には日本語の学習を希望しても学習機関がないというように、日本語学習者の裾野を広げるのは容易ではない。
 オンライン授業やeラーニング、IT教材の開発、提供など、日本語教育普及に関するIT技術の利用が積極的に検討されるべきである。

 人的・物的投入の拡大に限りがある中、海外において効果的・効率的に日本語を普及していく上で、電子媒体の活用をはじめ日本語教育におけるIT化の推進は喫緊に取り組むべき課題である。例えば、IT化が進み日本語学習のIT化による潜在的な学習者の掘り起こしが期待できるインドや、広大な地域を抱えすべての地域への日本語教師の派遣等の物的な投入が困難なアフリカなどにおいては、日本語学習のIT化は非常に有効と考えられる。実際、IT化の潮流は外国語教育分野にも及んでおり、オンライン教材を用いた学習、テレビ電話を通じた会話練習、メールによる添削指導などの形で導入されている。また、パソコンを利用したeラーニングが、学習機会を拡大する新しい学習方法として注目を集め、様々なシステムや教材開発がなされている。規格の統一、利用実態の把握、管理・運営体制の整備などの課題はあるが、施策の具体化を急ぐべきである。
 一方、新しい仕組みを作ることとともに、すでにある仕組みや情報を広く共有することも必要であり、多言語対応ポータルサイトの立ち上げ及び継続的な情報発信・情報共有の体制作りといった取り組みが重要である。また、学習者支援(オンライン教材の提供)と教師支援(教師研修の実施)をともに担える体制を作ることも必要である。
 これらの施策の実現にあたっては、国際交流基金・日本語教育学会等の関係機関の相互協力や、民間機関による取り組みへの資金援助など、新たな枠組みを検討することが有益である。(3)需要供給両面の共通課題としての日本語教育におけるIT化の推進
ア JF日本語教育スタンダードの考え方に基づき、海外の学習者や潜在的学習者が初級段階から日本語を使う楽しさを実感できるような国際交流基金によるeラーニング講座等を開設する。
イ 公的機関、大学、民間日本語教育機関、企業等がそれぞれの得意分野を生かす形で以下の事業を検討・推進する。
・日本語教師研修のIT化(例えばテレビ会議システムやスカイプの導入など)を図る。
・日本語学習者に日本語を話す機会を提供する日本語チャットサイトの立ち上げなど、インターネットを活用した日本語学習機会を提供する。
・日本語教師のスキルアップや教育機関での使用及び、来日後の生活に密着した日本語学習を目的にした簡便に利用できるIT教材等を開発する。
・漫画、アニメ等のポップカルチャーや和食を取り入れた日本語学習IT教材の開発を更に進める。
ウ 関係機関等が連携して日本語のIT教材や学習に係る情報を収集、総合的に管理することにより、情報の共有とアクセスの利便性を高める。
エ IT化の推進にあたっては、政府の文化無償等の活用により、ハード面での整備も併せ進める。
オ 日本語学習者のアクセスを容易とし、かつ、現行の「読む・聞く」の受容能力に加え、「話す・書く」の産出能力の測定を目指す日本語能力試験開発、コンピューターベース化を進めるべく導入可能性に関する調査を早急に行う。
 まあ、僕から見ると「ようやくここまで来たか」という感慨があります。細かいことを言えば、学習者の使う中心はすでにパソコンからモバイルに移っているので、文中にもちょっと時代認識として違和感のあるところがないわけでもないのですが、それでも、こういう公文書が外務省のサイトに載ったという事実があれば、現場の先生方にご理解いただくには、非常に仕事がしやすくなるように思います。

そうそう、くどいですが、ハンガリーで僕と一緒に仕事してくれる人、こちらで募集中ですよ。
http://www.jpf.go.jp/j/about/recruit/japan_26_haken2.html
ここにはiPadが20台あり、今のところ20人以上のクラスはないので、学習者1人に1台のタブレットという非常に恵まれた環境にあります。採用は東京で決めるので僕は口出しできないのですが、個人的にはこういう恵まれた環境を最大限に利用できる人と一緒に働きたいですね。
応募用紙などはこちら(http://www.jpf.go.jp/j/about/recruit/japan_26.html)にあります。8月16日必着なので、興味のある人は遅れないように出してくださいね。

さて、以下はITとは関係のないことですが、個人的に面白いと思ったところをご紹介します。
<日本語学習の成功体験についての語り部となる学習経験者を、例えば「日本語普及大使」に任命し、小中学校等で講演や特別事業を行ってもらう。
 これは例えばダニー・チョウさんとか、YouTubeで積極的に活動しているミカエラさんとか、いろいろな人材がいますね。こういう人たちならネットにも詳しいので、海外向けにオンラインでのみ出演とかもしてくれるかもしれません。
国際交流基金のネイティブ教員雇用支援事業を拡大する。
これは同じ事業名なのかどうかわかりませんが、エジプトでもカイロ大学が採用する日本人教員の経費の一部を基金が負担しているので、そういう例かもしれません。
国際交流基金の実施する日本語専門家の長期派遣について、その効率化及び拡大を図るとともに、短期派遣の活用等の機動的対応により、現地の日本語教員の育成や中核機関の体制整備の支援を拡充する。
 個人的には専門家の長期派遣の拡大というのは嬉しいですね。ほとんどみなさん知り合いなので、縮小するパイを奪い合うのは厳しいですから。
海外の日本語学習者と日本語母語話者との接点を拡大するとの観点から、日本語専攻ないし副専攻の日本人大学生の海外派遣を進める。
 実を言うとこの部分が一番意外だったのですが、現役の大学生を派遣するんですね。まあ、たしかに経費は少なくてすむかとは思いますが、現地の日本人留学生などの交流もあるので、それ以上に効果的な交流を目指すということなのかもしれません。
この記事へのコメント
最後の現役大学生の派遣は、韓国で似たようなケースが既に実施されていたかと思います。他の国でもあったかもしれませんが。つまり、パイロットケースがあるので、施策に盛り込みやすかったのでは。かつ、こっちのほうが主だと思いますが、日本ではアウトバウンドというんですか、日本人の学生が留学にいきたがらなくなっていて「内向き」とかいう話もあったので、そっちの状況改善もできて、一石二鳥、ということかなと思いました。成果を出すには、受け入れ側との調整と、現地でのフォローがとても重要になってきますね、きっと。
Posted by くまい at 2013年08月01日 14:29
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