2013年07月30日

チャットを見なおしてみよう!

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス


Google talk chat

今月19日の「 【まとめ】 無料テレビ会議システムハングアウトの始め方」という記事で、「ハングアウトは、個人ユーザーレベルで言えばこの十年ほどの間で最も大きな技術的な進展ではないか」と書きました。これはすごい時代になってきたな、と思っている一方で、こんな記事がまだ必要である段階であることも事実です。つまり、授業や会議の最後にいきなり「じゃあ、時間になったので続きは今夜9時にハングアウトで」という感じにはまだ使えません。ウェブカメラを持っていない人もいるし、ブロードバンドでアクセスしていない人もいるからです。ついでにいうとGoogle+のアカウントとか、ブラウザにインストールするプラグインとかもね。もう一般ユーザーレベルではあるので、「ハイテクすぎる」ということではないのですが、要するにまだ敷居が高すぎるのです。

その意味で、もっとローテクなツールを使えば、参加のための敷居を下げることができます。同じハングアウトでも、動画を諦めて音声だけにすれば、かなり回線速度の遅い地域でも同時に利用することができます。さらに、音声も諦めて文字だけにすれば、マイクのない人でも参加することもできます。

文字だけのリアルタイムのコミュニケーションをチャットと言いますが、チャットにもいろいろな種類があります。中でも、一対一でなくグループで行うものをグループチャットと言い、グループチャットの中でも一般に公開されているような場で行うものはウォールチャットと呼んで区別されることもあります。

チャットでのコミュニケーションというのは、今では当たり前すぎて、これで仕事をしようといっても注目もされない面もあります。冒頭で「ハングアウトの始め方」というまとめをご紹介しましたが、今さら「チャットの始め方、まとめ」なんていう記事をブログに書いても、「はぁ?」というリアクションしか期待できません。URL一つ教えれば、すぐに誰でも参加できるからです。でも、それって要するに仕事で使えるまで敷居が下がったということもできますよね。

つまり、あらためて、もう一度チャットに注目してもいいなじゃないかな、と最近、僕は思い始めているのです。

【メリット】

メリットはいくつもありますが、まず第一に大切なのは上にも書いたように「敷居が低い」ということです。技術的にはどのプラットフォームを使うかにもよりますが、基本的にはインターネットにアクセスできる人なら誰でもチャットに参加できます。ウィンドウズやマックのパソコンでも、アンドロイドやiPadなどのタブレットでも、あるいはスマートフォンでも、「これではチャットできない」という環境はほとんどありません。また、参加する側にとって敷居が低いということは、運営する側にとっても、いちいち技術的な補助をする必要が減るという意味で、同じく’敷居が低くなります。

二番目に、同時に参加できる人数の上限が実質的にないということが挙げられます。もちろん、チャットのシステムが入っているサーバーの能力によっては、何万人も同時に書き込んだらパンクしてしまうということもあるかもしれません。しかし、そういうことはどこかの国の血気盛んな人達が組織的にF5アタックをかけてきたりとかのかなり特殊なことでもなければ、普段はあまり起きることではありません。もしかしたらアイドルのファンクラブの運営などでは心配しなければならない可能性もあるかもしれませんが、少なくも教育に関わる仕事をしている場合は、実質的に上限はないと考えていいでしょう。

三番目に、外国語学習に限定したことですが、やはり文字がそこにあることによって、安心できる学習者が多いでしょう。特に、文字主体の勉強を続けてきた学習者がいきなり「さあ、母語話者と話しましょう」とか言われても言葉が出てこなくて困るでしょうし(実を言うと、僕のハンガリー語がまさに今この段階です)、対面ならまだいろいろできますが、カメラを通したり、音声でしかコミュニケーションできない電話のような状況では、さらに相手の言うことも理解できず、こちらも言いたいことが伝えられないという状況に陥りやすくなってしまいます。

しかし、そこに文字があれば、状況はかなり変わります。聞き取れない言葉でも文字で見れば分かる場合もあるし、分からなくたって相手に質問することができます。会話の場合はそもそも聞いたことがない言葉を繰り返して「〜ってどういう意味ですか」と聞き返すのはかなり大変です。また、文字の場合はスピードも違うので、手早く辞書を見ることすらできます。ただし、この場合は「rikaikun」や「GoogleDictionary」などのブラウザ組み型の辞書が必要ですね。コピー&ペーストとか、まだるっこしくてやってられませんから。

四番目に、「相手の時間を占有しない」ということもあげられます。例えば僕も仕事中にチャットでいろいろな相談を受けることがありますが、チャットというのは気軽に相手に話しかけることができる反面、気軽に無視もできます(^^)。というとちょっと語弊がありますね。しかし、実際にパソコンをつけたまま会議に出ていたりすると、席に戻るまでチャットで話しかけれていたことに気づかないことがよくあります。普段から仕事でチャットを使っている人間にはそういう状況がよくあるので、すぐに相手の反応がないからといって「こいつ、俺様を無視しやがった!」と怒る人はいません。(時たま怒る人はいますが、それはたいていICTに慣れていない人です)

これは電話などと違って「相手の時間を占有できない」というデメリットに感じる人もいるかもしれませんが、「相手の時間を占有したくない」という人にとっては、話しかけやすいというメリットになります。実際に、僕に無視されたことのある人の方が話しかけてくる事が多いように思いますが、それは多分、「この人は反応できるときしか反応しないんだな」ということが分かっているので、かえって話しかけやすいのでしょう。でも、彼らに電話番号を伝えても、おそらくこれほど頻繁にはコンタクトを取ってこないでしょう。それは、電話だと相手の仕事中に割り込むことになり、無視もしにくく、要するに迷惑な道具だからです。

五番目に、ゆっくり考えることができるというメリットもあります。上記のように相手の時間を占有しないので、会話のようにすぐに返事しないと無視したことになったりはしません。おまけに日本語学習者が漢字かな混じりの日本語を入力するのは、日本人よりずっと時間がかかりますよね。相手もそれを分かっていれば、返事を待っている間にメールをチェックしたり、それまでの仕事を続けたりすることもできます。でも、実際に対面して相手と話している時に、相手が「えーっと」と返事に困っている時にさっとスマホを取り出してメールチェックとか、なかなかできませんよね。チャットならそういうことが簡単にできるのです。

六番目に上記のメリットとかなり関係するのですが、メールなどよりもずっと格式ばっていないということもあげられます。実際には記録に残せるのですが、チャットというのは音声のやり取りのようにリアルタイム性が大切なので、挨拶とかはほとんどなく「○△さん、聞きたいことがあるんだけど、今ちょっといい?」というような感じで始まるのが普通です。「拝啓 残暑のみぎり、」なんてチャットの始め方をする人はまずいませんよね。そういった本質的でないコミュニケーションは業務の効率を下げるだけなので、僕もチャットのようなツールの方が歓迎です。

メリットの最後に、僕はあまり気にしたことはなかったのですが、女性にとっては「化粧を落としたあとも参加できる」というのは、かなり大切なメリットのようです。実際にハングアウトなどでは顔を出さなくてはなりませんが(というか、それがハングアウトなんですが)、僕もやっぱり公開されるハングアウトの場合はパジャマで出たりはできませんから、そういう準備に時間のかかる人の場合は、ハングアウトなどよりもチャットのほうがずっとありがたいでしょうね。

【課題】
あまりオンラインツールに慣れていない先生がチャットを主催する場合、どこでチャットが続いているのか分からなくなってしまうこともあるようです。以前、ある日本語学校の一つのクラスでFacebookのそのクラス専用のグループでチャットをしようということになって、担任の先生が「さあ、始めましょう。みなさん、来ていますか」と書き込んだところ、たくさんの学生が「こんにちは!よろしくおねがいします」などとコメントしていたいたのに、しばらく担当教師のコメントがないな、と思っていたら、「誰もいないみたいですね。今日は寝ます」という書き込みがあって、「いいえ、みんないますよ!」という生徒の声も目に入らなかったようで、その晩はそれ以降、その教員の書き込みはなかった、ということがありました。

あとでその先生に聞いてみたら、やはり、「チャットやってみたけど、返事がなかったので寝た」ということでした。よく聞いてみると、そのグループに新しい発言として書き込まれることを予想していたらしいのですが、実際にはご自分の発言へのコメントという形で学生が反応していたので、目に入らなかったようです。

このように最初はお互いの想定と違うことが起きやすいのですが、何度かやってみれば問題なく実施できますし、後述するように最初からこうした問題を避ける方もあります。

2つ目の課題として、規模を大きくすると、誰もが参加できるプラットフォームがない、という問題が出てきます。僕自身が仕事で運営している「中東日本語教師オンライン研修」では、当初、USTREAMを使って動画を配信し、USTREAMのソーシャルストリームを使ってコメントや質問を受け付けていました。しかし、これにはFacebookやTwitter のアカウントがないと書き込むことができません。それで、USTREAMからハングアウトに配信手段を変えた時に、そうしたソーシャル・メディアのアカウントが必要ないZOHOのシャウトボックスを動画配信のすぐ下に埋め込んでいたことがあります。しかし、これではなぜかマッキントッシュのパソコンを使っている人は表示が崩れてしまってコメントできない状況になってしまったのです。

いろいろ探してみたのですが、今のところ、特別なサービスのアカウントも必要なく、ウィンドウズやマッキントッシュなどのどんなプラットフォームからでも書き込めるチャットサービスというのは、僕はまだ見つけられていません。

ちなみに現状ではFacebook上の公開した場所でコメントや質問などを受け付けるようにしています。少なくとも「マックを使っている人」よりも「Facebookを使っていない人」の方が少ないらしく、今のところこの方式では「コメントできない」という苦情はいただいておりません。

3つ目の課題として、日本語学校の中にはいまだに日本語入力を指導していないところがあるということがあげられます。学生に「続きは今夜のチャットで」と言った時に「そんなの教わっていません」と言われないように、ちゃんと責任持って指導していただきたいものですよね。

4つ目の課題として、文字入力に加えて、メリットの所でも触れたブラウザ組み込み型辞書のような、瞬時に引ける電子辞書の指導も必要です。紙の辞書はもちろん、単体で市販されている電子辞書も、知らない単語を目にしてから、検索窓にその言葉を打ち込んでいたら時間がかかりすぎますし、そもそも漢字の読み方が分からなければすぐに検索窓に入力することもできません。部首検索などで漢字を出して検索するなんて、チャット用の辞書としては現実的ではありません。実質的にチャットで使える日本語の辞書というと、上にも書いた「rikaikun」と「Google Dictionary」が有名ですが、学習者の母語によっては、もちろんもっと他のものがあるでしょう。(日本人が英語チャットに使えるものとしてはweblioの組み込み型辞書もなかなかいいです)。

最近の語学の学習環境では、知らない単語に出会ってから、辞書でひこうと思い立って、実際にその意味が表示されるまで、だいたい1秒以内が標準で、もし2秒もかかっていたらもう重くて使いものにならないという感じです。(現時点で外国語を勉強していない日本語教師はこの時代のスピード感が共有できていないことが多いようなので、念のため)

【ハウツー】

最後にウォールチャットを主催したり、他の人が主催するものに参加したりして、いくつか気がついたことがあるので、共有しておきます。

まず、課題のところでも書きましたが、FacebookなどのSNSでチャットをするときは、どこでチャットをしているかがわかりにくくなってしまうことがあるようです。「みんなのデジタル教科書研究会」というFacebookのグループで見て以来、僕も使っている技ですが、その場合、目立つ画像を投稿して、その画像に対するコメントとしてチャットをすると、非常に分かりやすいです。僕が中東の日本語教師のみなさんを対象に主催しているウォールチャットでは、カイロ日本文化センターのロゴの上に大きく「ここから」と書いた画像をコメント元として投稿しておくことにしています。

なお、この程度の画像編集でしたら、photoshopなどは必要ありません。僕は画像編集ソフトすら使わず、Googleドキュメントのプレゼンテーションで編集して、「形式を指定してダウンロード」でJPEGにしてからFacebookに投稿しています。

もう一つ、Facebookのグループやイベントページでチャットをする時は、その画像に「トップに固定する」というオプションを設定するといいです。普通は新しい発言ほどそのページの上の方に表示されますので、チャットの途中で誰かが画像へのコメントではなく、新しい発言として書き込んでしまう(「スレッドを立てる」と言います)と、その発言がチャット用の画像よりも上に表示されてしまい、そのタイミングでグループにやってきたメンバーには、チャット用の画像よりも目立ってしまいます。その結果、そちらの新しい発言にコメントがついてしまい、どちらが本来のチャットだったのかが分からなくなってしまうのです。「トップに固定する」というオプションを選択すると、そのあとで新しいスレッドが立っても、それが上に来ることがないので、こうした混乱は生じません。

さて、チャットについて書いて来ましたが、実際にクラスで主催する前に一参加者として体験してみたいという人もいるかもしれません。その場合、某匿名掲示板の「実況スレ」などを見てみれば分かりやすいと思いますが、チャットを体験したことがない人にはちょっと刺激が強すぎるかもしれません。その場合はツイッターの「#edchat」という教育関係者向けのチャットを見るといいでしょう。これは英語になるので、英語が面倒な人は教育関係ではありませんが、同じくツイッターの「#あまちゃん」などのハッシュタグを、放送時間に合わせて見てみるといいと思います。ツイッターの場合は一方的な感想などが中心になるので、本来の双方向的なチャットとは少しおもむきは違いますが、参加者が多いだけどんどんコメントが流れてきてリアルタイムのチャットのダイナミックさなどは体験できると思います。「#八重の桜」などもそうですね。(もしかしたら、これ速読の練習として使うと面白いかもしれませんね)

参考
むらログ: 【まとめ】 無料テレビ会議システム「ハングアウト」の始め方
http://mongolia.seesaa.net/article/369679391.html

むらログ: すげぇ! Google Dictionaryが和英に対応してる!
http://mongolia.seesaa.net/article/189734488.html

rikaikun
https://chrome.google.com/webstore/detail/rikaikun/jipdnfibhldikgcjhfnomkfpcebammhp

ツイッターハッシュタグ「Edchat」
https://twitter.com/search/realtime?q=%23edchat&src=typd

ツイッターハッシュタグ「あまちゃん」
https://twitter.com/search?q=%23%E3%81%82%E3%81%BE%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93

ツイッターハッシュタグ「八重の桜」
https://twitter.com/search?q=%23%E5%85%AB%E9%87%8D%E3%81%AE%E6%A1%9C&src
posted by 村上吉文 at 06:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本語hacks! | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック