2007年03月24日

ウィクショナリー

以前、「国際交流基金などが旗振って、日本語のオンライン辞書を作ったらいい」というようなエントリーを書きました。実はそれ以前にもウィクショナリーのことは知ってはいたのですが、これを書いたときは完全に忘れていました。ハズカシ。

ウィクショナリーとウィキペディアの違いは、百科辞典と辞書の違いといえばいいでしょう。基本的にはWikiなので、誰でも項目を立てたり、編集ができます。

なぜ忘れていたかというと、あれは基本的にはいろいろな言語の「国語辞典」であって、外国人が学習用に使う「辞書」は目指していないように、そのときは思っていたのです。しかし、今見てみると、これは外国人用の辞書としても使えそうです。

まず、日本語ウィクショナリーの「愛」の項目を見てみると、以下のようになっています。長いので目次だけ紹介しますね。
目次 [非表示]
1 漢字
1.1 字源
1.2 意義
2 日本語
2.1 発音
2.2 名詞
2.2.1 類義語
2.2.2 訳語
2.3 熟語
3 中国語
3.1 熟語
4 朝鮮語
4.1 熟語
5 コード等
http://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%84%9B

つまり、「愛」について字源やら意義やらが並んでいるのですが、外国人にとって有効なのは「訳語」の部分です。
イタリア語: amore
フランス語: amour
ロシア語: любовь
スペイン語: amor
ポルトガル語: amor
英語: love
ドイツ語: Liebe f
朝鮮語: 사랑
タイ語: รัก
ペルシア語: عشق(‘eshq)


wikiですので、もちろんこのリストにモンゴル語を追加することもできます。というか、今追加しましたのでモンゴル語で愛を語りたい人は何というのかチェックしてみてください。

さて、まあ、ここだけだったら、はっきりいって国語辞典に毛が生えたようなものです。しかし、ウィクショナリーには各国語版があるのです。たとえば英語ウィクショナリーの「愛」の欄には、英語で「愛」について語られています。「love」でなく「愛」についてです。
Contents [hide]
1 Translingual
1.1 Han character
1.1.1 References
2 Cantonese
2.1 Hanzi
3 Japanese
3.1 Kanji
3.1.1 Readings
3.2 Noun
3.3 Synonyms
3.3.1 Compounds
3.4 Derived terms
4 Korean
4.1 Hanja
5 Mandarin
5.1 Hanzi
6 Mandarin
6.1 Pronunciation
6.2 Noun
6.3 Verb
6.4 Usage notes
7 Min Nan
7.1 Pronunciation
7.2 Noun
7.3 Verb
7.4 See also
8 Vietnamese
8.1 Han character

http://en.wiktionary.org/wiki/%E6%84%9B

これは単漢字なので中国語やらベトナム語まで出てきますが、「愛する」だともちろん日本語しか出てきません。ちなみに「飛ぶ」を英語版ウィクショナリーで引いてみると、以下のように意味が書いてあって
飛ぶ (godan conjugation, hiragana とぶ, romaji tobu)

to fly
to jump
to go quickly
その他に活用表や関連語「飛び移る」なども見ることができます。
http://en.wiktionary.org/wiki/%E9%A3%9B%E3%81%B6

引用注の「godan」というのを見れば想像はつくと思いますが、活用は「未然形」「連用形」という国語系の言葉が使われていて、日本語教育関係者ではない人が書いていることが想像できます。「愛する」は「type 3」になっているんですけどね。

以上は和英辞書的な使い方の紹介ですが、もちろん英和辞書としても使えます。日本語ウィクショナリーの「love」を引いてみると、以下のように日本語で意味を確認することができます。
love(基本的に不可算)
(肉親・友人・ペットなどへの)愛、愛情、善意、(よろしくという)あいさつ
brotherly love
兄弟愛
(異性への)愛、愛情、恋心
(時にa〜)愛着、愛好、好み((of, for, to ...))
have a love for book
本を好む
(可算)いとしい人、愛人、恋人
類義語:one's boyfriend, one's girlfriend が一般的; sweetheart, lover はやや古風。
(テニス)0点
http://ja.wiktionary.org/wiki/love

ウィクショナリーの今のところの課題は、発想がどうも「国語辞典」的なようで、外国語学習用に欠かせない「例文」がほとんどないことですね。

それと、日本語ウィクショナリーでマイナーな言語を引いてみると、ほとんど出てきません。モンゴル語も、以下のように、ないわけではないのですが、限りなく少なく、まだ実用的ということはできません。
http://ja.wiktionary.org/wiki/%D1%85%D1%8D%D0%BB
モンゴル語ウィクショナリーももちろんあって、その登録語の多くには日本語訳もついていますが、登録されている語数自体がまだまだ少ないです。

モンゴル語ウィクショナリー http://mn.wiktionary.org/wiki/Main_Page

他にどんな言語でウィクショナリーが開設されているかを見るには、以下のリンクの下の方のリストが参考になります。

ウィクショナリー言語リスト http://meta.wikimedia.org/wiki/Wiktionary

このリストを見ると、171言語でウィクショナリーが開設されていて、日本語は22,822語、モンゴル語は1,723語、英語は344,510語(2007.3/22現在)が登録されていることが分かります。

今後のウィクショナリーの発展のさせ方としては、二つの方向性が考えられます。一つは、日本語ウィクショナリーを起点にして、例えば日本語能力試験出題基準4級レベルの語彙に、それぞれの言語で訳語を追加していくこと。メジャーな言語では4級レベルが終わっていれば3級レベル、2級レベルまで、と拡大していけばいいでしょうが、まずは基本語彙からですよね。

ただ、これだと訳語レベルでしか作れませんから、最終的には各国語のウィクショナリーで日本語の語彙を項目として立てていくことが必要だと思います。つまり、日本語のウィクショナリーで英語やロシア語やモンゴル語(限りなく少ないですが)が引けるように、モンゴル人学習者がモンゴル語ウィクショナリーを見て、日本語を調べられるようにするわけです。その方が学習者にはずっと使いやすいですから。

現状では、マイナーな言語の話者にとってはまだまだ使いにくいですが、wikiは「集合知」(web2.0のキーワードの一つですね)を利用して成長していくものです。実際、数分前に日本語ウィクショナリー「愛」の欄にモンゴル語訳が追加されたように、ほんの少しなら私でもできるし、このブログをお読みのみなさんもできるでしょう。そしてそれが積み重なれば、いつかは日本語学習者にとっても有益なオンライン辞書になってくれるものと信じています。

悲観することはありません。ウィキペディアの方は、すでにブリタニカを凌駕する存在になっているのですから。


【このブログ内で関連するエントリー】
ネット上の素材をオンラインに使った授業 [2007/03/19 07:49]
http://mongolia.seesaa.net/article/36332976.html

wikiはオンライン添削にも役立つ [2007/03/03 16:59]
http://mongolia.seesaa.net/article/35129965.html

wikiこそ「ウェブ2.0と日本語教育」の本命 [2007/02/24 06:57]
http://mongolia.seesaa.net/article/34537709.html

日本語を学ぶ三つのメリット [2007/02/20 06:45]
http://mongolia.seesaa.net/article/34173154.html

辺境とはロングテールである [2007/02/18 20:29]
http://mongolia.seesaa.net/article/34054039.html
posted by 村上吉文 at 07:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック