2007年02月20日

日本語を学ぶ三つのメリット

日本語教師はいろいろな悩みを抱えているものですが、中でも「学習者に明確な動機がない」というものはやっかいです。やる気がないからすぐに止めてしまう場合もありますが、それはまだいい方です。中等教育段階での必須科目だったりすると、やめるわけにも行きません。やる気はないから学力はどんどん落ち、差が開くからさらにやる気がなくなるという悪循環。しかもやめられない。

で、そういうときに教師は「日本語を勉強するとこんなにいいことがあるんだぞ」と手を替え品を替え言い続けるわけです。経済力がどうのとか、アニメが面白いとか。

しかし、そういうのも学習者は聞き飽きています。
で、最近仕入れたネタを三つほどご紹介します。仕入れたといっても三番目は私のオリジナルですが。

まずは、きれい好きな学習者、病弱な学習者向けに。
「日本語を勉強すると感染症にかかりにくくなるぞ!」

そんなばかな、と思った人がいるでしょう。最初は私も「ウソつけ」と思いましたから。しかし、それがウソでもないようなのです。

というのも、日本語では韓国語の激音とか、中国語の有気音といわれるものがありません。その結果、唾液を介した伝染が起こりにくくなるわけです。これ、専門家が言ってるんですよ。「情報考学」の書評を見てくださいな。

「情報考学」書評『感染症―広がり方と防ぎ方』

実に面白いのが、日本語の発音の特徴が飛沫感染の起こりにくさに関係しているのではないかという著者の発表した仮説である。英語・中国語にはptk(中国語ではさらにqhc)の破裂音のあとに母音がくると息がはげしく出される有気音がある。この発音のときにウィルスの飛沫が飛びやすいのだという。日本語ではそれが無気音になるので、飛沫感染が起きにくいと著者は考えている。
日本語のプレゼンの方が英語のプレゼンより安全ということか。風邪の時には外来語を使うべきではないのか?なんて考えて可笑しくなったが、真面目な医学誌に掲載された話であるそうだ。
URL:http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004869.html

まあ、日本語を勉強しても周りが有気音言語の話者ばかりだったら変わりませんが、日本語を勉強することによって日本語環境に入ることができたら、変わりそうですよね。

ということで、病弱な学習者とか、きれい好きの学習者には「日本語を勉強すると感染症にかかりにくくなるぞ!」がオススメです。

次に、理系の学習者に。
「日本語を勉強するとプログラミングが上達するぞ!」

そんなばかな、と思った人がいるでしょう。最初は私も「ウソつけ」と思いましたから。しかし、それがウソでもないようなのです。(笑)

というのも、最近のプログラミングの世界では「オブジェクト指向」というのが流行していて、オブジェクト指向の言語では、動詞の前に目的語を持ってくるのです。というか、まず目的語を書くのです。そもそも「オブジェクト」って目的語とか目的物ですものね(この辺、思いっきり日本語教育関係者向けの語彙で書いていますので、ご容赦)。

ここで英語と日本語をJavaScriptを比べてみます。

英語:Write a document.
日本語:文書を書く。
JavaScript:Document.write():

語彙的には英語に近いですが、文法的には日本語に近いことがお分かりだと思います。
実はこの点も私のオリジナルではなく、著名なエンジニアが自分のブログで書いておられます。

Satoshi Nakajima,「日本語とオブジェクト」
URL:http://satoshi.blogs.com/life/2004/09/post.html

そして、モンゴル語や韓国語を習った方なら分かると思いますが、語順が似ているというのは、非常にその言語の習得に有利です。まあ韓国語の場合は発音が難しすぎますから、ちょっと違うかもしれません。しかしモンゴル語を学ぶのは欧米人よりも日本人の方がずっと早いです。(この辺、英語習得だけ見て「日本人は欧米人より外国語習得が下手」というのは明らかに間違ってますね。関西弁を習うのも、アメリカ人よりは東京人のほうが速いに決まってます)

ということで、理系の学生には「日本語を学ぶとプログラミングが上手になるぞ!」というのがいいのではないでしょうか。もちろん、日本ではITエンジニアがものすごく不足していて、プログラミングができれば外国人でもいくらでも職があることなどをご紹介するのもお忘れなく。

さて、日本語を学ぶメリットの三つ目は、ずばり「日本語話者は英語話者よりも金持ちだ」です。これ、「日本人はアメリカ人よりも金持ちだ」と言ってしまうとそうでもないような根拠がたくさん見つかりますが、言語別に比較したら英語圏には貧困な地域も多く含まれているため、日本語よりも所得が低くなるのは間違いありません。

しかし、国じゃなくて言語でまとめることに何の意味がある?

と思われた人もいるでしょう。確かに今までの時代は意味がなかったと思います。しかし、ウェブ2.0の時代ではそれは違う。

というのも、英語が読めない人は、そのブログを書いている人が日本で書いていても、アメリカで書いていても、英語のブログは読めないのです。逆に、日本語で書いてあればアメリカ人がアメリカで書いていても、読むことができます。どこで誰が書いているかは問題ではありません。何語で書いてあるかが問題なのです。

しかしここで、また一つ疑問が出てきます。

「日本語話者の方が金持ちだから何? 行けなかったら意味ないじゃん」

そう、確かに以前は意味がありませんでした。金持ちのいるところに行って、金持ちに物を売らなければ金持ちになれません。つまり、「何語が金持ちか」ではなく「どこの国が金持ちか」を考えなければならなかったのです。その点だけだったら、アメリカに行った方が効率がよかったでしょう。

しかし、今は違います。リアルな世界だけでなく、バーチャルな世界でも大量のお金がめまぐるしく駆け巡り、飛び交う時代になりました。つまり、今このブログを読んでいるあなたのようにバーチャルな世界に接続できる人なら、誰でもネットから収入を得ることができるのです。つまり、金持ちのいる国へ行かなくても、金持ちの言語が話せれば、それに見合った収入が得られるのです。

さて、ここでまた一つの疑問が出てくるでしょう。

「そうは言っても大仕事よ」
・・・じゃなくて、(魔女ネタです、すいません)
「そうは言っても広告収入ってたかが知れてるんでしょ?」

そうです。たかが知れてます。日本にいたら片手間にやって食っていける額じゃありません。

しかし、だからこそ日本語が優位なのです。

なぜなら、最大の競争相手である日本在住者が競争に参入してこないからです。これが英語や中国語なら、その言語話者のグループ内で物価の格差がありすぎ、物価の安い国の人は全員が競争相手になりえます。だって、母語でブログを書くだけで食っていける収入が得られるのですから。

つまり、英語や中国語でブログを書くよりは、日本語でブログを書いた方が競争相手の少ないマーケットで戦うことができるのです。しかも、そのマーケットは世界で一番の購買力を持つマーケットです。

もう一度書いてみましょう。

世界でいちばん裕福なマーケットが、他の主要なマーケットよりもずっと競争相手が少ない。

これってすごいことですよね。実際にその国へ行って稼ぎたいというのなら、日本語を学ぶよりもいい選択肢があるかもしれません。しかし、そういうチャンスに恵まれた学習者がごく少数であることは、日本語教師ならみんな知っているでしょう。学習者のほとんどは、その国に残って、その国の人と結婚し、そこで働き、そこで子供を育てるのです。だとしたら、その生活を少しでも豊かにするためには、日本語は悪くない選択肢ではないかと思います。


これ、本気です。
posted by 村上吉文 at 06:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日本語hacks! | このエントリーをはてなブックマークに追加
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