2006年11月19日

エリンが挑戦!にほんごできます

 意外な方面で人気急上昇中の「エリンが挑戦!にほんごできます」ですが、だいぶ謎が解けました。というのも、昨日、「制作のコアメンバー4名を迎え、それぞれの視点から、本教材並びに語学学習番組作りについて」語ってもらう会を聞きに行ったのです。
http://www.jfsc.jp/webmember/event/ev-1006-0076
 さて、この番組は、「自分のところにあるものはコレ、相手のところにあるものはソレ」などと日本語で説明したり、日本語教育を専門としている人間にとって、教材としては「ありえない」つくりになっています。

 (なぜありえないかというと、「これ」という語彙を習得する必要のある学習者には、通常「自分のところにあるもの」という説明が理解できないからです。理解できないことは日本語で言わないで、映像のみで説明するのが直接法)

 しかし、もともとこの番組、国際交流基金の考えでは「映像教材」として出発しているんですね。一方で、NHKさんにとっては「放送」ですから、教育番組っぽくしなくてはならないわけです(この点に関してNHKエデュケーショナルの高村さんは、「教材と放送は水と油のような関係だ」と言っていました)。そして、将来的には海外の現地局でも放送し、解説のところは現地語に翻訳するというパターンも考えているそうです。「放送」としては、そこまでいって、初めて完成するような形になるのかもしれません。

 ただ、視聴者の学習者に対するモニターでは、未知の文型が多くても予想以上に分かっているらしいというデータが出ているとのことです。そして、面白かったのは学生と教師たちの反応の違いで、教師たちは予想通り「学生は分かっていない」と反応し、教師と学習者の間に大きな隔たりがあったという点です。まあ、私の想像では、説明の日本語がわからなくても、映像から推測できるということだと思いますが。たとえば、「自分のところにあるもの」「相手のところにあるもの」という日本語は分からなくても、そのとき画面では実際にエリンが「これ」と言って自分の目の前に浮遊する立方体を指したり、「それ」と言って相手(ホニゴン先生というCGキャラクター)の目の前の立方体を指したりするわけです。

 教師にとっては、「あー,余計なこといってる」という思いから「あれじゃ分からない」という感想になるのでしょうし、実際、説明の日本語に関してはそれは正しいのでしょうが、学習者にとっては「説明の言葉は分からなかったけど、言いたいことは分かった」という感じになるのかもしれません。もちろん、そういう余計なことは言わない方がいいに決まっているのですが、これが「放送」であるという点と、これから現地語に翻訳されて海外でも放送されたり(あるいはDVDの副音声もつけたり)することを考えると、このあたりが落としどころなのでしょう。

 実は私もモンゴルで日本語教育番組を作っていたことがあり、多くの人が関わる以上、そういった「落としどころ」を用意しないと番組そのものが成立しないということは、よく実感できます。

 ただ、いろいろ書きましたが、「映像教材」としてならすでに使い方はいろいろ考えられると思います。まあ、それは電波の向こうから現場に向かって「好きなように使って見ろ」と挑戦されているような気がしないこともありませんが、「素材」としてはかなりいいセン行っていると思います。

 その証拠のひとつが、冒頭で触れた「意外な方面で人気急上昇中」の件です。実は私も昨日のイベントに出るまで知らなかったのですが、某巨大掲示板郡ですごい人気になっているのです。

 ちょっと、このデータを見てください。
http://livestat.nobody.jp/2006/20061013.html
 これはその掲示板の中の「実況版」というところのデータで、番組放送中にどれだけ多くの人がコメントしたかを示しています。これを見ると、「エリンが挑戦!」の一分あたりのコメント数は53.75(要するにほぼ一秒に一回)で、何とその日(10/13)の22位につけています。どんな語学番組よりも高く、「ハムナプトラ2 黄金のピラミッド」のような冒険アクション超大作すら凌駕しています(つーか、もうちょっとマシな時間の過ごし方ってないのか、2ちゃんねらーよ)。

 こういう評価は、国際交流基金はどう見るのか分かりませんが(実は困ってたりして)、少なくともプロダクションの人たちは大喜びでしょうねー。ディレクションズという会社の方が昨日はいらしていましたが、一回の放送分の製作日数が大体一ヶ月、関わる人間は5,60人にものぼるそうです。また、たとえば駅のロケーションでは30以上の駅を見てまわったそうですし、CGキャラの方のエリンは、目の形だけでも十回以上は修正が入ったそうです。テレビ番組としては普通なのかもしれませんが、そういう努力が評価されるのは、たとえ予想外の方面からだったとしても、嬉しかったに違いありません。実際、高村さんは2ちゃんねるの反応を「ありがたい」と言っていました。

 というわけで、オタク的な要素がある方は、そういう方面からの興味だけでも充分楽しめると思いますので、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

参考:エリンの2ちゃんねるでの評判の例
http://tv8.2ch.net/test/read.cgi/nhk/1160181578/
実写エリンよりCGエリンより、なによりもテキストのマンガのエリンのかわいさは異常。俺が今まで集めてたマンガはいったいなんだったんだと考えさせられた。
なんていうコメントもあります。
posted by 村上吉文 at 20:07 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
 こんな言い方はあまりしたくありませんが、日本語教育用の教材って、
1.「その関係者」が目にする(使用する)ことしか考えていない(実際、それでも制作目的は達成されるのでしょうが)
2.「その分野」でそれなりに使用されていれば制作側は満足する(確かにそれこそが制作意図だったのでしょうが)
3.あまり使用されなかったとしても、制作側は「ひとつのモノを形として残せた」ということで自己満足に浸ってしまう

・・・・というような傾向があるような気がしていました。

 いや、自分自身にそういう傾向があったということに、この記事を読んで気づかされた・・・ということなのかもしれませんが。

 どんな分野のことであっても、その関係分野のみにとどまらず、もっと多くの人に“その存在を知ってもらうこと”って大切なような気がします。
 そういう意味では、予想外の方面で話題になってしまっている・・・というこの映像教材は、『ある意味画期的な日本語教育用教材である』と言えるんじゃないかな・・と思いました。


Posted by 現在休職中の日本語教師 at 2006年11月20日 00:11
記念カキコ( ^ω^)
他人の時間の使い方にケチつけるなお
( ^ω^)
Posted by ( ^ω^) at 2006年11月30日 16:21
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