まずリーディングですが、驚きました。「精読」がいっさいないのです。ただひたすら「速読」あるのみ。小説なら10冊、ドキュメンタリーなら5冊で100万語だそうです。100万語というのはいろいろなところで聞く数字ですが、面白いのはその方法。何と、段落の途中で息継ぎをしてはいけないのです。
これ、僕もやってみたんですが、読むスピードを上げるにはたしかにかなり効果がありますよ。何しろ辞書なんか引いていたら死んでしまいますから。
ただ、これには向いている本と向いていない本があるのではないかと思います。なぜなら、あまり自分に関係のありすぎる本だったりすると、さすがに知らない単語を読み飛ばすのが不安になるからです。そして、自分に関係のなさすぎる本では今度は関心が続きません。その匙加減がなかなか難しそうです。
言い方を変えると速読の教材を選ぶ時には以下の二点に注意する必要があるのではないかと思います。
一つは、関心が持てること。
もう一つは、分からなくても損をしないこと。
村上氏はロバート・パーカーのスペンサーシリーズをおすすめしています。
語彙の増やし方に関しても独創的です。普通は文脈が大事だから例文とかも必ず要るじゃないですか。でも村上氏はそんなことしません。一日一万語をひたすら眺めるのです。村上氏は経営者なので「社員一万人の会社の社長になったつもりで社員一万語に会うようにする」と書いています。
先ほど僕はweblioの単語帳の復習で範囲を「全フォルダー」にしてとりあえず自分の登録した語彙のうちの500語ちょうどをやってみたんですが、確かに「そういえばこんな単語もあったなあ」というのがいくつもあり、根気が続くならそれなりに効果的ではないかと思います。一語を一秒で見るにしても一万語というと三時間ちょっとかかってしまいますから、さすがに週末ぐらいしかできそうにありませんが、今度やってみたいと思います。
一万語のリストがないとこの練習はできませんが、ネットで「英単語 一覧表」「英単語 リスト」などと検索すると、いろいろ引っかかります。
英単語 一覧表データ(by しまぷっち)
http://shimapucchi.blog93.fc2.com/blog-entry-360.html
さて、日本語の先生なら既にお分かりかと思いますが、このリーディングと語彙の増やし方は相互に補完的なので、どちらか片方だけやってもほとんど意味が無いのではないかと思います。速読だけでは語彙などは身につかないので結局読めるようになりませんし、語彙を眺めるだけでは流れていくだけで身につかないでしょう。しかし、速読と「一万語を眺める」という方法を同時に行うことにより、文脈中でその語彙が想起され、記憶に残ることになるのです。
ちょっとやってみるだけでその効果はすぐに実感できると思いますよ。
ただ、この方法に合う本があるように、学習者の性格によってもこの方法が合うか合わないかは変わるかもしれません。細かいことは考えないでパワーで押し通してきたような営業職の人には向いていると思いますが、細部をひとつひとつ確認しないと前に進めないような、経理担当のような人には向いていないかもしれません。