2012年05月04日

小出裕章さんについて

今まで何度か小出裕章さんについて断片的に触れたことがあるので、ちょうど一年経ったのを機にまとめておきます。

僕も多くの皆さん同様、震災直後に初めて小出さんの名前を聞きまして、京都大学の原子炉実験所に勤めていらっしゃるということでしたから、信頼できる専門家として話を聞いていました。そして、専門家がそこまで危険だというのなら、日本は本当に危ないのではないかと心配していました。まず、声も顔も善人にしか見えず、武田邦彦みたいに見るからに嘘つきの人間ではありませんでしたしね。

しかし、いつからか「どうもおかしい」という疑念が湧き始め、決定的に彼を信用するのをやめようと思ったのが、ちょうど一年前の「3号機が核爆発した」という発言です。

2011年の5月4日、彼はMBSラジオのインタビューでアナウンサーの「3号機は核爆発したのか」という質問に、まず「核爆発、まあ、私たち、核暴走という言葉を使いますけれども」と言い換えた上で、「3号機の爆発というのはヒョッとすると核暴走というのが起きたのかも知れないと私はいま思い始めています。」と発言しています。

この時の音声はこちらで今も聞くことができます。
http://www.youtube.com/watch?v=QfMsauUspfI

この音声をアップロードした人は「小出先生は『核爆発』と言う言葉は使っていません---核暴走と言われてます。」などと書いていますが、「核爆発したのか」という質問に「核爆発」とはっきり言った後にそれを「核暴走」と言い換えた上で「核暴走が起きた」と言っているのですから、「核爆発が起きた」と明言したことになります。実際、この放送を聞いたリスナーの一人が「3号機使用済み燃料プール内で核爆発が起きた件について」というブログを書いていますから、多くの人がそのように理解したのも事実です。

彼がここで問題にしているヨウ素135の異常値も、実は観測データ自体が間違っていたことがあとで分かりましたので、そもそも「核暴走」すら起きていなかったことが今では分かっています。また、そもそも「核爆発」を「核暴走」と言い換えるところからリスナーを意図的に間違わせようという意思が垣間見られます。核爆発と核暴走が別物であることは、以下に明確に示されています。

核暴走とは - 新語時事用語辞典 Weblio辞書
「核暴走は膨大なエネルギーを瞬時に生成し、核爆発に至る可能性もある。」
http://www.weblio.jp/content/%E6%A0%B8%E6%9A%B4%E8%B5%B0

また、福島原発にあった4%程度のウラン濃度では核爆発しないことも多くの専門家が指摘していましたし、小出さんも当然知っていたはずです。核爆発していないことを知っていながら、検出データに異常があったことだけを根拠に「核爆発した」と言われたことに、僕はとても残念な思いをしました。
(それで核爆発するなら、どうして北朝鮮がウランを濃縮していることが問題視されるんでしょうね。発電ではなく爆弾にするには濃度を上げなくてはならないからです) 

実は、そのあとで知ったのですが、彼は北朝鮮の核開発に関しては反対するどころか、逆に、やめさせようとしている日本やアメリカを批判しているのです。この論文(後半だけ読めば充分です)を見ればよく分かりますが、彼が日本の原発に反対しているのは、それが日本の市民にとって有害だからではなく、北朝鮮や中国の政府にとって脅威になるからなんですね。もちろん、中国や北朝鮮の市民にとっても自国内の原発は困るはずですが、残念ながら小出さんの論文にはそういった配慮はまったく記されていません。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/KoreanN.pdf

そういうことで、僕は小出裕章さんについて、彼のすべてが嘘だとは思いませんが、検証する手間を省くために、何らかの情報のソースが小出さんだとわかった時点で、それはスルーすることにしています。そして、残念ですが2012年5月というこの時点においても、小出さんを「信頼できるソース」として扱っているメディアや個人については、ソースを評価する能力に欠けているか、あるいは「嘘と分かっていても注目されれば(あるいは政治的目的を達成できれば)いい」という、真摯さに欠けた態度であると判断しています。

もし、小出さんのこうした一面を知らずに彼を評価している人がいるのなら、彼に対する世間の評価は既に定まっていることを考慮し、今後は信頼できるソースとして扱うのはやめておいたほうがいいのではないかと思います。

小出さんに一定のファンがいることはよく分かっています。私も彼が悪い人だとは思っていません。おそらく信念の人で、共産主義こそが世界をよくすると信じているのでしょう。そして、かれはご自身の信念にしたがって発言を続けているのでしょう。彼が理想とする社会を実現するためなら、ヨウ素135の検出データが間違っていたことだけを根拠に、それが間違いだと分かっていても「核爆発した」と明言していいとお考えなのでしょう。

そして、小出さんのファンの人は、彼が政府の不甲斐なさを批判してくれるのが、自分の気持を代弁しているようで応援したくなるのだと思います。その気持は同感できます。しかし、私は共産主義がそれほど素晴らしいものだとは思っていないので、そのためには嘘だと分かっていても政府を批判していいとは思えないのです。やはり批判は事実に基づいて行うべきではないでしょうか。
posted by 村上吉文 at 21:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 主張 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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