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1999年02月24日

砂の国の日本語教育52

みなさん、アッサラームアライクム!

 いやー、オタク文化って、すごいんですねえ。こんな文化果つる所にまでその根が伸びてきています。

 そのパワーを僕に気づかせたのは、数人のサウジ人の学生の存在でした。彼らは工学部の学生であったりして、日本語専攻ではありませんが、日本文化(の一部。特に大衆文化)に非常に深い関心と知識を持っていて、時々僕の研究室にもやってきます。

 ある学生はゲームが大好きで、自分でコンピューターグラフィックなどを作っています。僕も彼の作品の一部を見たことがありますが、素人目にはなかなかの水準に見えます。ただ、彼自身はまだまだ満足していないようで、このサウジ国内にも、彼が目標としているアマチュアのアーティストがいるのだとか。この学生は、日本のゲーム会社で仕事がしたくて、自分の作品を持参しての今度の夏休みにも日本へ行くそうです。日本語の勉強も始めていて、最近は時々、正規の学生に混じって日本語専攻コースにも来ています。

 また、別の学生は日本のアニメに情熱を燃やしています。彼はいつも日本語の辞書を持ち歩いていて、日本語専攻の学生に、彼の爪の垢でも煎じてやりたいものです。そうそう、彼の持ち歩いているのは辞書だけではなくて、日本のアニメ映画のリストなんかも財布に入っています。見せてもらうと、リストには二百以上のアニメのタイトルが・・・(^^;) ほとんどは日本人である僕さえ知らないものばかりです(リストが英語なので、邦題と違う場合も多いようですが。例えば魔女の宅急便は Kiki's delivery service です) だいたい「Anime」なんていう英単語が存在するなんて全然知りませんでした。彼らを通して僕が日本の文化を新しく知ることも多々あります。

 ちょっと不思議なのは宮崎駿はあまり彼らの間で有名ではないことです。なぜなんだろう。その代わり、いちばんの人気はやっぱりエバンゲリオン(^^;)。最近はエスカフローン(?)とかいうのも注目を集めているそうです。雑誌の記事を見せてもらいましたが、高校生ぐらいの女の子と巨大ロボットが描かれていました。日本でも流行っているのかな。

 さて、この手の学生と話していて、いくつか共通する特徴があることに気づきました。 まず、全員が英語が流暢だと言うことです。これはこの年齢のサウジ人としてはかなり例外的なことです。彼らに聞いてみると、アラビア語で日本の大衆文化に触れる機会はそれほど多くはないと言うことで、したがって、アラビア語でも紹介されれば、日本文化のファンが増える可能性はあります。

 それから、彼ら自身も「オタク」という日本語は知っていて、かつ自分がオタクであるという自覚もあるのですが、何となくそれに対して誇りを持っているような感じがします。日本語のオタクという言葉には、ちょっと否定的な印象がつきまとうような気がするのですが(これって偏見なのかな)。

 彼らの日本語の勉強の仕方にも共通点はあります。これに関しては「共通する問題点」と言わざるを得ないのですが、彼らは文法をまったく重視しません。ゲームやアニメから、辞書を使ってどんどん単語をピックアップしていきます。しかし、それだけでは当然、かなり初歩的なところで限界に達してしまいます。僕の所に来るのも、自分でこの限界を超えられないと思った後だったりします。

 でも、実はこれには理由があるのです。彼らは前にも書いたとおり英語は流暢で、その英語を学んだ時には、彼らなりのやり方が通用したという自負があるのです。これはもちろんアラビア語と英語が親戚同士だからなのですが、彼らはなかなかそれを納得してくれません。彼らの世界では英語とアラビア語は正反対の言語というような認識があり、それをマスターできた自分が、どうしてもう一つの言語を習得できないのだろうと不審に思うわけです。「辞書もいいけど教科書も買えば?」といつも言っているので、「もしや本屋の回し者では?」などという、あらぬ疑いを持たれることさえあります(^^;)

 しかし逆に、彼らの勉強方法から、日本語教育関係者の一人として学んだこともあります。それは、ひらがなより先にカタカナを学ぶという点です。なぜかと聞いてみると、英語を知っている彼らにとって、カタカナさえ分かれば理解できる語彙が多いからだそうです。一理ありますね。彼らはなかなか頭がいいのです。

 と思っていたら、彼らの一人がゲーム雑誌の記事を見せてくれました。そこには「Must-Know NIHONGO」と書かれていて、カタカナの一覧と、カタカナで表記されるいくつかの言葉が書いてありました。それらの言葉とは「スタート、オプション、メニュー、コントローラ、ボタン、モード、ゲーム、ロード、セーブ、ファイル、メモリーカード、ステータス、アイテム、キャンセル、セレクト、サウンド、ステレオ、モノラル」の18語です。確かに、これらの単語さえ押さえておけば、画面の内容までは理解できなくても、何の画面なのかぐらいは分かるのかもしれません。

 しかし、そこまでして日本語のゲームを輸入してプレーしたいという気持ちがあるなら、これを日本語専攻の学生にも有効に使えないものでしょうか。 近いうちに彼らの間の交流を促進させるための食事会でも開いてみようかと思ってます。



    ; 1419/11/08 <1999/02/24(水)> 17:47:38
posted by 村上吉文 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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