1998年04月01日

砂の国の日本語教育35

 犠牲祭の休みがやってきました。ここはうちの学生から犠牲祭とは何かを説明してもらいましょう。(公開は了解ずみ)

 第6レベル(三年生後期)の二枚目タイプによる作文

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   イードル・アドハー

 イスラム暦の12月はズールヒッジャといいます。ズールヒッジャには巡礼があります。ムスリムは一生の間に巡礼を一回しなければなりません。巡礼は十二月七日から九日までですが、九日は大切な日でアラファの日といいます。その日で巡礼したい人はみんなメッカへ巡礼しに行きます。でも巡礼しない人はその日だけ断食します。

 十二月十日はイードル・アドハーで、午前七時にみんなイードル・アドハーの祈りへ行きます。イードルアドハーは四日間で、十日から十三日まで誰も働かない安息日です。イードル・アドハーではみんな貧困者に喜捨をあげます。その喜捨は羊肉です。イードル・アドハーは大祭とも言われて、毎年一回あります。巡礼されている人は七日から九日まで禁止されていることがあります。十日には解禁になります。例えば、香水やつめを切ることやかみを切ることなどです。しかし巡礼しない人は禁止されていることがありません。

 イードル・アドハーは本当に楽しいです。

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 文中の「イードル・アドハー」というのは「犠牲祭」のアラビア語です。現地の日本人の間ではなぜか「犠牲祭」という言葉はほとんど使われていないので、つい僕も学生に「イードル・アドハーにはどうしますか」なんて言ってしまうんですが、これでは普通の日本人には通じませんね。

 しかし「犠牲祭」という言葉も、日本人はどれぐらい馴染みがあるのでしょうか。実際には犠牲祭の最大のイベントは文中にもあるとおり巡礼で、この休みもメッカへ巡礼するための休みなのです。現地の日本語で「ハッジ休み」という言い方がありますが、この方が「犠牲祭」というより本質的な意味(ハッジ=巡礼)を持っています。

 イスラムの巡礼はイスラム暦の特定の期間に行われなければならず、それ以外の時期にメッカへ行ってもムスリムの義務を果たしたことにはなりません。もちろん、メッカで礼拝することはよいことなのですが。この時期以外にメッカに行くことは「オムラ」と呼ばれ、「ハッジ」とは明確に区別されています。ちなみに日本語でもイスラムの関係の本などを読むとオムラは「小巡礼」と呼ばれ、やはり「巡礼」とは区別されているようです。

 以下は作文のことですが、どうも学生の作文を見ていると尻すぼみの印象を受けることが少なくありません。欧米系の学生にもよく見られますし、逆に英語のレポートなどで日本式に書くと「結論は前に書け」と怒られたりします。もしかしたらアラブや欧米の傾向なのかもしれません。

 この学生の場合は、以前に「日本人だったら最後にまとめっぽく書くけどねえ」と言ったのを覚えていて上のような作文になりましたが、しかしいきなり「本当に楽しいです」と結ぶのも違和感がありますよね。

 この辺は彼らの思考様式そのものなのでしょうから、「サウジ人の日本語」という前提の下では尻すぼみでもいいんでしょうか。それとも練習としては日本人のように書かせるべきなのかな。もちろん日本人の書き方をいうものを知らせる必要はあるのでしょうけど。

posted by 村上吉文 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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