1998年01月18日

砂の国の日本語教育28

 断食も残り十日あまりとなりましたが、昨日は断食していない来客を得るという体験をしましたので、その時に考えたことをアップします。

 実は、ラマダンが始まる前に、K先生が断食してらした時期がありました。K先生は去年のラマダン中、日本へ旅行された関係で断食の日数が足りなかったそうなのです。イスラム教は融通のきく面もあり、兵士や妊婦などはラマダンでも断食をしないでいいのですが、しかし次のラマダンの前に、都合がつくときに足りなかった分だけ断食をしなければならないことになっていて、K先生も今年のラマダンが近づいてしまったので、去年の分の断食をされたわけです。

# あ、南極基地のイスラム教徒はこの手を使ってしのいでいるに違いない。



 K先生がラマダン中も、K先生の研究室で打ち合わせなどが何度もあり、その時もK先生はコーヒーなどを入れてくださるので、こちらは非常に恐縮してしまったものでした。 普通なら、僕も自分でコーヒーぐらいは入れていたのですが、断食中の人の前でコーヒーを入れるのも何だかなあ、と躊躇しているうちに、K先生が「コーヒーでも入れましょうか」とおっしゃるのです。

 で、昨日のことなのですが、午後三時ごろ、日本人の友人が二人、うちに来ました。ラマダン中はどこの企業も役所も、2時ぐらいに仕事が終わりになるので、その足でうちに来たようでした。 一応、僕も客が来たらコーヒーぐらい入れるのですが、「自分が断食中に、断食してない人にコーヒーを出す」ということを自分でやってみて思ったことは、別にどうってことない、ということです。断食中のカラム先生の前でコーヒーを飲んでも、別にそれほど恐縮することもなかったのかもしれません。



 なぜ、どうとも感じないのかと言えば、それは、僕自身が「断食というものがどういう物なのか、身をもって知りたい」という目的を持っていて、かつ、その目的に納得しているからでしょう。これはおそらく、「神との契約を守る」という目的を持ったムスリムも同じだと思われます。要するに、断食することに自分で納得さえしていれば、目の前で他人が飲もうが食おうが関係ないのです。

 あ、もちろん、目の前で食べている男に「こいつは神との契約を守らないけしからんやつだ」と思う可能性はありますが、しかし、断食中の自分と比べて、ひがんだりいじけたりはしないでしょう。自分で納得して断食をするということは「食べられない」のではなく「食べない」というだけなのですから。

 しかし、ここで一つ疑問が出てきます。「それじゃ、なんでこの国では異教徒もコソコソとトイレで昼飯を食べなきゃいけないのか」ということです。

 考えられることはいくつかありますが

・ムスリムも全員が断食に納得しているわけではないから、納得していない人にとっては目の前で食べている人は迷惑。

・イスラムこそが絶対唯一の価値観だと王様が信じているから。

という二つにまとめられそうです。

 納得していない(つまり敬虔でない)ムスリムに断食を強制するにせよ、異教徒はすべて悪だとみなしているにせよ、信教の自由が保障されている社会では許されないことですし、特に「相手の価値観を大切にする」ということを常に念頭に置かねばならない日本語教師にとっては、親の仇のような考えです(^^;)

 しかし、これが国是なんですね、この国では。

 日本が「法治国家」を国是としてるように、ここではコーランがすべてなわけです。

 日本の法律に納得できなくても、その法律が変更されない限り、従わなくてはならないのと同じなのでしょう。

 こう考えてくると、法律と宗教の違いって、基本的には「納得できない部分を変えることができるか」ということでしかないような気がしてきました。 両方とも一つの価値観ですから。 というか、方言だらけでコミュニケーションができない時に標準語が必要なように、ことなる価値観がたくさんあって問題がある時に、平均的な価値観として

法律が必要なわけですよね。

 宗教の場合は、全知全能、完全無欠、超パーフェクト(^^;)な存在が指示していることなので、その存在を信じている人には説得力を持つのでしょう。そして納得できない部分は「神の偉大な計画は、人間ごときには理解できないときもあるのだ」と自分を納得させる。 法律は宗教ほどの説得力はない代わりに、社会が自分で作った(変更しながら

作りつつある)ものだから、それを遵守させる力を持つのかもしれません。納得できない部分は自分で変えればいいのですから。

 以上、風呂の中でつらつらと考えていたのですが、何だか、取り留めのない発言になってしまいました。すいません(^^;)
posted by 村上吉文 at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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