1997年12月23日

砂の国日本語教育20

12/22 ただいま、作文の試験中。

 試験と言っても、俺が来てから四回しかしていない作文の授業の試験なので、下書きまでは終わっている「サウジアラビアについて」を仕上げてもらうことにした。(期末試験なので、授業で扱っていないものは試験できない)

 蝿がうるさくて困る。虫にも文化の違いというのがあるもので、こちらの蝿は人の顔にたかるから始末が悪い。おそらく、砂漠では他に水分がないので、そういう行動パターンができ上がっているのだろう。

 学生の二枚目タイプの方は20分ほど遅刻して来た。しかも、試験中に「この表現とこの表現ではどちらがいいですか」と聞いてくる。うーむ。本人は、いたって誠実そうな顔で聞いているので、おそらく彼の考えている試験というものは、俺の考えるものとは違うのだろう。「試験中なので、自分で選んでください」とだけ言っておいた。

 「この大学では試験は必ず実施し、レポートはだめ」と同僚のF先生から聞いていたのだけど、試験そのものの概念が少し違うようだ。 それとも、作文の仕上げになってしまったので、試験よりも授業という雰囲気になってしまったのかな。

 こうして見ていると、彼は複数の色のペンを使い分けている。これはモンゴルでも見なかったなあ。具体的に書くと、作文のタイトルは緑色で、小さな単元は黒、そして本文は紺色の字になっている。作文としてはなかなかカラフルである。

 と書いていると、いきなり俺のモバイルギアが9:00の時報を打ち始めた。焦る。

 再び蝿が騒ぎ始めた。近くにとまったので、定規で仕留めようとするが逃げられてしまう。学生は笑いをこらえている。うむ、有段者の腕前が泣くぜ。 今度は学生の頭にとまった。ここからは目の前で絶好の位置だ。仕留めたい誘惑に駆られる。どうせ頭巾をかぶっているんだし。いや、いかんいかん。



 朝、食堂で「サンドイッチ」という単語が言えなくて困ったので、この時間に調べてみる。なんと単語ではなくて「スライスパンの間のハム」という意味のフレーズが書いてある。さっき食堂で「***か?」と聞かれた単語とは全然違うなあ。

 だいたいサンドイッチってのは、ハムの種類じゃなくてパンも含めた全体のことだろ?

 ユーモラスな方の学生の手に蝿がとまった。そーっともう片方の手を近づけてサッとつかまえ、得意げに笑う。残念だが、お見事。

 彼の作文は以下の通り(本人の了解は得てあります)

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    サウジアラビアについて

1931年にキングアブドゥアジーズはサウジアラビアを統一します。サウジアラビアは西南アジアがあります。サウジアラビアの面積は2,500,000mです。リヤドはサウジアラビアの首都です。リヤドは国家の中央にです。サウジアラビアはイスラーミー世界の中心、神聖な場所に特有のムスリムがあるので。教育(ここだけ緑の字)。政府に重要な地位についている。政府は小学校と中学校と高校と大学を建設します。大学でさまざまな知識を教えます。例えば自然科学や政治学や社会学。サウジアラビアには無料の教育です。すれに大学と学校の何冊は学生に財報酬を両替します。

健康(ここも緑の字)。政府は健康の開発に乗り出した。政府は病院と小さい病院を建設します。無料の治療と薬を両替します。有名なとこる(ここも緑の字)。サウジアラビアには有名なとこるがあります。たとえばメッカとメディナ神聖な場所です。ジェッダとダマアマとアブハとターイフ観光都市です。

気候(ここも緑の字)。夏はサウジアラビアの気候は乾燥している。でも、観光都市は天候は穏やかです。冬はサウジアラビアの気候が寒くなった。

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 文法的には初歩的な間違いもあるが、漢字をこれだけ大量に使ったのには驚いた。ただし、漢字は細かい間違いもあった。

 二枚目タイプのほうは、もうほとんど終わっているのに、念入りに見直しをしていて、なかなか終わらない。彼は話すときも慎重で、頭の中で文を組み立ているのが分かる。

 対照的に、ユーモラスな方は、文とは言えないような単語レベルの発話でもガンガンするし、日本語で冗談も言う。筆記試験をすれば二枚目タイプのほうが全然上なのだが、単位時間あたりのコミュニケーションではユーモラスタイプの方が高い。



 二枚目タイプの作文は以下の通り(公開は了解済み)

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    サウジアラビアについて

「サウジアラビアの国境」(ここは黒い字)

 サウジアラビア王国は西南アジアに位置します。サウジの北はイラクやクェートで、サウジの南はオマーンやイエメンがあります。サウジの東はカタールやUAEやバーレーンで、サウジの西は紅海があります。



「発生と言語と人口」(ここも黒)

 1931年にはアブドゥルアジーズ王にサウジアラビアは作られました。サウジアラビアの言語はアラビア語です。リヤドはサウジの首都です。人口は12,000,000人のサウジアラビア人で、16,000,000人の外国人もあわせています。(МОНГОЛ!註:外国人も合わせると16,000,000人です) リヤドだけで1,500,000人がいます。

「宗教」(黒字)

 サウジアラビアの宗教はイスラムです。イスラムではムスリムが祈りや巡礼や断食などをしなければなりません。祈りは毎日五回します。一生の間に巡礼を一回します。毎年イスラム暦で九月に断食をします。

「石油について」(黒字)

 サウジアラビアは世界でもっとも重要な産油国とみなされています。サウジアラビアは外国へ石油などを輸出しています。そして日本から車や電気製品を輸入しています。交通は車と飛行機と電車とバスです。でも、車とバスをいちばんつかいます。

「有名な所と気候」(黒字)

 サウジアラビアにはたくさん有名な所があります。リヤドやジェッダやダンマンやメッカやメディナやアターイフなどです。気候について、サウジには四季があります。サウジでは所によって気候が違います。例えば、リヤドの冬はだいたい10〜20度で寒くて、夏はとても暑いです。けれどもジェッダの冬は涼しくて、夏は蒸し暑いです。アッターイフは山の上があるので、ずっと寒くて避暑地です。

「スポーツ」(黒字)

 サウジアラビアにはいろいろなスポーツがあります。でも、サウジにスポーツの中ではサッカーを大変な人気を博します。サウジアラビアのサッカーチームは世界的名声を博します。

「料理」(黒字)

 サウジアラビアにはいろいろな料理があります。カプサ(ご飯)やコルサーン(パンと野菜)やマンディー(ご飯と肉)やジャリーシュ(ミルクと小麦)などのような料理です。

「教育」(黒字) サウジアラビアは教育で先進国の一つです。政府は教育を重要視しているので、七つ大学とたくさんの高校や中学校や小学校を提供しました。

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 二人は、今朝も5:00から一緒に作文の試験に備えていたのだという。なかなかやるじゃん。俺も、二人が無事に上のクラスに進めるように頑張らないと。

posted by 村上吉文 at 07:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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