1997年12月09日

砂の国の日本語教育15

 第5レベルでテレビドラマの「ふたり」の一部(三分ぐらい)を見せてみた。確かに男と女はでてくるが、別に恋人同士というわけでもないし、女の子が着ているのは高校の制服(それも冬服)で、日本の基準では「きちんとした」格好である。

 しかし。


「先生、これは困ります」とユーモラスな方の学生が言った。

 うーむ、それほど日本語がうまいわけではないのに、なぜかこの「困ります」だけは非常にツボにはまっている。(こういう、モダリティの強い表現だけ妙にうまい学習者って、時々いるんだよなあ) もう一人の二枚目タイプは「いいじゃないかよ、大目に見てくれよ、勘弁してよ」と泣きべそをかきかけている。彼は、さっき俺が「字がきれいじゃないですね、すみません」と言ったところ「え?女の人がきれいじゃない?」と聞き返して、「女の人じゃないです。字ですよ、字」というとものすごく狼狽していた。同じクラスでこれほど対照的なムスリムがいるんだから、ムスリムにもいろいろいるわけだ、確かに。

 しかし、要するに女性が写っているだけで問題なわけ? 肌は首から上と手首から先しか映っていないのに。(足は映らないシーンをわざわざ選んだ) ユーモラスな方の学生は、普通は非常に明るく活発なのだが、実は敬虔なムスリム、というか、こういうことになると頭の堅いムスリムで、二枚目タイプから「ムタッワ」と呼ばれている。

(「ムタッワ」というのは、こちらの風紀取り締まり委員みたいなもので、例えばお祈りの時間に営業している店があると注意してまわったりする人たちのことで、そのほとんどはボランティアだそうだ。)



12/07

 この大学では、25%以上欠席があると退学することになっている。しかし、今日回ってきた**長からの書類には、「学生の退学は、学生と教師の両方の問題である。もし、あなたが学生を退学にしなかったら、私はあなたに感謝する(こなれてない日本語だな)」と、はっきりと書いてあった。



12/09

 ちょっと動揺してるなあ。日本のドラマなんて見るんじゃなかった。 見終わって、ふと気が付くと、ここは何千キロも離れた砂漠の街。 日本の、何というか、やさしい、しっとりとした感じ。それがこの街には皆無だ。

 覚悟したはずじゃないか。結構ヤワなんだな。



 酒でも飲みたいんだけどな。こういう時は。
posted by 村上吉文 at 07:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック