したがって、このコースでは激変しつつある中東情勢の中で、翻訳などを通していない自分のナマの声を日本語で発信できるエジプト人を育てるということが急務とされていました。そしてその最終形態として以下の4つの要素をすべて含む情報を140文字に凝縮して大量に発信することを目指していました。
1.自分の意見
2.ニュースからの引用(アラビア語からの翻訳など含む)
3.ニュースのソース(普通はURL)
4.その内容にふさわしいハッシュタグ
しかし、そもそも「ツイッターとはなんぞや」というところからのスタートなので、まずは非公式RTによって、自分の意見を表現する練習です。しかし、教室のように管理された環境ではなく、学習者たちは既にインターネットという自由でもあり危険でもある大海原に漕ぎ出しているので、「自分の意見」を何でも自由に書いてしまうと、いきなりトラブルを起こしかねません。それで、最初は「RTして同感や賛同を示す」パターンの練習としました。
このシリーズの第一回でツイッターを使うことの学生にとってのメリットを紹介しましたが、実は教師にとってもメリットはいくつもあり、特に以下の2つは重要です。
1.140文字だけの(つまり、あまり文脈に依存しない)短い例文を大量に見つけることができる。
2.それらの例文をまとめて紹介するツールがある。
今回の「RTして同感や賛同を示す」パターンの練習では、以下のキーワードを検索した結果をまとめました。
同感。RTこれらをまとめながら、一見ネガティブな「残念です」なども、文字通り残念なニュースに対する意見としては同意表現として頻出していることに気づいたので、「ありがたい。RT」などとともにいくつか入れました。また、「激しく同感」のネットスラングである「禿同」なども、まあ一種の余興として混ぜておきました。それらの例が以下にあります。
同感です。RT
賛成。RT
賛成です。RT
本当ですね。RT
その通り。RT
確かに。RT
いいですね。RT
そうですね。RT
「RTして同感や賛同を示す表現を集めました。」 - Togetter http://togetter.com/li/120091
なお、これは先生や学生のストラテジーとかビリーフにもよるのでしょうが、僕個人は「さあ、この文型を覚えてください」とか提示されると却って胡散臭さを感じてしまう人間なので、検索結果はすべて混ぜてあります。つまり、こうした例文を集めるときは順番に検索キーを入れて集めるので、最初は「同感。RT」ばかり並んだ後に「同感です。RT」が連続して並ぶようになっているのですが、学生に提示するときにはそれを時間軸で並べ直して、検索キーは一見ランダムになって分かりにくくなっています。
これは、教科書外の実際のコミュニケーションでは、日本語の特定のパターンを「自分で見つけること」が大事だからという理由もあります。もうちょっと流行っぽい言葉を恥ずかしげもなく使えば「気づき」でもいいのですが、やはり「与えられたものだけを暗記する」というパターンの学習者には初級が終わった段階ぐらいで限界が来てしまいますよね。
このあと、自由でもあり危険でもある海でヒヤッとすることも起きるのですが、それについてはまた次回ご紹介したいと思います。
【参考】
むらログ: ツイッターで日本語学習(1) なぜツイッターなのか
http://mongolia.seesaa.net/article/264280837.html
むらログ: ツイッターで日本語学習(2)
http://mongolia.seesaa.net/article/264852876.html
RTして同感や賛同を示す表現を集めました。 - Togetter
http://togetter.com/li/120091