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2012年01月14日

『CLIL 新しい発送の授業 −理科や歴史を外国語で教える!?−』




なかなか面白い本でした。本書のタイトルにあるCLILとはContent Language Integrated Learningの略で、このブログで何度も取り上げてきたCBI(Content-Based Instruction)などとかなり近い概念です。というか、何が違うのかよく分かりません。もしかしたら同じかもしれません。

しかし、本書『CLIL 新しい発想の授業』は堅苦しい論文集ではないので、CBIなどの専門知識がなくても特に問題なく読み進めることができそうです。
もちろん理論的な説明もあるのですが、実践例なども非常に豊富に収録されているので、具体的にイメージしにくい人にも入門書として最適です。

また、これらの書籍では「成功例だけ紹介されているのでは?」という疑念がつきまといがちですが、本書はマレーシアでの失敗例なども紹介していますので、あまり偏った立場から書かれた本ではないようです。

さて、日本語教育でこのCLILがすぐにも導入できそうなのは、大学入学前の予備課程で行われる日本語教育の現場ではないでしょうか。
たとえばマレーシアのAAJなどでは日本語と同時に数学や理科などの科目も教えられていますし、日本の国内では国際学友会などが同じようなプログラムを実施していました。
また、実際にこういった施設の卒業生たちは日本語でそれぞれの専門を学ぶことになるわけで、卒業前からそういった練習ができていると、大学入学後の生活にもスムーズに移行できることでしょう。

そういえば、この本が出版されるときにツイッターで紹介したら、「母語でやるのと同じ成果が見込めるのかなあ」とコメントをいただきましたが、本書17ページにはそういう誤解を紹介した上で、「ところが、実際には、CLIL授業を受けた生徒の学力は決して見劣りしないし、干渉するどころか、逆に学力を促進する報告もあります」という記述があります。ただし、上に述べたマレーシアの失敗例の章では、目標言語は伸びたものの、数学などの学科では却って成績が下がったという事例も紹介されています。

個人的には、初級前半ぐらいの時点ではちょっと難しいかと思いますが、中級に近づいてきたらこういった試みは充分に可能なのではないかと思っています。「にほんご45じかん」などの簡潔にまとめられた主教材でまずは日本語だけを集中的に学び、そのあとはCLILや自律学習などの方法で日本語を単に目標言語としてだけでなく、学ぶためのツールとしても使いながら、成長していくのが学びの本来の姿に近いように思います。

その他、僕は読んでいないのですが、以下のような書籍もあるようです。

posted by 村上吉文 at 00:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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