2011年08月02日

石井式漢字指導法の実際

Google+の方で「石井式漢字指導法はすごい!」というようなことを書いてから、もう十日ぐらい過ぎてしまいました。実際にうちで作った資料をご紹介します。

その前にまず「石井式」というのを説明すると、石井勲氏が開発・提唱された漢字指導法で、物語などを読み聞かせながら登場人物の代わりに漢字を示すと、幼稚園児でも漢字が読めるようになる、というものです。この方法は外国語としての日本語教育の世界ではほとんど注目されていないのが実情ですが、時代の変化により今後はもっと注目されるべきなのではないかと思います。

時代の変化というのは、言うまでもなく文字が手書きされなくなってきているということです。キーボードで入力される場合は変換候補が表示されるので、その中から自分の書きたい文字を選べばよくなっています。そしてもう一点は、経済交流がどんどん盛んになるにつれ、趣味で日本文学を読むだけのような人だけでなく、仕事として日本語が必要な人などの「多忙な学習者」が急増しているという点です。つまり、手書きのような時間のかかる学習方法はやりたくてもできないわけですよね。

さて、私が作ったパワーポイントのスライドは以下のものです。桃太郎のストーリーですね。一枚目は削除し忘れたままアップロードしてしまったので、無視してください。二枚目以降の絵本らしき背景に、登場人物の代わりに「漢字」が入っているものが今回の漢字指導の目玉です。まあ、私は絵が下手なので、デザイン的にはここから学ぶことは皆無だろうと思いますが、石井式の漢字指導法がどういうものかは分かりやすいのではないかと思います。



これをめくりながら、僕が日本語で桃太郎の話をし、それにアラビア語の通訳がつきます。(本当はアラビア語のみでも大丈夫だと思いますが) アラビア語で話すときは、以下の札を見せながら話します。



お話のテキストは以下の通りです。
キビ団子の由来とか、犬と猿と雉の登場の仕方など、ちょっと一般的でないところもありますが、ご容赦ください。書いたのは僕ですので、みなさんにもご自由にお使いいただけます。

昔、日本の小さな村にお爺さんとお婆さんが住んでいました。
二人は仲良く暮らしていましたが、子供がいなかったので寂しい暮らしでした。
お爺さんは山で薪を売ってそれを村で売って生活していました。
ある日、おじいさんはいつものように山へ行きました。
おばあさんは川へ洗濯に行きました。
すると、川上の方から大きな桃が流れてきました。
「まあ、なんて大きな桃でしょう。お爺さんと一緒に食べましょう」
お婆さんは大きな桃を抱えて帰りました。
夕方になってお爺さんが帰ってきました。お爺さんは大きな桃を見てびっくり!
「これは驚いた。こんな大きな桃を見るのは初めてじゃ。さっそく食べましょう。」
おばあさんは大きな桃をまな板に載せて包丁で切ろうとしました。
そのとき、桃は自分でぱっくりと割れて、なかなか男の子が出てきたではありませんか。
オギャーオギャーと男の子は大きな声で泣きました。
お爺さんとお婆さんは「これはきっと神様が授けてくれたに違いない。うちの子供として育てましょう」と決めました。
お爺さんとお婆さんはその赤ちゃんが桃から生まれてきたので、「桃太郎」という名前を付けました。

お爺さんとお婆さんが桃太郎を大切に育てたので、桃太郎はとても元気な男の子になりました。やがて、桃太郎はお爺さんの代わりに働くようになったので、おじいさんもお婆さんも喜びました。それに、桃太郎は犬や猿や雉などの動物たちにも、いつも優しくしてあげていました。

ある日、桃太郎のところに雉が飛んできて言いました。
「桃太郎さん、たいへんです。悪い鬼たちが都にやってきて、お金や宝を持っていったり、家を壊したりしています。みんな困っています。助けてください!」
それを聞いた桃太郎はとても怒って言いました。
「それはひどいな。僕がやっつけてやる!」
でも、お爺さんとお婆さんは大切に育てた桃太郎が鬼と戦うと聞いて心配でなりません。
「お爺さん、お婆さん、ごめんなさい。でも、どうしても行かなければならないんです」
桃太郎がそういうので、お爺さんとお婆さんはあきらめて言いました。
「実はうちには先祖から受け継いできた不思議な木の実がある。これを食べると百人分の力が出るのじゃ。この木の実を混ぜた団子をお婆さんに作ってもらいなさい」
お婆さんは心配でしたが、それでも団子四つを作って桃太郎を見送りました。

鬼たちがいるのは、「おにがしま」という島です。桃太郎は鬼ヶ島へ向かって歩きはじめました。

その途中で桃太郎は一匹の犬に会いました。その犬は桃太郎といつも遊んでいる友達です。犬は桃太郎に尋ねました。
「ももたろうさん、美味しそうな匂いがしますね。私に食べ物をください。私はとてもお腹が減ってしまいました」
そこで桃太郎は団子をひとつ犬にあげました。犬はそれを食べるととても喜びました。
「何だか、すごく強くなった気がするぞ! 桃太郎さん、ありがとう! 何でもお手伝いをするよ」
桃太郎は犬に言いました。
「それじゃ、一緒に鬼をやっつけよう」
「もちろん、行きます。ワンワン!」

桃太郎と犬が一緒に歩いて行くと、今度は猿に会いました。団子を食べて強そうになった犬を見て、猿は聞きました。
「やあ、犬さん、私はお腹が減って死にそうです。鬼たちがこの近くの食べ物をみんな持って行ってしまいました。犬さんはとても元気そうですね。どうしたんですか。」
「桃太郎さんからおいしい団子をもらって食べたら元気になったよ。これから犬をやっつけるんだ。一緒に行こう」
「ウキキキ!それは絶対無理です。鬼はとても強いんですから」
と猿はこわがりました。そこで桃太郎は言いました。
「それじゃ、この団子をあげます。食べてください」
猿はお腹が減っていたので、その団子を急いで食べました。
「あれ?なんておいしいんだ! 何だか急に元気になってきたぞ。一緒に鬼をやっつけにいきましょう! ウキキキ!」
こうして猿も、桃太郎や犬と一緒に歩きはじめました。

桃太郎と犬と猿が歩いて行くと、今度は雉がいました。最初に鬼のことを知らせてくれた、あの雉です。雉は怪我をして飛べなくなっていました。
「桃太郎さん、助けてください!鬼にやられてしまいました!」
「なんてひどい鬼だ! でも、大丈夫。これを食べなさい」
桃太郎がだんごをあげると、怪我をしている雉はゆっくり食べました。でも、食べ終わると急に元気になって言いました。
「あれ?飛べる!飛べるぞ!」
雉はとても喜んで空を飛び回りました。
「桃太郎さんありがとう! お礼に何でもするよ!」
「それじゃ、鬼ヶ島まで案内してください」
「もちろん行きますよ、ケーンケーン!」
こうして雉も、桃太郎や犬とや猿と一緒に行くことになりました。

桃太郎たちは鬼ヶ島の近くの海岸に来ると、漁師から船を借りて、鬼ヶ島まで行きました。最後に残っていた団子を桃太郎も自分で食べました。
さて、鬼ヶ島の鬼の家には、十メートルもある高い壁と大きな門があって、門には中からかんぬきがかかっています。
でも、雉が空を飛んで中に入り、門の内側からかんぬきを外してくれました。
「よし行くぞ! 鬼たちをやっつけろ」
中にいた鬼はびっくりしましたが、入ってきたのが子供と犬と猿と雉だけだったので、安心して言いました。
「何をしに来た!お前たちを食べてやるぞ!」
でも、不思議な団子を食べた桃太郎たちはとても強いです。犬はガブッと鬼の足に噛み付きました。猿はウキキッと鬼の目を引っかきました。雉はケーンケーン!と固いくちばしで突っつきました。そして、桃太郎は大きな鬼を「えーいっ!」と投げ飛ばしました。
「うわー、痛い痛い。俺の負けだ!助けてくれ!」
「もう悪いことはしません。許してください!」
鬼は泣いて謝り、近くの村から奪ってきた宝物やお金を差し出しました。
そして、車に宝ものを積んで桃太郎たちは鬼ヶ島から出ました。
その途中で鬼にいじめられた人たちに宝物を返しました。
そして、桃太郎はおじいさんとおばあさんのいる村へ帰りました。


で、その結果なんですが、これは日本語学習コースではなくて「入門編」というお遊びイベントだったので、テストなどはしていません。ですが、物語の後で口頭の確認はしています。そのとき録音していた音声を確認してみますと、七つの漢字を同時に示して一人一人に「鬼の漢字はどれか」「犬の漢字はどれか」など聞いてみたところ、全員が正しく選ぶことができていました。

また、漢字一つを示して、一人ずつ「この漢字の意味は何か」と聞いてみたところ、「爺」を「おばあさん」と答えた受講生が一人いましたが、残りの六つの漢字は全部きちんと意味が言えました。

ということで、全部合わせると13/14という高確率で漢字の形と意味が結びついて認識されているという結果になりました。

なお、この辺の確認はアラビア語を使っているので、「犬」=「inu」というような発音はまったく指導していません。アラビア語で犬のことを「カルブ」といいますが、「犬=カルブ」という認識です。
posted by 村上吉文 at 13:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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