2011年03月23日

僕の声なんか届かないと思うけど

どうもブログを書く気分になれずにいるのですが。

その理由は、やっぱり今回の震災が重すぎて、安易な励ましなんか口にできないような気分なんですよね。

もともと僕は、エジプトの革命の時も危なくなったら日本に逃げ帰り、震災の前には安全なカイロに戻っていたチキン野郎です。そんな僕が「がんばろう」なんて言ったところで、誰の心に届くのだろうか、と。

そういう重苦しい雰囲気だったので、とてもブログを書く気分ではなかったのですが、でも、もしかしたら、ここエジプトの人たちの声なら傷を負った人たちの心にも届くかもしれないと思って、今日は久しぶりにブログ投稿のページを開きました。

彼らの声をご紹介する前に、知っていただきたいことがあります。それは、日本のテレビでは決して放映できないような経験に、彼らも晒されてきたのだということです。

たとえばこのビデオ。銃声とともに一人の青年が倒れます。

映画で見るような劇的な別れの言葉もなく、一人の人間の命がこんなあっけなく奪われてしまうものなのかと驚いてしまうぐらい、簡単に殺されていきます。

こちらのビデオでも、全く無抵抗の若者が警官に撃たれて倒れます。

(アルジャジーラの放送では、この青年は一命を取り留めたと言われています)

あるいはこのビデオ。破壊行為など一切していないデモ隊の集団に、ブレーキもかけずに猛スピードで車が突っ込み、人間を跳ねとばしていきます。


もっと至近距離から似たような場面を捉えた動画もあります。


これらの動画は現場ですぐにyoutubeなどにアップロードされ、1月28日にネットが遮断されるまで、デモに参加していた若者たちの間で共有されていきました。もちろん、僕のように屋内待避を求められていた人間でも、これらの情報は次から次へと知ることができました。ネットにアクセスしない人たちにも当然クチコミで伝わり、デモに参加している人たちは「次に死ぬのは自分かもしれない」という自覚を持って戦っていたのです。そして実際、デモ参加者のうち数百人にとっては、悲しいことにその不安が現実になってしまいました。

タハリール広場には、犠牲者たちの写真や名前が張り出される一角ができましたが、その数は日を追うごとに増えていきました。今はもう平和なタハリール広場ですが、犠牲者たちの思い出は今もこのサイトに残されています。
 http://1000memories.com/egypt
ここでは、犠牲者一人一人の写真、名前、年齢、職業、死因などが記録されています。狙撃手に撃たれて亡くなった十六歳の女の子などもあり、見ているだけで胸が重くなります。

このページの一番下には「Remembered by 1M」と書かれていて、25日の革命勃発から28日の百万人行進までの間、この「1M」(One Million)という二文字が、ツイッターのハッシュタグをはじめ、合い言葉のように使われていたのをリアルタイムで見ていた僕にとっては、とても冷静な気持ちで見ることができません。

ムバラク辞任後に、エジプト当局は犠牲者の数は360名と発表しましたが、その後、「それを大幅に上回る可能性がある」と認めています。

もちろん、数の上で言えば、今回の大震災の方がはるかに大きな犠牲をもたらしたということはできるでしょう。しかし、愛するものを失った人間にとっては、たった一人でもかけがえのないものです。大切なのは、エジプトのみなさんが日本を思ってくれている気持ちの中には、この2011年になってから彼らが経験した、こうした悲しい物語の一つ一つがあるのだといういことです。

僕のような人間がはげましても、震災で傷ついた人の耳には届かないでしょう。しかし、彼らの声なら届くかもしれない。そう願って、このメッセージをご紹介したいと思います。

「タハリール広場から被災者へのメッセージ」
日本語を話している人を含め、このビデオにでてくる多くの人たちは、実際に仲間たちの死を乗り越え最後まで戦いぬいた、タハリール広場のあの大群衆の中にいました。そういう人たちの声だからこその重みを、どうか感じていただければと思います。



posted by 村上吉文 at 07:46 | Comment(6) | TrackBack(0) | 主張 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
みどごんパパさん、応援ありがとうございます。
海外の生徒からもたくさんの声が寄せられています。世界からの応援の声は被災地の人の力にもなっていると思います。
祈りや現地での募金活動だけでなく、一時帰国している生徒達が海外にある風評を否定してくれていることがありがたいと思います。
たとえば、東京でも水も飲めない(コンビニで地震当日歩いて帰るため水や食べ物が売り切れてたけど)、防護マスクをしなくては歩けない(花粉症の人が多いから)、食料がなく飢餓が起こりつつある(風評から東京のスーパーで日配品や米がなくなりましたが、今はだいじょうぶ)、東京でも多くのビルが倒壊している(古い九段会館の天井が崩れて2名死亡)、銀座など東京の街に人ガ歩いていない(たしかに計画停電で空いています)、東京の夜は真っ暗でゴーストタウンのようだ(計画停電で電飾自粛、デパートなど営業時間短縮)、ゾンビのようにさまよう人が東京にもいる(いない…ただの酔っ払い?)…風評と映像をちょっと見て誤解しているからだと思います。
みどごんパパ、海外にいらっしゃる方はどうかこのような誤解を解いてください。日本の経済活動が活発なら被災地への支援もできます!
Posted by あちゃこ at 2011年03月23日 11:34
エジプトの皆さん、ありがとうございます。

みどごんパパさん、ご苦労様です。

フエでも口々に心からのねぎらいの言葉が、そして募金活動がおこなわれています。
Posted by 福島泰正 at 2011年03月23日 19:35
お気持ちわかります。

以前、イランのバム大震災の時に似たようなことを感じました。その時に最前線に立ってとても積極的に支援していたのが阪神淡路大震災の経験者達でした。その時にとても強い絆が生まれたなと思ったのですが、今回もこうしてエジプトのみなさんとの間に今まで以上につながりあえる機会が出来たと思いますし、それをつないでいらっしゃる村上さんの存在も大きいと思います。

国内にいて様々な励ましの声を見聞きするのですが直接今回被災していない私にとっても阪神淡路大震災の経験者が励ましてくれる映像・言葉が一番胸に響きます。

エジプトにいるわけでない私にとってもやはり自分が何をできるだろうかと思うのですが、最近思うのはあちゃこさんと同じことです。

日本人同士の間でも適切ではない情報の拡散が見受けられるのですが(善意だからなおのこと始末が悪いんですけど)、海外においてもっときちんと日本の情報が伝わっていかないと長期的に日本にとってマイナスだと思っています。留学生の動向を見ると短期的にもマイナスだと思いますし、留学生自身にとっても各自のキャリアが左右されてしまうので大きな問題だと思います。

村上さんが海外にいてもこれまでの知見を生かし、様々なスキルを駆使して国内外にいろいろな情報を発信したり他者に関わってくれていることはそういう観点からみてとても意義があると思います。

ご家族のことも心配だと思いますがどうぞこれからもご健康にお気をつけてご活躍下さい。
Posted by ozawa at 2011年03月24日 16:08
「日本がんばってください。」を見ました。このメッセージがたくさんの方に届くといいですね。
外国で映像だけで事態を受け取る無力感に、私も少し陥ってました。昨日は放射能が到着したと大騒ぎでしたよ。影響はないが・・・ということでも。
たくさんの励ましやお見舞いを受け取っているのですが、どんな風に届けたらいいか、いろいろ考えました。継続的に、誰でもいつか見られるという点でネットの中で表現しようということになって、もうすぐ出来上がります。

ご紹介ありがとうございました。
がんばって! というと、自分もがんばれるような気がしますね。

Posted by 内田陽子 at 2011年03月24日 16:12
村上さん、大変ご無沙汰しております!お元気ですか〜!twitter、フォローしてくれてありがとうございます。でも、全然してないんです・・・、すみません・・・。一目瞭然だと思いますが・・・。
通勤の電車の中で読む新聞には、地震の記事が中心ですが、それ以前にはチュニジアからエジプト、そしてリビア、さらにサウジやシリア、バーレーンの記事がありました。本当に心が痛くなりました。中東諸国のあからさまな、反体制グループへの取り込み策や幼稚というか正直すぎるというか閉口してしまいます・・・。
エジプトでもエルバラダイは言うことは立派でも力がないのでしょうか、世論に乗れていないような気がします・・・。エジプトではどうなのでしょうか?リビアの大佐はやはり、狂犬ですね・・・。
まとまりのないコメントで失礼しました。お礼のみと思い、コメントしてみました。
またエジプトでのお話を聞かせていただければ嬉しいです!
Posted by オーハラ at 2011年03月28日 22:37
オーハラさん、お久しぶり!
おすすめの「The kite runner」の予告編を見たところです。これはすごそうですね。ハザラ人というのはモンゴル系なので、なおさら。
つぶやき楽しみにしてます!
Posted by 村上吉文 at 2011年03月29日 00:13
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