2011年02月17日

エジプト在住者が身をもって学んだソーシャル時代のネットゲリラの戦い方。

憲法制定の日程も決まり、とりあえずエジプトの革命は一段落したところですね。民主化はまだまだこれからですが。

さて、今回の事態は、体制側がチュニジアの事例からfacebookやtwitterなどの威力を学び、それを事前に遮断するという点でこれまでとは一線を画していました。エジプトに住んでいた一人の人間として振り返りながら、これから他の国で同じような事態に陥ったときにどうすればよいかを考えてみたいと思います。

エジプトでは、まず最初にtwitterが遮断され、次に携帯のSMSが遮断され、インターネット自体が遮断され、最後には携帯の音声通話まで遮断されるという段階を踏みました。今後、他の国でこれと同じ順序で事態が推移するとは限りませんが、それぞれの段階でやっておくことを述べておきたいと思います。

まず、Twitterを切られる前にやっておくべきこと。
・最低限のハッシュタグを決めておくこと。
ハッシュタグというのは、特定の話題で書き込むときに目印として使うものです。その目印で検索すると、たとえ知らない人でもその話題に関係する人の発言も読むことができます。
今回の場合は #jan25とか#1Mとかのハッシュタグが機能しました。現在は日本語でエジプト情勢を語るときには#egyjpというタグが中心になっています。これは活動家が使うだけでなく、在住者が現状を知るためにも非常に役立ちます。これがのちのち役に立ちました。

・それから何らかの他のサービスからtwitterへの自動投稿を設定しておくこと。
やっておいてよかったのはyoutubeに動画をアップロードするとtwitterに自動で投稿される設定。今回はtwitterを遮断されてすぐに携帯のカメラで「ブロックされた!」と叫んでアップロードしたところ、多くの人に知ってもらうことができました。そのときの動画はこちら。youtubeは直接twitterと連携していますが、普通のブログなどはフィード(RSS)をtwitterに読ませる設定が必要です。僕はtwitterfeedというサービスを使っていますが、もう少しいいのがあったら、どなたか教えてください。これはときどき投稿されないことがありますので。

・その際に重要なのが、前述のハッシュタグをタイトルに入れておくということです。こうしておけば、ツイートの文中にハッシュタグが含まれるので、フォロワーが少なくても、関連の話題に関心のある多くの人に知らせることができます。

・もっといいのは、メールで投稿するサービスです。
海外で使うには、以下で紹介されているものがいいでしょう。
 http://f.daccot.com/2011/02/13/6474/
 (日本で使うには他のものもあります。)

・逆に、やっておかなくて後悔したことは「saynow.zendesk.com」の登録。伝言メッセージとtwitterを連携させるようなサービスで、電話で話した音声がtwitterに投稿されるようです。twitterが遮断された状態だと、このサービスへの登録自体はできますが、twitterとの連携の部分でうまくいきません。これをやっておくと、twitterのみならずネット自体が根こそぎ遮断されても音声通話さえ生きていれば、twitterを通じて世界に情報を発信することができます。ただし、音声だけではハッシュタグなどの設定ができないかもしれないので、「これを聞いた人は#jan25というハッシュタグをつけてリツイートしてください」などと入れておくといいかもしれません。

Twitterを遮断された後の対応
・twitterを読むには、Googleのリアルタイム検索が強力でした。#jan25などのハッシュタグでリアルタイム検索をかけると、まさに文字通りリアルタイムでどんどんwitterの発言が流れてきます。データはGoogleから流れてくるので、twitterを遮断されていてもGoogleリアルタイム検索の流れは問題なく読むことができました。

・本格的にtwitterを利用するには、ほんの少しだけブラウザの設定をいじる必要がありますが、「Tor」というすぐれたツールがあります。この設定については、本ブログのこちらを参照ください。これをインストールしたあとはtwitterを遮断されていても、普段と全く同じようにtwitterが使えるようになりました。

ネットを遮断される前にやっておくべきこと。
・ネットユーザー側がこうした知識を共有していくと、今回はネットそのものが遮断されるという事態に発展しました。ここへ来て後悔したのがさきほどのSaynowというサービスの設定です。

・ただし、この方法では発信はできても受信はできません。しかしダイヤルアップ用のモデムを準備しておけば、こうした状況でもネットにアクセスできます。海外のアクセスポイントに国際電話をかけて、そこからネットにアクセスするのに使えるからです。この方法はネット解禁前のサウジアラビアで何度も利用しました。ただし、最近のパソコンはほとんどLANケーブルは使えても電話線はつなげません。こうした非常の際にネットを使う必要のある機関は、事務所に一台ぐらいはダイヤルアップ用の外付けモデムがあるといいのではないでしょうか。

携帯を遮断される前にやっておくべきこと。
・今回は携帯のSMSは早い段階から遮断されていましたが、最終的には携帯の音声通話そのものまで遮断される時期が数日続きました(これもtwitterなどで事前に予想が共有されていたので、驚きはしませんでしたが)。それでも、固定電話だけは最後まで遮断されませんでした。ただ、固定電話の場合、海外では電話局などで設定をしておかないと国際電話がかけられないことがあります。事前に確認しておくといいのではないでしょうか。

以上です。
革命がエジプトで終われば、こんな記事は必要ありませんし、そもそも独裁政治自体がなければいいのですが、現実として、まだまだエジプトで僕が体験したのと同じことが他の国でも起きそうですので、ここに記しておきます。いざというときに役に立ってくれれば幸いですが、ネットの遮断などという事態がそも起きなければ、それに勝ることはありません。
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posted by 村上吉文 at 17:36 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
村上様

貴重な体験をされましたね。興味深く拝見しました。私の場合、通信困難な状況に陥ったのは阪神淡路大震災で消火(しょうか)(誤変換が面白いのでそのままにしておきます)。

外付けモデムは海外に出る時は必携していますが、今後、世界が固定電話の世界を脱する(私の生きている間にはないと断言出来ますが)時代には、権力者にしてやられそうなことが分かりました。

元々、有線通信装置のソフト開発がキャリアの出発なので、これらの事象は非常に興味深かったです。

ありがとうございました。
Posted by 末岡 直樹 at 2011年02月18日 18:03
末岡さん、ご無沙汰しております。
今回は本当に貴重な体験でした。というかアラブは濃いですねー、いろんな意味で。駄目なところもありますけど(路上に散乱するゴミとか)、今年に入ってから、この人たちすごいな、と認識を新たにする出来事が続きました。
ヨルダンにも今度出張で行くんですよ。

では!
Posted by 村上吉文 at 2011年02月19日 01:43
はじめまして。いつも参考にさせて頂いています。
もしよろしければ、相互リンクをお願いできない
でしょうか?
こちらには貼らせて頂きました。
よろしくお願いします。
Posted by なわたろう at 2011年02月23日 10:31
日本でもこのような情況がくるかも知れないような気がします。
私はコンピューターの知識があまりありませんので、右往左往することと思いますが、きっと日本中のオタク系の人たちが大活躍することと思います。
Posted by sachi at 2011年05月30日 22:50
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