2011年01月22日

無料コンテンツは日本語教育を破壊するか。

この記事は某メーリングリスト用に書いたのですが、こちらにも載せておきます。

その前に、音楽に関する別の記事をご紹介します。これ、とっても面白いです。

「CDが売れない、でも音楽産業は「活況」の理由」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5288

まあ要するにCDは売れなくても、iTunesや野外フェスなどのイベントで、音楽産業の規模自体はむしろ成長しているというお話です。

で、こういうビジネスモデルの変化というのは、日本語教育界などでも起きるのでしょうか。

もう少し一般化してみると、音楽界の「iTunesと野外フェス」というのは、「コンテンツのネット配信と、その場に参加することによって得られるネット配信できない体験」の二本立てであることが分かります。

日本語教育の世界で「コンテンツのネット配信」というと、教科書の電子出版化、授業の動画配信などがあります。一方の「その場に参加することによって得られる体験」は従来の授業がそうでしたし、これからもしばらくはそうであり続けるでしょう。1対1のオンライン授業はその中間的な位置づけですね。

実際に、中級でもっとも普及している教科書の一つである「文化中級日本語」なども、iTunesで購入し、iPadで利用できるようになっています(http://itunes.apple.com/jp/app/id406295610)。今後もこういう動きが減速することは考えにくいでしょう。

そこで考えたいのが、無料で配信されている音楽の存在です。先日このブログでYouTube上の公式コンテンツを紹介しました通り、iTunesなどを通さなくても、合法的に相当なコンテンツにアクセスできるのです。前回はYouTube限定だったので紹介しませんでしたが、SonyEntertainmentなども独自にウェブ上で各種のプロモーションビデオを無料公開しています。たとえば以下は西野カナさんのコンテンツです。


こんな風に大量のコンテンツが無料で配信されているのに、音楽産業自体は活況を呈しているのです。そりゃそうですよね。いままで西野カナなんて知らなかったそこのあなたが、今こうして無料で聞いているんですから。お金を払う人だって、全体としては増えるでしょう。(ちなみに西野カナは2010年のCD売上げベスト10に複数ランクインしている有名なアーティストです)

ということは、日本語の授業をYouTubeで公開したり、無料の教科書を公開したりするのも、決して日本語教育業界の全体にとって不幸なことではないのではないかと思うのです。特に途上国では有料の教科書を合法的に手に入れることは非常に難しく、無料で手に入る教科書が存在しないと、著作権法を犯した犯罪者しか日本語を教えることができないということになってしまいます。これは本当に大きな問題です。

もちろん、違法コピーをしようと言いたいわけではありません。むしろそれを避けるために、無料の教科書を作ろうという動きがあるときに、本当に存在するのかどうか分からない損害を恐れて、「無料で教科書なんか作るな」と萎縮することになるのは避けたいのです。

こういった方向の話題でもっと詳しいことを知りたい方には、以下の二冊をご紹介します。




posted by 村上吉文 at 19:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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