2010年05月29日

デジタルネイティブとデジタル移民の見分け方 そのニ 「紙の資料は信用できない」

デジタル移民(デジタル・ネイティブではない、アナログの世界からデジタルの世界に移民してきた人)と話していて「ついていけないなあ」と思うことの一つに、「ネットにあるものは信用できない」というような意見があります。「同じ内容でも紙なら信用できるが、ネットでは信用できない」という感じの人、まだ絶滅してませんよね。

デジタル・ネイティブは逆に、同じ内容ならネットにあるコンテンツの方を好みます。理由は簡単。検証可能性が高いからです。

紙の資料でも、ネット上の資料でも、きちんとしているものは検証が可能なようにソース(根拠となる参考文献など)が明記されています。しかし、紙の場合、そのソースも印刷媒体であることが多く、その多くは僕のように海外にいる人間にとっては参照できない場合がほとんどです。つまり、本当にそんなソースがあるのかどうか、自分では検証できません。また、ネット上のソースを引用している場合でも、URLが書いていなかったりしますし、URLが書いてあったとしても、それをパソコンで打ち込んでいくのは大変なので、わざわざ検証する気になれないこともあります。

そしてもう一つの大きな違いは、著者の主張を他者が別の紙媒体で批判していたとしても、それを見る機会がほとんどないことです。

一方、ネット上の資料は、ブログはもちろん2ちゃんねるの書き込みですら、簡単に検証できるソースが明記されていることが多いです。そのソースがネット上にある場合はリンクをクリックするだけでそのソースを見ることができます。つまり、簡単に検証することができるのです。また、2ちゃんねるのような掲示板はもちろん、多くのブログではコメント欄やトラックバックがありますから、間違ったことを書けば批判も読者の目に触れます。仮にコメント欄などがなくても、問題のある記事には「はてな」などのソーシャルブックマークでその問題点が指摘されていることが多いですから、その主張の信頼性などを簡単に確認することができます。

つまり、一言で言ってしまうと、ネットの方が検証可能性が高いわけです。検証できる主張と、検証できない主張と、どちらが信用できますか? 答えは決まっていますよね。

もちろん、紙の資料に比べてネット上の資料は玉石混交だからこそ、このような検証可能性が必要なわけですが、その結果、ネットでは簡単な議論でも「一次データで根拠を示す」というマナーを持っている発言者の主張だけが支持されるという状況が何年も続いてきました。その結果、デジタル・ネイティブたちには「その主張には検証できる根拠があるのか」と考える習慣が根付いているのです。

もちろん、デジタル・ネイティブでも人の主張を検証せずに鵜呑みにしてしまう人はいることでしょう。しかし、そもそも検証する手段がなかったかあるいは極端に少なかったデジタル移民の世代とは、メディアリテラシーのレベルが全然違うというのが正直な印象です。

こうして考えてみると、「紙の資料は信頼できる」というデジタル移民は自分で検証せず、発行している媒体を盲目的に信頼してしまっていると考えることができます。「偉い人が言ってるんだから間違いないんだろう」と。つまり、その資料の信頼性を自分で評価する習慣がないわけですね。

デジタル・ネイティブは偉い人に対しても「ソースは?」なんてことを平気で聞きますが、それは単に「あなたの主張にもっと説得力を持たせてあげたいから」という場合もあります。

一方、デジタル移民はそういう質問に「偉い俺様が言ってんだから、ガタガタ言わずに信用しやがれ、ゴルァ!」と反応してしまうこともあります。まあ、検証可能性なんてない時代に肩書きや所属する組織だけで信憑性を評価するしかないまま育ってしまったんだから仕方がないんですが、これは「私にはメディアリテラシーがありません」と明言しているようなもので、かなりクールじゃない振る舞いではないかと思います。

デジタル移民たちに敢えてアドバイスするとしたら、以下の二点。

1.あなたがどんな偉い人であれ、主張には検証可能な根拠を示すこと。「俺の長年の経験が根拠だ」では、ご自分は納得できるかもしれませんが、その長年の経験を共有していない人にとっては根拠にはなり得ません。

2.そしてその検証はできるだけ簡単に実行できるものを選ぶこと。地球の裏に回って自分の目で確認しなければならないことは、たとえ検証可能であったとしても説得力を持ちません。そんなことよりは地球の反対側に住んでいる人のブログでの証言を見せてあげればいいでしょう。
posted by 村上吉文 at 09:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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