2010年05月08日

国際交流基金の日本語国際センターの事業仕分けに反対


http://baguiotour.exblog.jp/11999449/

国際交流基金の日本語国際センターの事業仕分けについて、どこかで公式に反論が出るだろうと思っていたのですが、見つかりません。もしかしたら職員の方は当事者なので書きにくいかもしれませんね。かと言って、何も関係の無い人は書けないだろうし。

ということで、私のように非常勤講師として関わったことがある人間ぐらいしか、もしかしたら公開された場所で書く人間がいないかもしれませんので、書いておきます。誰かが書いておかなければならないと思いますので。
私はこの日本語国際センターに2006年から2008年の春まで非常勤でときどきコマを持っていました。長期研修、短期研修、上級研修、それから中国の日本語教師限定の短期コースなど、すべてが日本語教師研修です。当時の授業については以下などにいろいろ書いています。
http://mongolia.seesaa.net/article/72246305.html(なお、このころは他の日本語教育機関でもかけもちで教えていましたので、この期間に書いている日本語教育の現場のすべてが基金の国際センターというわけではありません。)

で、本題の仕分けですが、かなり誤解があるというのが実際のところです。たとえば、「民間」と判断した仕訳人がいますが、これはありえません。理由は以下の三つです。

1.民間の日本語教師養成講座は「日本語教師志望者」が中心ですが、日本語国際センターの行っている研修は現役の日本語教師が対象です。比較的経験の浅い教師が対象のコースもありますが、中には博士号を持っているような方も参加するようなプログラムもあります。つまり「対象」が違う、ということです。ただ、JALアカデミーのように質の高いブラッシュアップ研修を行っているところも民間にはあります。

2.ただ、こういった民間の質の高いところでも、私の知っている限り、すべての機関で日本人が対象となっています。日本人が教える教授法は「直接法」という媒介語を使わない教授法であり、海外で現地の人が必要としている教え方とは違います。もちろん、直接法はさまざまな利点があり、場合によっては海外で現地の人が使っても効果があるとは思いますが、事実としては必要とされていないのが現状でしょう。基本的に、直接法が活躍するのは、英語話者や中国語話者が混在して媒介語の存在しない「日本国内」の現場か、あるいは日本人が海外で教えている現場です。つまり、民間の養成講座とは、教授法の種類という研修の「内容」が違うのです。

3.たとえ「対象」と「内容」が違っていても、民間の先生方の中には海外で教師研修を体験されたような方も多くいらっしゃいます。というか私自身、今の現場にくる前は民間の日本語教育機関でも非常勤をしていたわけですしね。ですから、民間の日本語教師養成講座でそのような講師を揃えて試行錯誤を重ねれば、日本語国際センターで行っているような業務は肩代わりできる日が来るかもしれません。ただし、そこに参入してくる民間の講座があるとは,私はとても思えません。

なぜなら、そこには「市場」がないからです。市場とは売る人と買う人が交渉可能なときに、初めて機能します。しかし、日本語国際センターに研修にくる海外の日本語教師の皆さんの待遇は、養成講座が企業努力でどうにかできるレベルではありません。たとえば私のいるベトナムでは大学の先生でも100〜200ドル程度で、中等教育機関の場合は60ドルぐらいです。これは時給ではなく、日給でもなく、月給です。物価の安いベトナムでも貯金など出来る金額ではありませんから自費で研修に参加することはできないでしょう。

海外の親日派を増やすには、こういった待遇の人を支援する必要があり、国際交流基金の日本語国際センターはそれを実施している機関です。私は当事者ではありませんが、同センターの業務に関して「民間に委ねることを期待して事業を縮小する」という考えは、以上のように日本の長期的な利益を損なう可能性が高いので反対です。

【関連】
「むらログ:国際交流基金 事業仕分け」
http://mongolia.seesaa.net/article/148050051.html

日本語国際センター
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/

基金公式ブログより「図書館自慢☆〜日本語国際センター 」
http://d.hatena.ne.jp/japanfoundation/20080422/p1

(利用者側のブログ)「フィリピン人日本語教師が 国際交流基金の研修を修了」
7月15日から9月9日までの初めての日本滞在で、日本語教師としての力をレベル・アップしてバギオに戻りました。
http://baguiotour.exblog.jp/11999449/


アフガニスタン人、エリトリア人の生活支援をしていて、日本語を勉強する機会が全くないまま遠い国へ難民として来てしまった人たちに、何とか早く日本語を覚えて欲しいと切実に感じるので、ちゃんとした指導法を全く知らないままではなんとも歯がゆい思いをすることが多いのでこのイヴェントに参加したのですが、とてもためになりました。
日本語教育に長く携わっている人たちの実際の話も聞けたし、さまざまな教材の紹介も具体的で大変ためになりました。
http://ch01544.kitaguni.tv/e379008.html
posted by 村上吉文 at 09:00 | Comment(4) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
全面的に賛成です。
海外での日本語教育における受益者は、「日本国民」です。この点も基金はもっともっと主張していいと思います。
本日、ベトナムの日本語教育(特に中部と南部)に大いなる貢献をされてきた方の告別式に行ってきました。公的機関による日本語教育への支援がなかったころに、民間団体を設立し、ベトナムの日本語教育に尽力された方です。彼がその仲間が蒔いた種がいま、フエにダナンにサイゴンにベトナム全土に・・・広がっていることをとてもうれしく思っています。
日本政府による日本語教育支援の意味を多くの方に知っていただきたいものです。合掌
Posted by hao at 2010年05月09日 21:48
ハオさま
コメントありがとうございます。
私は北部のことしか分かりませんので、その方のことを教えていただけませんか? お名前だけでも結構です。ベトナムの日本語教育に関わった人間の一人として、今からでも学べることがあるのではないかと思いますので。
Posted by 村上吉文 at 2010年05月10日 06:27
私は在外邦人日本語教師研修に参加させていただき、13カ国から集まった海外の現場で日本語を教える日本人の方々と1ヶ月間、国際交流基金で日本をはじめとする様々な国で行われている日本語教育の実態について学ぶことができ、情報を共有することができました。在外邦人日本語研修が休止してしまったことも残念なのに、外国人の先生方が日本で研修を受けられなくなってしまうかもしれないことも非常に残念です。国際化といっても口先ばかりで、私たち日本人が外国語を習得することもんかなかうまくいかないばかりか、日本に関心をもってくれている外国人の日本語指導者の方々に日本で研修を受けていただくチャンスが減ってしまうなんて絶対に反対です。国を開きたいのか、鎖国したいのかわかりません。国際交流基金の日本語国際センターの事業仕分けに反対!日本語教育を行うことは日本と相手の国の友好関係、経済交流、文化交流、技術交流の先行投資です。
Posted by shibarie at 2010年06月10日 20:28
研修を受けさせていただいて、海外で日本語を普及する活動も大事で、日本で外国の方をサポートすることも大切なのだということ、外国の方を受け入れる地域住民(日本人)の方にも外国の方について理解してもらうことが必要なことにも気づきました。今はボランティアとして日本の地方でやっていますが、微力ながら頑張っています。今後は教育機関や地域住民の方とも連携をして、日本語教育に携わっていきたいと考え、非常にスローペースですが少しずつ前に進んでいます。パイプがないので、まずはパイプ作りです。私が研修を受けたのは2007年、今はもう2010年。研修で学べたことをすぐに実生活、実社会にいかすというのは、研修を受けた外国人日本語教師にとっても、日本人日本語教師にとっても難しいかもしれません。でも、研修を受けた先生方は学んだことをいかそうと施行錯誤していらっしゃると思います。研修の効果はゆっくり、確実にあらわれてくると思います。
Posted by shibarie at 2010年06月10日 20:42
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