2010年04月28日

国際交流基金の事業仕分け

多くの方が注目していたようですが、昨日の午前、国際交流基金が事業仕分けの対象になりました。

公式サイトでの結果概要は以下の通りです。

[1]日本語国際センターの設置運営,
[2]海外日本語教師を対象とする日本語研修,
[3]関西国際センターの設置運営,
[4]外交官・公務員を対象とする日本語研修,
[5]日本語能力試験

[1][2][3][4]当該法人が実施し、事業規模と国費は縮減(自己収入の拡大、人件費の見直し等)
[5]当該法人が実施し、事業規模は維持(国費への依存から一日も早く脱却)
http://www.shiwake.go.jp/shiwake/detail/2010-04-27.html#A-15


詳細な結果は以下でご覧になれます。
http://www.shiwake.go.jp/data/shiwake/result/A-15.pdf

僕が個人的に非常に気になったのは、日本語教育の公益性が全く理解されていないということです。
たとえば、上記資料には仕分け人の以下のようなコメントが並んでいます。
受益者に負担してもらう割合を増やし、この独立行政法人への国民負担の抑制を図る。

受益者である研修生の自己負担を増やし、国民負担の抑制を図る。

研修の効果検証をより詳細に行った上で、受益者負担をさらに求める余地がないか検討されたい。

日本語教育が日本という国を海外に知ってもらうための広報ツールであることを考えれば、このような発言は出てこないと思うんですよね。ソニーやホンダが博報堂や電通を通して広報を行うとき、その広報活動の受益者はソニーやホンダであり、博報堂でも電通でもないはず。

ところが、上記の発言からは、「受益者はセンターで研修を受ける日本語教師」という視点しか見えてこないのです。これは非常に残念なことです。

もちろん、現場で授業にいそしむ日本語教師のみなさんが「受益者は日本国民である」などとは考えなくてもいいとは思いますが(というより、目の前の学習者のことを最大限に考えるべき)、国家事業としての日本語教育を仕分ける立場の人にそういった視点がないことは非常に危険ではないかと思います。

この点に関しては、むしろ視聴者の方にそういう視点が多く、twitterでは以下のようなつぶやきも見られました。
takehora

世界的には、日本語ブームなんで、国の外交政策として、この日本語ブームに乗って、どんどん日本語教育を提供していくことは非常に有益だと思うのです。

nisizawa

国際交流基金の仕分け、非常にマズイな。世界に日本語を広めるために、もっと税金をつかってもいいくらいだ。

ykwkrn1
この仕分けは国益を損ねている。 (#sasshin #shiwake_a live at http://ustre.am/gghO )

muttmmott
国際交流に国家として資金を投入するのは当然ではないか。イギリス、ドイツがどのような活動をしているのか仕分け人は認識しているのか?費用対効果の視点も必要だけど、それだけではだめ。 (#sasshin #shiwake_a live at http://ustre.am/gghO )

ひつじ書房の社長も、基金側の対応として以下のように書いていました。
やりとりとしては、国際交流基金は日本語教育関連の事業の説明としてもう少し公益という点を強調してもよかったと思いました。国益と言ってもよいように思います。
http://d.hatena.ne.jp/myougadani/20100427


さて、個人的な感想はここまでにして、以下は、仕分け人による評価コメントです。
とりまとめコメント
●日本語国際センターの設置運営、海外日本語教師を対象とする日本語研修
1名が民間判断、1名が競争的に決定し現状維持、2名が他の法人で事業縮
小、残りの10名が当該法人での実施という意見であり、現時点でこの独法による
事業継続については評価をしている。この10名の内訳としては縮減が5名、現状
維持が4名、拡充が1名となっています。見直しを行う場合のコメントとしては、自
己収入の拡大、ガバナンスの強化、人件費の見直し、国費の削減という意見があ
ります。
結論としては、事業規模の縮減と、国費の削減を進めていくことをお願いした
い。
● 関西国際センターの設置運営、外交官・公務員を対象とする日本語研修
独立行政法人で事業継続ということで10名、残り4名が他に任せていくべきと
の判断です。内訳については、この独法が行う中で、事業規模の縮減が4名、現
状維持が5名、規模拡大が1名です。見直しを行う場合のコメントとしては、施設
の売却、自己収入の拡大、ガバナンスの強化、受益者負担、市場化テストを導
入すべきという意見があった。
よって、事業規模の縮減と、国費に依存する部分を小さくしていくということを結
論とさせていただきます。
●日本語能力試験
民間判断に任せる1名、競争的に決定し事業規模拡充1名、他の機関で実施
し現状維持2名、独立行政法人のままで継続が10名となっています。
内訳については、この独法が行う中で、縮減が2名、現状維持が4名、規模拡
大が4名です。見直しを行う場合のコメントとしては、自己収入の拡大1名、ガバナ
ンスの強化2名、国費投入なしということで、採算性が非常にいいということが共
通認識であります。
よって、事業規模は現状維持とさせてもらうが、国からの依存、国費を投入す
るという形での事業から一日も早く脱却していただきたいということを結論とさせて
いただきます。


報道としては以下のようなものが目立っています。
日本語研修「縮減」=医薬品審査は拡充判定−仕分け3日目
 政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は27日午前、独立行政法人を対象とした事業仕分け3日目の作業に入った。外務省所管の国際交流基金(理事長・小倉和夫元外務審議官)について、外国人の日本語教師らへの研修事業は「事業規模縮減」と判定。海外で実施している日本語能力試験に関しては「現状維持」となった。
 
国際交流基金は国内や海外で、外国人を対象とした日本語学習の普及や、文化交流などの事業を行っている。仕分け人は、外国人の研修に対し、「効果とコストの外部評価を取り入れるべきだ」と提起した。http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010042700047

外務省所管の国際交流基金をめぐっては、日本語の教授法などを研修しているさいたま市と大阪府内の2センターについて、いずれも「縮減」と判定。同基金の日本語能力試験については、速やかに国費依存体質から脱却するよう求めた。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100427/plc1004271316010-n1.htm

 また、国際交流基金が行う外国人向けの日本語能力試験は、受験者数が大幅増になっており、国の交付金(年約五千万円)による事業運営からの脱却を求めた。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010042702000198.html


最後に一点だけ書いておくと、我々日本語教育関係者は、もう少し現場のことを外部の人に知ってもらう必要があるのではないか、ということです。

twitterでのつぶやきは以下にまとめましたが、日本語教育が外部には全く理解されていないことがよく分かります。
「国際交流基金 事業仕分け」
http://togetter.com/li/17059

ひつじ書房社長もこの点に関して以下のようにお書きになっています。
twitterで中継を見ての発言も同時に中継されていましたが、面白いと思いましたのは、今回のトピックである日本語教育というのを日本人向けの教育と思っている発言もあったり、まったく分かっていない方が中継をわざわざみて、さらにわざわざつぶやいていたり、個々の発言に反応したあまり熟慮のない発言がどんどん出たりということがあって、いわば、無料の見せ物興行で、特に関心のない人までも見ていて、発言しているという状況が面白い。

外部の人間には我々のことを正しく理解する義務などありません。我々が正しく理解されていないのであれば、それはまず第一に我々の責任です。せっかくこれだけ情報発信のツールが発達してきているのですから、日本語教師のみなさん、ブログやtwitterで発言を始めてみませんか。
タグ:日本語教育
posted by 村上吉文 at 07:59 | Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
同感です!
やっぱり外交政治に慣れてない民主党に任せるのは早急だったなぁというグローバルな視点が感じられない事業仕分けに驚きの連続です。

どこ向いて話してるの?どこ向いて仕分けしているの?と将来も世界潮流も展望できない人たちに政権がわたってることにもガッカリです。島国根性で選挙民へのパフォーマンスするだけじゃダメだと思うんですよね。

モンゴルでも、違法放送容認で、自国を宣伝するよい機会ととらえて、「野放し」にしている韓流ドラマが、日本の良質ホームドラマを駆逐してることもしかり。

日本人はもっと目先・当面の自国民利益ではなく、将来的な連携や「世界のニッポン」としての「お友達づくり」「シンパづくり」をしないと様々な外交フェーズで負けますよね。

日本語教育というのは、「日本語って面白い」から始まり、「日本への興味」を導入し、「親日派」の日本を理解してくれる外国人を取り込み、育てる大事な外交戦略のひとつと大きくとらえるべき、と外国に住んでると思います。

もっと国際交流基金も強く主張して、いかに「外国での日本理解・日本シンパ養成」に貢献しているかをアピールし、日本国民の理解を得て欲しいですね。こういうときこそ、ロジカルに日本語を駆使していただきたい!

国内外で奮闘していらっしゃる日本語教師の皆様にも、「受益者負担」が難しい国や地域にも将来の「シンパ」が沢山いて、将来的な外交戦略で必要になってくることをアピールできる機会が与えられるといいですね。
Posted by モンゴルだるま at 2010年04月28日 09:33
小澤が理事をしている草の根交流基金はお咎めなしか w
Posted by 通行人 at 2010年04月28日 21:36
モンゴルだるまさん、おひさしぶり!
日本語教育外部の方からもそう言っていただけるとうれしいですね。

通行人さん
それって公的資金が投入されているんですか? 税金が使われていないなら、今回の仕分けの対象ではないので、仕分け人が口を挟むことではありません。
Posted by 村上吉文 at 2010年04月29日 07:15
この翌日、TBSの23時のニュースで「アメリカで広がる中国言葉がもたらすソフトパワーとは」と言って、孔子学院のことをやっていました。
 アフリカの資源開発分野に援助(中国のハードパワー)も併せて紹介して、「日本のプレゼンスは大丈夫?」という趣旨だったんだけど、そこまで言うなら前日まで報じていたJICA、基金両者の事業の必要性にも触れて欲しいと思いました。
Posted by taka_chan at 2010年04月30日 14:57
 日本語教師をしている私も諸々考えさせられました。日本語教育についてわかっている人が仕分け人に入っていないのがまず、なんといっても問題です。日本語教育と国語教育をごっちゃにしているような人がほとんどだったような気がします。仕分け自体を悪くいいませんが、我々のことを理解した人にやってもらいたかったものです。
Posted by 戦国武将の妻 at 2010年05月07日 10:22
数年前、某在外公館で広報文化の仕事してたモノです。
日本語教師の方々にはホント助けていただきました。
この場をお借りしてお礼申し上げます。

カネの出方と複雑に絡み合った外務省担当部局・交流基金の仕事の仕方(
外務省⇔交流基金がお互い丸投げ)に問題がありますね。
日本側が丸投げ同士なので、結局在外公館がトバッチリを受け、事務手続きの煩雑さに辟易しました。

海外での日本語普及や広報文化事業は基金か外務省か窓口ヒトツでやって欲しいと思います。
事業仕分けもいいけど、わけの分からない天下り財団法人を潰して下さい。

最後にヒトコト
海外で日本語教師をしてる方々に是非とも国から助成金を拠出して下さい。
だって、日本という国を最前線でアピールしてる方々ばかりでっせ。
ヤル気もなく遊んでばかりのJICAシニアボランティア(「死人ボランティア」と呼んでましたが)は仕分けで排除していただき、日本語教育に携わってる方々にその分お手当てお願いします。
Posted by 今じゃ、ぷぅ太郎 at 2010年05月13日 04:59
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