CBIは過去25年にわたって利用され続けてきたが、普及してきたのはここ十年ほどのことである。
初期はESPや中等段階の英語教育で利用され、その後、高等教育やEAP、欧州のバイリンガル教育で利用されている。
http://www.univie.ac.at/Anglistik/Dalton/SE08%20clil/Stoller&Grabe970001.pdf
かなり意訳というか抄訳ですが、これは1997年だからもう13年前の記事です。つまり、CBIはもう40年近く前から利用されてきた方法なんですね。
上記の論文には以下の内容なども含まれています。
・第二言語習得研究からの根拠
・教育学、認知心理学からの根拠
・CBIプログラムの成果からの根拠
ご関心のある方はご一読を。
日本語では以下の資料が簡単にまとめられていますね。
Content-Based Instruction (CBI)
*CBIの特徴: 通常の科目をL2で教え、科目の知識を得ることが同時にL2の獲得につながる。L2に接する機会を最大限に増やすことが可能であり、さまざまな概念をL2で理解することで高度な語学力を身につけることができる。 以下のような特徴があげられる
・科目の講義、それに関する発話が中心。(例えば文法を取り上げて説明するといった活動はしない)
・ テキストはその言語を母語とする学習者のために書かれたauthenticなものを使うのが一般的
(語学クラス用のテキストではないこと)
・新しい文化、discourse communityへの適応が可能
・知的学習に必要な高度な言語能力をつけることができる(CALP)
*CBIの問題点: 科目が要求するものと、学習者の能力が合わなかった場合、フラストレーション、 上達が見られない、やる気をなくすといった問題を引き起こす可能性がある (Johnson 1979; Shaw 1996)
*CBIが効果的な対象者
・読み書きができない年少者(例えばkindergarten immersion)
・授業についていけるだけの基礎語学力をすでにもっている学習者(一般的には中等教育以降のレベル 大学生など)
[Communicative, Task-based, Content-based Language Instruction
Marjorie Bingham Wesche, Peter Skehan]
http://pweb.sophia.ac.jp/linstic/applied/review/Kaplan/ch17_hosod0301.html
個人的には初級段階での利用方法がいまいち確立されているようには見えませんが、これは僕の勉強不足かもしれません。
よく指摘される問題点としては、他にこんなこともあります。
content-based learningの一環としてのimmersion educationにおいて、receptive skillsほどproductive skillsが伸びないという指摘は、考えるべき多くの問題を含んでいます。読んだり聞いたりするスキルは伸びても、書いたり話したりするスキルが伸びないってことですね。ただ、これも相互作文検索SNSであるLang-8やブログで書き続けることによって、少なくとも書く力は伸ばせるのではないでしょうか。それから、授業で行う場合はコンテンツそのものは学習者が自分で選ぶことにして、口頭発表はかならず全員に義務付けたりする対応も必要ですよね。
http://www.modern.tsukuba.ac.jp/~ushiro/MA/Lecture/99/0419.html
ちなみに、二つ上の引用では「科目」という言葉が使われていますが、「コンテンツ」の中身は別に娯楽でもいいんじゃないかと思っています。
その中でも僕のおすすめは「超字幕」。これはすごいですよ。今度、きちんとこのブログでご紹介したいと思いますが、たとえばネット好きな人には『超字幕/Discovery ネットビジネスの勝者 グーグル
また、超字幕にはiPhoneの練習アプリもあります。
http://iphonewalker.net/2010/04/10741.html
また、古くは『中学英語でアメリカン・ポルノが読める―楽しみながら英語力が身につく本
そういえば、七月のセミナーでは、はじめから「千と千尋の神隠し」が題材となっていましたね。
ただ、僕は「千と千尋の神隠し」は大好きなんですが、ビジネス日本語でCBIを取り上げるのだったら、やっぱり「千と千尋」より「孫正義LIVE2011」みたいな内容の方がいいんじゃないのかあ。
ビジネスと第二言語の分野のCBIとしてはこんな例もあります。
Content-based learningという考え方があるが、コンテンツを紹介しながら英語までをも体得しようとする欲張りなアプローチである。ここで言っているコンテンツとは、さきほどの「経営学」、「企業財務」、「人的資源管理」といった内容重視の科目でしか扱わないような中味を英語を通して学ぶため、その結果、内容も英語で同時にできてしまうという一石二鳥の方法だ。
だが問題はそれほどかんたんではない。教える側にとってコンテンツは多様であり、誰でもがそのコンテンツを専門にしているわけではない点である。特に、このような授業は専門家が担当するのではなく、英語教員が独学で勉強したものを土台に授業内容が組み立てられるので、往々にすると内容的に不備な面があり得る。ただ、英語で授業をおこなうため、多少の不勉強さは隠せてしまうのが実情である。
http://d.hatena.ne.jp/iteigo/20071004
出版されている教材としては、こんなものもあります。
『Content-based Instruction, Task-based Learning & Business Case Study
さて、技能優先の一般的なコースデザインとCBIは、ときどき対立するような印象を持っていたのですが、今回のエントリーのために検索してみると、どうもそうでもないようです。今月出たばかりの本ですが、『CLIL: Content and Language Integrated Learning
その他、ご参考までに、いくつ貸料をご紹介します。
先日紹介したパソコン用の辞書ソフト。
「[無料で使える超絶便利な『キングソフト辞書』が最強な件!」
http://www.ideaxidea.com/archives/2009/03/kingsoft_dictionary.html
Google先生おすすめの関連する論文。
Content-Based Instruction in Foreign Language Education: Models and Methods
その他、第二言語習得の分野でのContent-based の本もいくつかあります。
Content-Based Second Language Instruction: Michigan Classics (Michigan Classics S)