「あなたはどうして無料で仕事のアイデアを公開しているのですか」とよく聞かれるのですが、僕は今までどうにもうまく答えられませんでした。でも、そこには「これは必ず自分のためになる」という根拠なき確信がありました。うまく言葉にできなかったその問への答えが、まさにこの本に書いてあったと今は思っています。それは非貨幣経済。第9章に出てきます。
1.デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
2.アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
3.フリーは止まらない
4.フリーからもお金儲けはできる
5.市場を再評価する
6.ゼロにする
7.遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
8.ムダを受け入れよう
9.フリーは別のものの価値を高める
10.稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう
非貨幣経済については本書に譲るとして、私たち日本語教育の世界にも、こういう流れはどんどん押し寄せてくると思うんですよね。今は有料でやっているようなオンライン学習のサイトなんかも、一度元手を取ってしまって、もっといいバージョンを作ることができたら、古いものは公開してしまった方が宣伝になります。しかも維持費は下がり続けているので、閉鎖するよりは広報に利用した方が良くなるでしょう。
また、e-ラーニングと対面授業を組み合わせたブレンディッド・ラーニングなどでも、e-ラーニングの部分だけは無料で公開して、人件費や教材の印刷代のかかる対面式の授業だけ有料にするようなことも考えられるでしょう。
私自身、自律学習支援通信教育プログラムというコースをオンラインでやったことがありますが、内容はすべてパスワードもなく一般公開しています。
http://d.hatena.ne.jp/Murakami/
コースは有料ですが、受講者はうちの機関から添削などを受けることができました。受講者以外はそういうサービスは受けられませんが、一般公開している内容は見ることができます。
日本でも既にそれに近いビジネスモデルはいろいろと走り始めています。たとえば「rarejob」。
http://www.rarejob.com/
マンツーマンの英会話の授業が25分129円という驚きの価格で提供されています。
そして、ラーニングキャッチボール。こちらはなんと無料です。
http://learning-catchball.com/index.php?%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E3%82%92%E6%95%99%E3%81%88%E3%82%8B
以前から紹介していますが、Lang-8もSmart.fmも無料で語学学習に利用できるサイトですよね。
結局、機械でもできるような機械的な練習しかしない教員などは、やはり機械に淘汰されてしまうということなのでしょう。そして、機械の出来ることはどんどん安くなっていくので、無料で公開して宣伝に使ってしまった方が学校に取ってはお得ということになります。コースデザインなど、機械には今のところ真似のできない仕事のできる人なら、まだしばらくは心配はなさそうです。
【ご参考】
「むらログ: 日本語教育のロングテール」
http://mongolia.seesaa.net/article/143480648.html
「むらログ: 辺境とはロングテールである」
http://mongolia.seesaa.net/article/34054039.html