2010年03月24日

国際交流基金の派遣前研修で学んだこと(続)

昨日は「で、この研修で学んだことは主に二つあります」とか書いておきながら一つしか紹介できなかったのですが、あれだと研修の中身が何も役に立たなかったかのように誤解されかねないので続きを書きます。

この研修で学んだことの二点目は「基金はJF日本語教育スタンダードを、かなり本気で普及させようとしているんだなあ」ということです。何と言っても、六日間の泊り込みの研修のうち、五日間は午前か午後にスタンダード関連の勉強が入っていましたからね。

とにかくマジです。

中身はこんな感じ。 一日目 「概要とCan-do Statements」
 二日目 「事例を通して学ぶコースデザイン」(評価方法も含む)
 三日目 「みんなのCan-doサイトの使い方」
 四日目 「コースデザインの課題」
 五日目 「課題発表会」
これ全部がスタンダード関連の研修です。

三日目にある「みんなのCan-doサイト」というのは、現在基金が開発中のサイトで、Googleで検索しても四件しかヒットしない極秘中の極秘プロジェクトなのですが、僕みたいに手を動かした体験を通じて学ぶ種類の人間には、これを最初に持ってきてもらえたらその背景とかが分かりやすかったですね。ただし、参加者のほとんどは僕とは違うまっとうな人間なので、最後の方に来るのはセミナーの設計としては妥当なところでしょう。

このサイトは今のところCan-doの検索や共有が中心で、語彙や文型などがA1-C2のレベルにひもづけられるのは今回の公開よりもかなり先になりそうです。でも、もしこれが実現したら、例えばこのサイトで「ウェイターが面倒がらねばアルコールの入った客が大声で話している席のそばでも、料理の焼き方や味付けなどに関する客の細い注文に対応できる」といった目標を検索すると、どんな語彙や文型を導入すればいいかがスラズラッとリストになって出てくるわけですね。

今ボトルネックになっているらしいのはやはりコーパスのようですが、それに関してはUGCがひとつの解答になるのかもしれません。youtubeやtwitterのように、最近の成功しているウェブサービスはユーザーが作るコンテンツをみんなで共有するタイプが多いですよね。同じように、Can-doサイトの特定の目標に関して、ユーザーが使った語彙や文型を登録しておき、それを他のユーザーも共有できる仕組みを整えるのです。こういった考えは「群衆の叡智(Wisdom Of Crowds)」などのキーワードで、2006年ぐらいからよく語られるようになっています。

「むらログ: 日本語教育のロングテール」で書いたように、日本語教育はどんどん多様化しています。このサイトがハブになって、それぞれの現場でゼロからコースデザインをたてなくてもロングテールの細かいニーズに対応できるようになったら、本当にすごいことですよね。

スタンダードの開発室には外資系IT企業から転職してきたような方もいらっしゃいますから、当然ここに僕が書いたようなアイデアは検討済みのような感じでしたが、こういう大規模な開発業務には、まあ現場では分かっているけどいろいろな事情で実現できないことも出てくるわけです。ですので、開発現場の方のためというより、周囲の皆さんの理解を深めるためにも、この文章を公開しておきたいと思います。
posted by 村上吉文 at 08:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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