2009年12月05日

「Google 日本語入力」は大きな歴史の転換を意味している

昨日のGoogle日本語入力の件ですが、これは単に「Googleが日本語入力ソフトを作った」「無料のいいソフトが出た」「変換予測が面白い」とかいった表面的なことだけではなく、日本語入力の歴史上、とても大きな転換を意味しているように思えます。

それは、これが規範文法から記述文法への転換を意味しているということです。
「規範文法」というのは、「日本語はこうあるべき」という文法のことで、逆に「記述文法」というのは「日本語はこうである」と客観的に記述する文法のことです。もちろん今回はIMEですから「規範文法」「記述文法」というよりは「規範表記」「記述表記」とでもした方がいいのかもしれませんが。

具体的な例をお見せしましょう。

たとえばですね、「こうかくきどうたい」と入力してみると、Google日本語入力では「攻殻機動隊」というマンガ(アニメにもなりましたが)のタイトルの他に「甲殻機動隊」という間違った表記も辞書登録されているのが分かります。

記述文法では「正しい」「間違っている」と決めつけることはしないのですが、これは作品名なので、例外的に作者の決めた表記が正しく、それ以外は間違っているということができます。

ATOKなどでは、そもそも「攻殻機動隊」すら辞書登録されていませんが、こうした間違った表記が登録されるということは、今までのIMEでは考えることができませんでした。IMEは、常に「正しい日本語」を表記するように設計されていたからです。ですから、漢字に自信がないときでも「これATOKに載っているんですけど」といえば、それは日本語教師がプリント等に使用しても安心していていいということを意味していました。

しかし、今度のGoogole日本語入力は、完全に「記述文法」的なデータです。「日本語はこうあるべき」ではなくて、一般には誤りとされる表記も含めて「日本語はこうである」というデータに基づいて漢字変換しているんですよね。

日本語教育関係者である我々は、こうした大きな転換地点にいるのだということを意識しつつ、学生にどのIMEを使わせるのがいいかを考えなければならないのではないかと思います。

「思いどおりの日本語入力 - Google 日本語入力」
http://googlejapan.blogspot.com/2009/12/google_03.html

「GoogleIMEは正しさを撃てるか」
http://njmnjm.blogspot.com/2009/12/googleime.html
posted by 村上吉文 at 08:46 | Comment(4) | TrackBack(1) | ことば | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
■グーグル、日本語入力ソフトを無償提供MS、ジャストシステムに脅威−ユーザーや消費者は物語を求めている(2)?!

こんにちは。このIME、まだβ版なので、これからどうなっていくか、趨勢を見守っていく必要があると思います。最近ずっと前から使われてきている既存のもので、まさか、もう新しいものなど出てこないだろうという分野にイノベーションが目立つようになってきました。このグーグル日本語入力ソフトもその一つの例だと思います。私も、早速使ってみました。今のところ、かなりスムーズに使えています。今から、10年くらい前までは、こうした日本語変換システムも、いくつかあって、互いに張り合っていました。しかし、最近は、ジャストシステムと、MSの独壇場になっていて、MSが独占しそうな勢いでした。しかし、ここで、googleの参入です。Googleの参入は、実は必然だったのかもしれません。私は、こうした既存の枠を破ること、そうして、それを物語にまで高めていくこと、さらには伝説にまで昇華していくことが、現代日本の営利企業に与えられた使命であり、デフレ傾向を打破する糸口になると思います。詳細は、是非私のブログをご覧になってください。
Posted by yutakarlson at 2009年12月05日 10:23
早速インストールしていろんな変換予測で遊んでいます。自分で見つけたもので面白かったものは「ぼうや」から「坊やだからさ」というシャア・アズナブルのセリフや、「あほちゃい」から「アホちゃいまんねんパーでんねん」というもの、また、「だれの」から「だれのパンツ」という、なぜかパンツにかかわる変換。これ、なんの「成句」なんでしょうか?

言葉に「ただしい」「間違っている」という評価は当てはまらないと、昔から思っていました。昔の使い方が正しいというのが一般的な理解と思っていますが、それも昔は正しくなかったわけで…。

しかし、パソコンの変換を頼れなくなるというのはちょっと怖いですね。いわゆる「誤用」が加速しそうです。
Posted by bakase at 2009年12月05日 13:48
>bakaseさん、コメントありがとうございます。
「だれのパンツ」って絵本があるみたいですね。
何だか楽しそうですよ。

>yutakarisonさま
さっそく拝見しますね。こういうイノベーションが続くと、何だかワクワクしてきますよね。


Posted by 村上吉文 at 2009年12月05日 18:00
はじめまして!リンクありがとうございます。njmです。

わたしも、本業ではないのですが、日本語教育に携わっているので、これは辞書としてどういう位置づけになるのかとても興味があります。

ところで、村上さんがおっしゃる「記述」と「規範」の話ですが、Google IMEもIMEとして機能している以上、大きな枠としては「日本語」の枠内に収まってくるのではないかと考えています。そのうえで、GoogleIMEとATOKなどとの間にある異なりは、どこかで検証されなければならないでしょうね。
Posted by niji wo mita at 2009年12月06日 14:07
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