Street View in Japanese Language Education
要するに道案内のロールカードですね。
この道案内というのは、日本語教育のタスクの中では定番とも言えるもので、たとえば『日本語コミュニケーションゲーム80』
これら紙メディアでの道案内タスクとはこんな感じのものです。
・二枚の地図を用意する
・片方の地図(地図A)にはある場所がマークされている。
・もう片方の地図(地図B)にはその場所がマークされていない。
・地図Bを持っている学習者は地図Aを持っている学習者に、その場所への行き方を聞く。
・地図Aを持っている学習者は、自分の地図を見ながら(相手に見せないで)道案内する。
インフォメーションギャップを使ったロールプレイの典型的なパターンですね。
で、これを地図ではなくGoogleストリートビューを使ってやってみよう、というのが今回の主旨です。
具体的には以下の場所から出発します。新宿駅東口ですね。
大きな地図で見る
そして、以下の場所を目指します。こちらはご覧の通り、「さくらや新宿三丁目店」です。
大きな地図で見る
Googleストリートビューを使うと、あたかもその街の中にいて、路上を歩いているような感覚に陥りますので、道案内タスクも従来の形から多少手を加える必要があります。従来は地図を見ながらの作業になるので、たとえば駅前の交番などの固定された場所で目的地までの行き方を聞くパターンに近い設定が必要になります。しかし、Googleストリートビューでは歩きながらの会話になりますので、「地図は持っているがその場にいない誰かと携帯で話しながら道案内してもらう」という設定の方が自然になります。
たとえば、
「新宿通りまで来ました。ここで右に曲がりますか?」
という感じです。
さて、実際にやってみて思ったことがいくつかあります。
まず、何と言っても楽しい! 従来の地図つきロールカードでも、板書だけとかひたすら機械的にリピートさせる授業とかに比べればはるかに学習者の表情は明るくなるのですが、Googleストリートビューはまったくレベルが違う楽しさです。これは主に以下の三つの理由によると思います。
1.感覚的な刺激が圧倒的に多い。
2.バーチャルリアリティの中とはいえ、街の中を移動するという「行動」を伴う。
3.その行動の選択権も圧倒的に多くなる。
「3」に関して補足すると、まず実際の地図を使うので、回り道なども無数にあるということがあります。でもそれだけではなく、Googleストリートビューの操作としても、「辺りを見回す」「気になる場所を拡大して表示する」などのいろいろな行為もできるんですね。
それから、道案内タスクは「と」の導入に有効であるというのが従来の常識でしたが、Googleストリートビューでは、これがうまくいかないことも感じました。
たとえば
「三つ目の信号を右に曲がると郵便局が見えます」
という説明は、交番で言われるのには違和感がありませんが、Googleストリートビューでは「まさにその場にいる」感覚ですので、
「そこで右に曲がったら郵便局が見えます」
という方が自然なんですね。
その代わりに、目の前の風景を相手に伝えるために、描写する文章がたくさん使えます。「〜という店があります」「看板に〜と書いてあります」など。
今後は「二人同時に別々のモニターを見ながら同じ道を進む」なんていうタスクもやってみたいですね。「新宿通りまで来ました? 右側にみずほ銀行が見えますか? じゃあ、そっちに行ってみましょう」なんていう感じで。面白そうだなあ。
道案内タスクをやってみたことがない方は、まずはこちらからどうぞ。
月刊日本語での記事はこちらから。
その他、こちらもご参考になるかと思います。
「むらログ:『月刊日本語』五月号からいらした皆様へ」
http://mongolia.seesaa.net/article/116475086.html
「むらログ: 学習者が喜びそうな日本のストリートビュー」
http://mongolia.seesaa.net/article/115407407.html