「世界の三つの最高のもの」
中国の料理
西洋の家
日本人の妻
「世界の三つの最悪なもの」
イギリスの料理
ベトナムのサラリー
アメリカ人の妻
しかし、普通の日本人だったら、男女を問わず日本人の妻が世界で一番だなんて思ってませんよね。こういう話はジョークですから、もちろん実証的なデータに基づく分析ではありません。
ところが、「日本人は欧米人に比べて集団主義的」という主張だったら、どうでしょうか。
実証的なデータを見たことがある日本語教師はほとんどいないと思いますが、それでも「日本人の女性は従順だ」というよりは、よほど日本人自身の認識に浸透しているような気がします。
「集団主義」という錯覚―日本人論の思い違いとその由来
著名人の直感による言説や、私たち自身の身近なエピソードからは、「日本=集団主義」「欧米(特にアメリカ)=個人主義」という図式を支える論拠がいくらでも出てくるのですが、実証的な研究ではまったく根拠がないというんです。
それに対して、実は日本人もアメリカ人と同じ程度には個人主義的であるという実証的なデータは、いくつも紹介されています。調査によっては、日本人の方が個人主義的であるという結果もあります。
たとえば「同調行動の実験」という項では、こんな実験を紹介しています。
・ある図形を見せて同じものを選ばせる実験を集団で行います。
・本当は一人以外はサクラで、サクラはわざと間違った答えを言います。
・サクラでない人が、どの程度サクラに同調してしまうか調べます。
こういう実験をしてみると、アメリカでは25%、日本では23%の人がサクラに同調してしまうのだそうです。つまり、アメリカの方はそれだけ集団の影響力が強いわけですね。赤狩りの最中で行われた実験では、アメリカ人は37%もの同調率を記録したそうです。
著書は東大の心理学の教授ですが、別に心理学の勉強をしたことがない私でも、楽に読めました。何というか、すごく親切なんですよね。読まなくてもいいところは★マークをつけて「読み飛ばしていい」なんて言ってますし、専門用語もほとんど出てきません。たぶん、書く方にとっては、専門用語を使った方がよっぽど楽だと思うんですが、素人にも分かるように噛み砕いて書いてくれています。
それでも、参考資料なんかも巻末に大量に載っていますし、読み飛ばさないできちんと読めば、それなりに心理学の素養のある人でも参考になるのではないかと思います。
心理学を学んだことのない私にとって一番参考になったのは「思考バイアス」というもの。「日本人=集団主義」に限らず、いろいろな思いこみが強化されて定着してしまう理由が心理学的に説明されています。
更に役に立つのは、311ページからの「チェックポイント」です。「日本人=集団主義」とふと感じてしまうとき、次の三つの段階を踏まなければそう結論づけてはいけないと著者は主張しています。
第一段階
集団主義の根拠と思われる事実(たとえば「日本人はブランド品を好む」など)が本当に日本の特色といえるか、諸外国と比較してみる。
第二段階
比較の際は、思考バイアスを避けるため、エピソードや記憶ではなく客観的な数値などで調査する。(著者は「実証的な研究」と表現していますが)
第三段階
仮に数値的に差があったとしても、日本人の国民性なのか、日本のおかれた状況からその差が出ているのか考える。
この本、実は国際交流基金のブログで知り合いが書いていたのを見て、読もうと思ったのでした。久保田さん、貴重な本のご紹介ありがとう。
その他の書評
TBSラジオの「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャフル」(クリックすると音声が再生されます。最初から三分の一は聞かなくてもいいかも。)
今週の本棚:沼野充義・評 『「集団主義」という錯覚…』=高野陽太郎・著



日本人の妻として評価されるとしたら、従順でなくて、相手を推し量るという能力なんではないかと思いますが。よく、日本人の奥さんでよかったね、なんていう人への夫の答えは・・・(想像してください)?
集団主義なのと、そう見えるのは違いますよね。「日本人は・・・」と一般論のように、何かを断定してしまう文章を疑うことは多いのですが、そういう一般論が日本ではベストセラーになるのが不思議です。興味深い本のご紹介ありがとうございます。
同調圧力に屈するのが有利な環境であるかどうかで、個人の選択は全く別なものになるでしょう。個々の日本人は集団主義的でないにしても、「日本人が集団主義的に振る舞う原因は、日本の社会構造である」という疑問を否定する研究結果が出るまで、結論を出すのはまだ早いと思いますよ。
というか、戦時中や戦後に「日本人が集団主義だ」と誤解された理由が、まさにそういった社会的な状況により実際に集団主義的な行動を取っていたからだとこの本は主張しています。
しかし、安全保障の面で圧力がなくなった結果、現在ではこのエントリーで紹介したような実証結果になっているわけですね。
「同調圧力に屈するのが有利な環境である」というのは、まさに赤狩り時代のアメリカなどがその例として出て来ていますよ。おっしゃるとおり「個人の選択は全く別なものに」なっています。
ぜひ一読をおすすめいたします。お読みになっていないのでしたら、この本の価値について結論を出すのはまだ早いと思いますよ。