2009年05月02日

一人歩きする「死亡者17万人」という推定

私自身が誤解をしていたんですが、他にも大勢、同じ誤解をしている人が多いし、ことがことなので訂正をしておきたいと思います。

それは厚生労働省の新型インフルエンザの死者に関する推定の表現です。
同省結核感染症課の「鳥インフルエンザと新型インフルエンザ健康局」というページには、以下のように書かれています。
国の被害想定一覧
感 染 者
人口の4分の1である3,200万人が感染
受 診 者
医療機関を受診する患者数は最大で2500万人
入院患者
53万人から200万人
死 亡 者
17万人から64万人
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/01.html


これを読むと、あたかもパンデミックになると「最低でも17万人が死ぬ」としか読めません。実際、多くのブログで以下のように引用されています。
日本で新型インフルエンザが発生すれば3200万人が感染して60万人〜200万人が発病し17万人〜64万人は死んでしまうとどこかで見ました。ゾっとしますね。
http://rockdesirecrew.blog10.fc2.com/blog-entry-11.html

もし 日本で新型インフルエンザが流行った場合 どのくらいの被害がでるか。
         ・人口の約4分の1が感染
         ・患者数は最大2500万人
         ・入院患者は53万人〜200万人
         ・死亡者は17万人〜64万人
  このような計算になるらしいです。
http://roomhair55.exblog.jp/10856976/

新型インフルエンザとはいったい何なのか。どんな被害が想定されるのか。「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン(P96)」によれば、「日本人の5人に1人が医療機関を受診し、53万人〜200万人が入院し、17万人〜64万人が亡くなると予測される病気で、従業員の最大40%程度が欠勤することが想定される」とあります。
http://office1.livedoor.biz/archives/51535801.html

近い将来、新型インフルエンザが大流行して
厚生労働省の試算によれば、
日本だけで入院患者53万人〜200万人、
死亡者17万人〜64万人に達すると推定されています。
http://heppokonikki.naturum.ne.jp/e613372.html

しかし、実際にはこれは誤解です。私自身も誤解していたので、ここに引用した四名様を批判するつもりはありませんが、厚生労働省の行動計画によれば、この数字は以下のように計算されています。
流行規模及び被害の想定
新型インフルエンザの流行規模は、出現した新型インフルエンザウイルスの
病原性や感染力等に左右されるものであり、現時点でその流行規模を完全に予
測することは難しいが、本行動計画を策定するに際しては、「新型インフルエン
ザ対策に関する検討小委員会」において一つの例として推計された健康被害を
前提とした。
罹患率については、第7回ヨーロッパインフルエンザ会議の勧告に基づき、
全人口の25%が新型インフルエンザに罹患すると想定した。さらに、米国疾病予
防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention, 以下「米国CDC」
という。)により示された推計モデル(FluAid 2.0 著者Meltzer ら、2000 年7 月)
を用いて、医療機関を受診する患者数は、約1,300 万人〜約2,500 万人(中間
値約1,700 万人)になると推計した。
入院者数及び死亡者数については、この推計の上限値である約2,500 万人を
基に、過去に世界で流行したインフルエンザのデータを使用し、アジアインフ
ルエンザ等を中等度(致死率0.53%)、スペインインフルエンザを重度(致死率
2.0%)として、新型インフルエンザの病原性が中等度の場合と重度の場合の数
の上限を推計した。
中等度の場合では、入院患者数の上限は約53 万人、死亡者数の上限は約17
万人となり、重度の場合では、入院患者数の上限は約200 万人、死亡者数の上
限は約64 万人となった。なお、これらの推計においては、新型インフルエンザ
ワクチンや抗インフルエンザウイルス薬等による介入の影響(効果)、現在の我
が国の衛生状況等については考慮されていないことに留意する必要がある。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/kettei/090217keikaku.pdf

つまり、「17万人」というのは1957年のアジアインフルエンザを参考にしたときの「上限」なんですよね。中等度の「上限」が17万人で、重度の場合の「上限」が64万ということなのに、これを「死亡者17万人から64万人に達する」と表現するのは、いかがなものでしょうか。しかも、その後の52年間の医療の進歩などは考慮されていないわけです。

17万人といえば、阪神大震災の三十倍の死者です。最低でもそんな大災厄が訪れると誤解されてしまう表現が、もとの算出方法などが省略されたまま一人歩きし始めています。不正確な情報に踊らされてパニックになったりするのは避けたいものです。


関連する当ブログ内の記事
むらログ: 日本語教師は「感染列島」を見るべし!
http://mongolia.seesaa.net/article/113546198.html

新型インフルエンザと2000年問題
http://mongolia.seesaa.net/article/118211576.html


posted by 村上吉文 at 19:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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