2009年01月17日

「学習の高速道路」で語学を身につけるために必要な、たった三つのシンプルなツール

 あなたなら、「学習の高速道路」で語学を身につけることができます。

 検索やリンクやあるいはRSSリーダーなどから、自分の興味に従ってこのブログに辿り着く程度のリテラシーがあれば、特に自分用の学習ソフトウェアを作れなくても、もう「学習の高速道路」を疾走するだけの環境に、あなたはいるのです。

 「ブログって何?」という人は、ちょっとまだ私には救うことができません。それからもちろん空手やテニスが「学習の高速道路」で身に付くかというと、それも分かりません。たぶんダメでしょう。でもこのブログに辿りつけたあなたが、語学に限定して「学習の高速道路」を疾走しようと思えば、もはや技術的には何の障害はないのです。語学に関しては、もう新しい時代が始まっているのですから。私たちが中学校で英語を学んだのとは決定的に違う時代が始まっているのです。

 ただ、語学学習に関して全く経験がないと、せっかく整ってきている環境に気づかず、宣伝に振り回されて、結局何も身に付かなかったという人が多いようです。少なくとも、そういう失敗を経てから私のところに相談に来る人は後を絶ちません。

 それで、ずっと語学教育を専門にしていて、ITエンジニア用の語学教材なんかも出版している人間として、いわゆる「学習の高速道路」を疾走するために必要なことを、まとめて書いておきたいと思います。


 こんなシンプルに書いてしまうと驚かれるかもしれませんが、実は必要なのはたったの三つです。

 まず、人間。
 次に、人間。
 そして最後に、人間です。

 よく、大切なことを一つだけ伝えたいときにこういうフレーズを使う人がいますが、ちょっと待ってください。私が言いたいのは、三種類の人間が必要だってことです。



迷宮をさまよわないために
 最初に必要なのは、ガイド。コンサルタントと言ってもいいかもしれません。昔は先生と呼ばれていた人たちです。あ、今でもまだ高速道路の下の世界では、そう呼ばれていることもありますね。

 どうしてこういう人たちが必要なのかというと、特に初級では、ネット上にある無数の例文はまだ教材に使えないので、学習用には、どうしてもシンプルだが人工的な例文ばかりを集めたり、それらを適切な順番で学習者に示したりする必要があるからです。

 よく、「自分の専門分野に関する文献を英語で読むのがいちばんいい」というような意見もありますが、それが機能するのは少なくとも中級後半以上。初級レベルでは適切な教科書が必要です。「教科書」というと語弊がありますが、少なくとも効率的に学ぶなら、教科書のような体系的な教材が絶対に必要。ネット上では東京外語大の「言語モジュール」が体系的な教材と言えるでしょう。

 ただし、適切な教材というのは、初心者には選びにくいものです。まだ知らない言語の教材を見て初心者に分かるのは、本の厚さとか、絵やイラストが多いかどうかとか、価格ぐらいなもの。「初心者でも教材の価値ぐらい分かる」と豪語する人は、自分の胸に手を当てて考えてみてください。英会話教材を買ってみて、最後までやり通したことが何回ありますか? 英会話学校に通ってみて、実際に自分の能力が上がったという実感がありましたか?

 うまくいかない理由の多くは、自分に合わない方法を取っているからです。実際の勉強の段階では自分だけでできることがたくさんありますが(というより、自分でやることこそが不可欠)、入り口を間違って選んでしまうと、結局、投資した時間とお金がむだになってしまいます。

 ただ、ガイドやコンサルタントと言っても、同じ役割を求めるのにお金を払う必要がない場合もあります。mixiなんかでも、いろいろな語学学習のコミュニティがありますからね。でも、そういうところでは気をつけなくてはならないこともあります。単なる「成功した先輩」では、「自分はこうしたら上達した」ということは言えても、それが本人のどんな条件によるのかは分からないのが普通なのです。多くの学習者に接して、無数の失敗例や成功例を見てきた人、そして、自分自身もいろいろな学習条件に身を置いて、数々の失敗や成功を体験してきた人からの助言でないと、自分に役立つかは分かりません。助言の背景を考えてみる必要はあるでしょう。

 議論を公平にするために念のために書いておきますが、中には、自分の学習コースを設計するための先天的な才能を持っている人もいます。そういう人たちは、語学に限らずいろいろな分野を簡単にモノにして、次々に新しい能力を獲得していきます。

 でも、世の中、そういう才能に恵まれた人たちばかりではありません。英会話の本を買って最後まで続けられなかった覚えのある人は、お金を払って助言をもらうのも一つの方法です。

 なお、私は日本語教育が専門ですから、すでに日本語をこうして読んでいる読者のみなさんからお金をいただくことはありません。自分の利益のために書いているのではないことだけは、ご理解いただきたいと思います。



孤独に打ち勝つには
 しかし、自分にあったコースデザインをしてもらったら、それで万事OKかというと、そんなことはありません。

 たとえば、「学習の高速道路」とはちょっと違いますが、e-ラーニングの世界では、業界でもっとも先駆的であるとして注目されているOpen Universityですら、修了率は半数を割っています(松田岳士『eラーニングのためのメンタリング―学習者支援の実践』)。

 つまり、コースをデザインするのも、そこで学習する人たちも一流なのに、半数以上が脱落してしまうのです。組織的なe-ラーニングですらそうなのですから、学習の高速道路をたった一人で疾走しようとしても、なかなかうまくいきません。それは何故なのでしょうか。

 語学に限らず、学習の高速道路を疾走するネットアスリートなら、誰でも答えがすぐに分かると思います。

 学習の高速道路は寂しいのです。

 そう。「学習の高速道路」を疾走するのに必要な二番目の人間は、「同志」です。高速道路の下の世界では、「同級生」と呼ばれることが多いですね。

 しかし、これはネット時代には簡単に見つかります。さきほど挙げたmixiは、ガイドを探すにはそれほど効果はありませんが、同志を見つけるにはかなり効果的です。いろいろな語学学習コミュニティがありますし、キーワード検索で個人を見つけるのも簡単です。

 また、iKnow!なら、「フレンド」登録した人がログインしていると緑色の小さなマークが点灯して、同じ時間に勉強しているのが分かります。timelogやtwitterも同じように使えますね。

 これは、「学習の高速道路」の下の世界でも、ある程度はできないことはありません。しかし、「スティーブ・ジョブズのスピーチで英語を勉強したい」とか「ヒッチコックの映画で勉強したい」となると、なかなか同僚や同級生とは話が合いませんよね。

 語学を学ぶには、自分が好きなコンテンツを教材にするのが一番です。でも、今の時代は仕事や学校が同じでも、個人の志向性はあまりにも多様になっています。そして、ネット時代以前は、志向性に沿った題材を選ぶとそれはすなわち孤独になるということを意味していました。「ジョブズのあのスピーチの、あのフレーズがかっこいいんだよな」と言って、共感してくれる人がクラスに何人いるでしょうか。

 しかし、SNSなどを使えば、そういった感動を分かち合いながら、それを学習に結びつけるのはそれほど難しいことではないのです。これも「学習の高速道路」のおかげですね。



そして、実践へ!
 梅田望夫の『ウェブ進化論』では、「学習の高速道路」の事例として、里見香奈さんという将棋界の新星が挙げられています。地方でも、ネット対戦で腕を磨けば、東京で対面して腕を磨く以上に上達することができるというわけです。

 今や、「学習の高速道路」では分野によっては、知識を得るだけでなく「実践」も可能になったのです。幸いなことに、語学の分野でも、学習した成果をネットを通じて実践することが可能です。語学の「実践」と言うのは、要するにその言語でその言語の話者とコミュニケーションするということです。

 つまり、語学の「学習の高速道路」を疾走するために必要な三つ目の「人間」とは、その言語の話者です。日本語なら日本人、ベトナム語ならベトナム人、英語ならシンガポール人。(だけでもないけど)

 この面でも最強なのはSNSだと私は思います。日本人が外国語を学ぶのならlivemochaがいいでしょう。日本人は少ないし、逆に日本語に関心を持っている外国人も多いですから。もうちょっと自信があればfacebookのような、語学学習に限定されないmixiのような総合SNSもあります。

 逆に私のような日本語教育関係者には、iKnow!をお勧めします。ここは日本人のための英語学習サイトとして出発したわけですが、皮肉なことに日本人が多ければ多いほど、英語でコミュニケーションする機会は少なくなってしまいます。もちろん、二番目に書いた「同志」を得るには非常に有効ですが、三番目の「母語話者とコミュニケーションする」という目的で見ると、却って外国人ユーザーの方がiKnow!は有効に使えるのです。

 もちろん、mixiやGREEも日本人が多いですから、アカウントを持っていればおすすめです。コミュニティ機能なんかもありますしね。ただし、この二つのSNSの致命的な欠陥は、外国人は登録できないことです(正確には、日本の携帯電話を持っていない人が登録できない)。外国で日本語を学んでいる人が登録できるという面でも、iKnow!は強力です。コミュニティ機能が今はありませんが、まだ開設してから時間もたっていませんから、じきにできるかもしれません。それに、もともとサイト全体が語学学習をテーマにしたコミュニティみたいなものですしね。

 なお、一般的なSNSの中では「カフェスタ」なら外国人でも登録できます。中高生や学生が中心のようで、私にはちょっと取っつきにくい部分がありますが、海外で教える日本語教師にとって、学生に紹介する価値はあると思います。

 ただ、SNSっていうのは、そこに入っただけでは何の役にも立ちません。最大の学習ツールである「母語話者」が手に入らないのです。そのためには、戦略的にターゲットを絞り、友達をつくる必要があります。

 ターゲットの絞り方としては、自分を必要としている人を検索するのが一番です。たとえば、私はベトナム語を学習中でもある日本語教師なので、ベトナムでもっとも有力なSNSであるYahoo!360に加入して、「日本語」を意味するベトナム語をキーワードにして検索し、日本語学習中のベトナム人を見つけてコメントしまくりました。プロとして助言したり、はげましたりしたわけです。へたくそなベトナム語でね。

 もちろん、日本語学習中のベトナム人にとっては、私のようにベトナム語学習中の日本人なら、つながるメリットがありますよね。こうして、お互いにメリットのある関係を作り上げることができれば、後は簡単です。そのベトナム人の友達の中にも、日本語学習中のベトナム人は大勢います。最初のキーワード検索でもたくさん見つかりますが、友人登録した後にその友人の友人に声をかけるほうが、ずっと効率的です。なぜなら、相手が自分のプロフィールを見るときに「この人は、あなたの友人の○○さんの友人です」とか「共通の友人が○○人います」などと表示されるからです。特に、日本語を学んでいる人には女性が多いので、信頼性を確保することは留意するだけの価値があります。

 探し方のもう一つのコツは、相手の友人数を見ることです。友人数が多いほどネットでアクティブですから、友人登録をお願いする(mixiでいう「ミクリク」)とき、受け入れてもらいやすいです。友人数が極端に少ない人や、最終エントリーが数ヶ月も前の人は、あまり期待できないので友人登録はお願いしませんでした。これは、効率という面からも重要ですが、SNSによっては友人登録の上限があったりするので、はじめから考慮しておく必要があります。(Yahoo!360の場合は200人まで)

 それから、もう一つの留意点は、自分が勉強したい言語によって、SNSを選ぶ必要もあるという点です。ベトナム語ならやはりyahoo!360がイチオシだし、GoogleのOrkutはなぜかポルトガル語が55%を占めているそうです。韓国語ならCyworldが有名ですよね。

 もしご自分の勉強したい言語で、どのSNSが有力かを知りたかったら、こちらを見てください。 http://en.wikipedia.org/wiki/Social_network_service
 これはSNSに関するwikipediaの説明ですが、左の欄外の一番下に、「languages」という欄があります。ここから自分の学習言語に飛べば、その言語でSNSについて書いてありますから、その言語で有力なSNSが見つかるのではないかと思います。

 こうして友人を増やしていくと、自分で時間を捻出して勉強することを意識する必要はありません。コメントされたら無視するわけにはいかないので(といいつつ、自分も時々返事できてません、すみません)、辞書を見ながら一生懸命コメントを解読します。また、友人の更新情報もどんどん飛び込んできます。「日本のアニメが好き」とか言っているくせにドラえもんしか知らないベトナム人には「せめて宮崎駿ぐらい見とけよ」と言いたくなりますよね。

 つまり自分から教室に出向いていくのではなく、教室の方がどんどんこっちに飛び込んでくるイメージです。「語学は根気がないとダメ」なんていう時代はもう遠い昔の話。一度こういう環境を築き上げさえすれば、あとは逃げたくても逃げようがありません。気が付けば、自分の学習したい言語の世界にどっぷりと浸っている自分に気付くはずです。

 こうして母語話者とコミュニケートする方法は、とても楽しいのですが、時には賛成したくない意見を目にしたり、反論したら逆にやりこめられたりすることもあるかもしれません。でも、それは日本語でも同じですよね。つまり、そうやってその言語で泣いたり笑ったりしている「あなた」は英会話学校の生徒ではなく、すでにその言語の「話者」なのです。

 この方法をどうか試してみてください。このページを読んでいる「あなた」にとって、扉は目の前にあるのです。そして、その扉を開いて、向こう側に一歩踏み入れれば、あなたはいつの間にかその言語の話者になっているはずです。

posted by 村上吉文 at 09:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
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