
昨日、ハノイ大学の国際シンポジウムで田尻悟郎氏の言葉が紹介されていました。最初に教えてくれたのは「ようすけ」さんだったと思いますが、それ以来、いろんなところで目にするようになりました。要するに、こういうことです。
「下手な教師は教える。上手い教師は学ばせる。そして、素晴らしい教師は生徒の心に火をつける」
だけど、これはちょっと
誤解を招く表現だと思うので、さらに一つ付け加えさせてください。
「下手な教師は教える。上手い教師は学ばせる。そして、素晴らしい教師は生徒の心に火をつける。すごい教師は使い分ける。」
当たり前のことですが、既に動機の高い学習者に対して動機を高めようとするのは、あまり効果的な時間の使い方ではありません。そして、残念ながら動機を高めても、学習に結びついた行動が取れない学習者も数多くいるのです。つまり、学習者は多様であり、その多様性に応じた行動を取る必要が、教師にはあります。
では、どう使い分ければいいのか。
この疑問に対して一つの答えになりそうなものが、WILL-SKILLマトリクスです。もとはビジネス用語ですが、教育関係者にも非常に有益な考え方ではないかと思います。
どんな内容かというと、やる気と能力の高低を使ったマトリクスで特定のグループを以下の四つに区別します。
やる気も能力も高い
やる気はあるが能力は低い
やる気はないが能力は高い
やる気もなく、能力も低い
で、これに対して、以下のように対応するのです。
やる気も能力も高い学習者には「委任する」
やる気はあるが能力は低い学習者には「指導する」
やる気はないが能力は高い学習者には「やる気を出させる」
やる気もなく、能力も低い学習者には「命令する」
これは、田尻氏の言葉を借りれば、このように言い換えることができるかもしれません。
やる気も能力も高い学習者には「気づかせる」
これは田尻氏のいう「気づかせる」よりももっと高いレベルかもしれません。たとえば「日本語を勉強したらもうかるよ」ぐらいのレベルです。能力もやる気もあれば、それだけで自分に適切な教材を見つけだし、勝手に成長してくれます。こういう人たちに下手に指導すると「そんなこと分かってるよ。こっちのツールの方がクールなんだよ」と言われて、却って効果が下がります。
やる気はあるが能力は低い学習者には「教える」
このあたりのグループが、もっとも教師を必要としている人たちかもしれませんね。自分にあった学習方法を見つけてあげれば、上記のグループと同じぐらい効率的に成長できます。
やる気はないが能力は高い学習者には「心に火をつける」
田尻氏も指摘しているとおり、これは簡単にできる仕事ではありませんが、火を付けることにさえ成功すれば、この人たちも勝手に成長してくれるのですから、後は楽です。火の付け方として参考になるのは、ARCS動機付け理論ですね。以下に書いていますので、ご参照ください。
「「学習の高速道路」とARCS動機づけモデル」
http://mongolia.seesaa.net/article/100461218.html
やる気もなく、能力も低い学習者には「?????」
元のマトリクスでは「命令する」ですが、この部分は、田尻氏の短い言葉では、ちょっとお考えが分かりません。
ただ、やる気はないが能力は高い学習者に「心に火をつける」ことができるのなら、このグループを「やる気はあるが能力は低い」グループに変身させることもできるはずです。
さて、文中「田尻氏の言葉」という表現を使いましたが、田尻氏自身は「座右の銘」とも言っていたので、オリジナルではないのかもしれません。
また、田尻氏は自律学習の時間中に「分からない子は前に出ておいで。教えてあげるから」というようなことを言っていたという資料もありましたので(申し訳ありませんがソースが見つかりません)、田尻氏について「使い分けができていない」と批判するつもりはまったくありません。この言葉ばかりが有名になってしまうと誤解を生んでしまうのではないかと思ったのですが、それは田尻氏の責任ではないでしょう。
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自分が理解していることを書きますと、「教える→学ばせる→心に火をつける」という階層性のある概念なのかなーと思っていました。教えることしか出来なかった教師が「学ばせる」こともできるようになって、さらにその上位が「心に火をつける」のかなと。
最近自分はようやく実感として「学ばせる」という段階がほんの少し見えてきました。教えることすら十分にできてないけれど、時々「学ばせる」ことの片鱗が見え隠れしてきたような。前にご紹介されていたアクティブラーニング社で採用されている「人に教える」という方法も、田尻教室では取り入れられています。でも、おそらくこれはまだ「学ばせる」段階の方法なのかなと思っています。できる学生には教師役をさせてさらに理解を深まらせ、出来ない学生には「友人から教えてもらう」という、より定着が高いとされる経路を確保する。それでもダメな学生には完全個別指導。教室活動のダイナミズムを最大限に発揮させつつ、個々に応じた指導を成立させる…。これが、「教える→学ばせる」というレベルまで達した教師が実現可能な指導なのかなーと。
「日本語ができるともうかるよ」というのは、学習者の人生がガラリと変わるレベルの話ですよね。僕は「心に火をつける」というのがこの「人生が明らかに変わる」レベルのことなのかなと理解していました。なんというか、「今までとは違う自分になることに熱中する」といいますか…。『エンパワーメント』、本気で世界が変わっちゃうといったレベルのことなんだと思っています。
いずれにせよ、お書きくださったことは学習者一人ひとりを見ていないと絶対に出てこない発想ですよね。今の学期も終盤なんですが、「変に慣れてしまって、一人ひとりを見てなかった」ことに気付かせていただきました。最後の追い込みにWILL-SKILLマトリクスを使わせていただきます!
ただ、あの短い言葉は「そうか、上手な先生は教えないんだ・・・」「教えちゃいけないんだ・・・」というような誤解を与えかねないんですよね。実際には田尻氏自身も「前に出ておいで教えてあげるから」と言っているとおり、相手によっては「教える」こともあるんですが。
誤解されたままだと、指導が必要な学生群に対しても適切な処置がなされないような危惧がありましたので、今回の記事を書きました。(いうまでもなく、ようすけさんに対しては、そういう心配はしていません)
研修も残り1か月をきり、そろそろ現地での教え方をいろいろ模索しているところで、ブログを見ながら勉強させてもらってます!
人に何かを指導するというのは本当に難しいです。特に教師は、こちら1対相手複数の場合が多いので、相手の多様性に対応しにくいというか、ついついひとまとめに扱ってしまうんですよね。
今回の4つの区分はとても参考になりました。
ただ、やる気もレベルも高い人でも、誰かに評価されないとそのやる気・レベルが低下することもあるみたいで、一番楽なようでけっこう難しいです。
がんばります!
ハンガリーのF島さんとは連絡取ってますか?
それからこの人とも連絡取っておくといいですよ!
「ゆに通信」http://juni.blog.so-net.ne.jp/
いろいろ情報あってよかったです
行くのが楽しみになりました!