2008年10月01日

超速日本語をやってみた

僕はここで何度も書いているように日本語教育のe-learningが発展することを願っているものなんですが、どうも評判のいいものが出てきませんね。

iKnowはまだやっていないんですが、「ついに来た! 英語学習SNSのiKnowが日本語学習に参入!」(http://mongolia.seesaa.net/article/106330603.html)へのミトさんによるコメントや、そのほかメールベースでも芳しい評判を聞きません。

で、もうひとつの「超速日本語」もやってみたんですが、これもイマイチ。

でも「イマイチ」で切り捨てても何の進歩もありませんので、改善のために問題点を指摘しておきます。

まず「単語選択」の練習。
第八問でいきなり既出の問題(第七問までに出題された問題)が出ました。九問目も同じでした。また、「見える」「遅い」なども出てきますが、これらは初級語彙ではないでしょうか(リンク先のデモは中級)。少なくとも「人生経験」「卒論」と同じレベルではないはずです。

次の「発音選択」の練習ですが、ここは最初の問題の漢字をひらがなにしただけです。「「発音選択」という名前の練習にするなら、ひらがなで表示するのではなく、音声で「1、寝坊、2,マンション、3,自己紹介」と読み上げてから数字を選ばせるような練習がふさわしいのではないでしょうか。今のパターンなら、「ひらがな選択」などの名前にすると分かりやすくなると思います。

三つ目は「発音入力」。
画面に表示されているものをキーボードで入力するのですが、特に特殊拍の入力方法がかなり限定されているので、私にとってはやりにくかったです。
例えば、「マンション」が「manshon」では不正解になります。「mansyon」ならOKですが。
「異文化」は「ibunka」が不正解。試さなかったのですが「ibunnka」なら正解だったかもしれません。「調査」は「chousa」が不正解。「tyousa」ならokでした。

「文型選択」
「いつも嫌な顔ひとつせず(      )くださいました。」という部分の音声を聞いて答えるのですが、選択肢が「相談にのった、相談にのって」だけなので、聞かなくても解答できます。文法を考えさせるのでしたら、逆に音声がない方が効果的でしょう。

「リスニング」
男性の声優がいまいちです。一人で複数の声を演じているのですが、演じわけが全然できていないように聞こえます。というのも、会話が交錯すると自分でボケて自分でツッコミを入れているように聞こえてしまうのです。
内容も、たとえば「三好学の意味を中国語で説明すると何ですか」の選択肢に日本語しかなかったりします。「三好学は中国語として読むとどんな意味になりますか」という出題なら理解できるようになるでしょう。
そもそも、「メモを取ってはいけません」という指示がある場合は、あんな長い音声の後であんな細かい内容の質問は出題するべきではないと思います。あれでは記憶力を計っているだけではないでしょうか。

「リスニング」には、「発音入力」と同じように音声を聞いてキーボードから入力する問題もあるのですが、これも採点基準に大きな問題があります。私が不正解になったものだけでも、以下のように大量にあります。左が不正解で右が正解です。

「ああよかった」(不正解) 「あーよかった」(正解)

「はいどうぞ」(不正解) 「はーいどうぞ」(正解)

「ええ」(不正解)「えー」(正解) (フィラーではなく「はい」と同じ肯定の返事です。)
5.jpg

「えーまあ」(不正解)「ええまあ」(正解)
「でしょ」(不正解)「でしょう」(正解)

それから「ひらがなでにゅうりょくしてください」という指示なのにピンインで入力しないと不正解になる部分もありました。
6.jpg


音声では明らかに「そのまえにちょっと」と言っている部分が「そのまえちょっとに」と入力しないと不正解になる部分もありました。
7.jpg

「次へ」をクリックしても音声が始まらないのでもう一度クリックしたらいきなり不正解になったところもありました。今思うと、音声データの最初に無用な無音の部分があったのでしょう。

それから、何といっても、フィードバックが分かりにくいのが問題です。回答を入力してエンターを押した瞬間に正解数の表示を見ていないと、その解答が正解だったのか不正解だったのかが分からないのです。フィードバックがそれ以外にないのですから。最初のうちは何問正解したか覚えていますが、58問も延々と続くので、「さっきよりも一つ増えているな」なんて考えてはいられません。「ピンポン!」「ブー!」などの音を入れるとか、「正解!」「残念!」などの文字を表示する(そしてしばらく表示し続ける)などの工夫は必要でしょう。

その後に「メモを取りながらきいてください」という練習(実際はひたすらディクテーション)があるのですが、もうこれは58問もやってみる気力がなく、パスしました。

ということで、私の採点結果です。
9.jpg
1と2は、日本語母語話者であり、日本語教師を20年ほどやっている人間の結果としてどうなのでしょうか。正答率が66%と74%です。3のディクテーションはあきらめたので0点でもいいんですが、1と2に関しては、これが私の日本語能力を示しているのか、それとも、このe-Learningシステムの評価を示しているのか、製作者のみなさんは、よく考えていただきたいと思います。

これだけでも、ゼロから作ったとしたら、とても大変な労力がかかっただろうと思います。でも、はっきりいうと、「とてもがっかりした」というのが正直な印象で、誇らしげな大量のプレスリリースなどを目にすると、非常に違和感を覚えます。


posted by 村上吉文 at 08:35 | Comment(5) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
ようするに、日本語教育(いや、言語教育にド素人の方が、それを自覚することなく作成し、その道のプロや実際の学習者で完成具合を見てもらわなかったと言うことですね。

コンピュータのシステム専門家が作ったのですかね? ご報告では、それも怪しげに思えますが…。

つまり、金や労力をかけず、見かけや見栄えだけを整えたものとしか思えません。
Posted by ichamonologyst at 2008年10月01日 19:51
イチャさん、こんにちは。
まあ、私としてはそこまでは申し上げられませんが、できれば「開発中のバージョンが間違って公開されてしまった」とか、そういう事情だったら嬉しいですね。

Posted by 村上吉文 at 2008年10月04日 18:21
iKnow! 後日談です。

こちらにコメントを書いた後、iKnow!にも質問を送ってみたところ、ちゃんとお返事をくれました。そこは立派ですね。でも、返事の内容がいただけません。要するに、ジャック・ハルペンがOKって言ってるんだからいいのよ、ということのようです。

以下が、私が送った質問とそれに対する返答です。

*****
こんにちは。いつも楽しく英語の勉強に利用させていただいています。
仕事が外国人に日本語を教えることなので、今年の初めからずっと日本語学習プログラムの登場を待っていました。
教え子の何人かは、もう1月から登録してスタンバっています!
で、今日初めて使ってみたのですが、コンテンツに少々疑問を感じました。
エラそうかもしれませんが、こういうフィードバックをすることが、無料で素晴らしいものを使わせている者からの感謝の表れと受け取っていただければと思っています。

さて、今日はステップ1のiKnowアプリを使ったのですが、「円」の意味がcircleというのは、このレベルにはふさわしくないですね。おそらくYenの間違いではないでしょうか?
それから「家」という漢字には「うち」という読み方はありません。
確かに、日本語使用の実態からいえば、多くの日本人が「家」を「うち」と読んでおり、ワープロでも変換されます。
そう考えると、現在は過渡期なのかもしれません。
でも、国内外を問わず、ある程度フォーマルな機関で日本語を学ぶ学習者にとっては、「家」を「うち」と覚えることは不利益になります。
以上二点、ご検討ください。

*****
いつもiKnow! をご利用いただきましてありがとうございます。
さて、ご質問の件ですが、弊社は<ahref="http://www.cjk.org/cjk/cjki/cjkiintj.htm">鞄中韓辭典研究所</a>の提供データに基づいてサービスを行っており、指摘された2点についても、それに従った判断を行っています。

専門的立場からのアドバイスを頂き、誠にありがとうございます。

これからもiKnow! をどうぞ宜しくお願い申し上げます。
Posted by みと at 2008年10月09日 12:32
弊社商品「超速日本語」に関する率直なご意見をいただき誠にありがとうございます。
検索をしていて先生のブログを拝見させて頂きました。
実際に使って頂いた方の意見、
しかもプロの方からの率直な意見は私たちにとっては宝です。

「超速日本語」は、早稲田大学で研究した教育理論と「認知言語学」の理論を応用し、
子供が言葉を覚える過程をシステム化した「超速シリーズ」の日本語学習版でございます。
聴覚のイメージを形成するということを重点に置いたシステムです。
暗記の促進に重きを置いていないという事が、他社と異なるシステムだと自負しております。
コンテンツとして北京大学の国家認定教材「総合日語」を採用している為、
とりわけ漢字圏の方々からは実際にご利用頂き、支持を頂いております。

ただし、頂いたご意見にある様に、
教育者の視点に立ってこのシステムを見る時、
先生と同じような感想や要望を頂くとも正直ございます。
これらの貴重なご意見を基に、バージョンアップを進めているのが現状です。
今後は、日本語教育の専門家の方たちと連携を深めて
学習者の効果を優先したシステム作りをして参ります。
なお、新しいバージョンも半年以内にリリース予定です。

eラーニングで語学を学ぶという事には、将来性もありますが確かに限界がございます。
ただし効果的な使い方には、市場の皆様の想像以上の成果があると信じています。
先生たちがこれまで続けてくださった日本語教育を、サポートするという立場から
皆様に貢献できる事を願っております。

今後とも、専門的立場からの忌憚のないアドバイスを頂ければ幸いに存じます。
この度は、誠にありがとうございます。
今後とも超速日本語をどうぞよろしくお願い申し上げます。


超速シリーズ開発元 株式会社WEIC 広報担当
Posted by 超速シリーズ開発元 株式会社WEIC 広報担当 at 2008年10月24日 21:00
コメントありがとうございます。

「効果的な使い方には、市場の皆様の想像以上の成果があると信じています。」という部分、全く同感です。

すばらしい教材を開発してくださることを、お祈りしております。

Posted by 村上吉文 at 2008年10月25日 07:28
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