2008年06月14日

「学習の高速道路」とARCS動機づけモデル

「学習の高速道路」を疾走する際、成功の秘訣になるのが動機の維持ではないかと思っています。一昨日の講演でもその点を強調したかったのですが、時間が足りずに触れられず非常に残念でした(梅田望夫さんの受け売りっぽくなってしまったのは、これが大きいような気がする・・・)。ご紹介する予定だったARCSモデルが、idea*ideaさんのところで偶然取り上げられていたので、これも何かの縁かと思い、こちらもご紹介しておきます。

以下のスライドが、お見せするはずだったものです。


まず最初はAttentionですが、要するに「おもしろそうなもの」です。
これはさらに三つに下位分類できます。まず、「感覚的な刺激として面白そうなもの」。語学の「学習の高速道路」でこれを応用するには、ネットで例文を探す際、MARSFLAGかグーグルのイメージ検索を利用すると、面白そうなページが直感的に選べて便利です。

次に、「知的探求心を刺激するもの」。要するに、「もっと知りたい」という感情ですが、これを語学に応用するには、ミステリーを教材にして「先を読みたい」と思う気持ちを利用することなどが考えられそうですね。

「面白そうなもの」の三つ目は「変化性」です。これに関しては、このブログでも何度か紹介している羽根拓也さんの「意図的変化」なども応用例としてあげられそうですし、私自身の実践としてはipodをシャッフルモードで聞くことなどもあります。ベトナム語を聞いているときにシャッフルするだけで新鮮な気持ちになりますし、音楽なんかも混ぜておくと「ここでこう来たか!」という驚きが常にあります。ブログやSNSで他者との交流を始めると思わぬコメントをもらうこともありますが、これも変化性を利用して動機を維持することになります。

ARCSの「R」は「Relevance」で、自分との関連性ですね。JICAなどでは「妥当性」と訳されることが多いです。

これはたとえばベトナム語を勉強するときに「吹雪」という語彙を見てガクッと動機が落ちたことがありました。ベトナムという国(あるいはベトナム語を学ぶ自分)と「吹雪」の関連性が薄いということは、要するに勉強しても役に立たないわけですよね。

しかし、学習の高速道路では、基本的に学習の題材は自分で選ぶことになるので、この「R」の部分はまず問題になることは少ないのではないかと思います。

次の「C」はConfidenceで、要するに「むずかしくないもの」です。一昨日の講演でご紹介したweb問題作成ツールは、自分で問題を(それも非常に簡単に)作れるので、高得点が期待でき、自信につながります。

また、ブログを書くと、過去の自分の記録が残り、その結果自分の成長が実感できるので、それが自信(Confidence)につながります。

ARCSの最後はSatisfactionで、直訳すれば「満足」ですが、これって結局「見返りがあるもの」なんじゃないかな。もちろん、アドセンスやアマゾンアソシエイトによる金銭的な見返りもそうなんですが、他の人からほめられるとか、達成感を得るとかそういう精神的見返りも含めると、「見返りのあるもの」でいいような感じがします。

以上、私なりにまとめてみましたが、idea:ideaさんは以下のようにまとめています。
ちょっと気になる

自分に役立ちそうだ

自分でもできそうだ

やってよかった
http://www.ideaxidea.com/archives/2008/06/post_550.html


なお、日本語教育との関連で言えば、前にもご紹介しましたが「独習による日本語学習の支援―その方策とARCS 動機づけモデルによる評価―」もあります。ここではICUの鈴木庸子先生が以下のようにまとめています。
Attention
注意喚起、興味、関心
A-1: 知覚的喚起
A-2: 探究心の喚起
A-3: 変化性
Relevance
関連性
R-1: 親しみやすさ
R-2: 目的指向性
R-3: 動機の一致
Confidence
自信
C-1: 学習要求
C-2: 成功の機会
C-3: コントロールの個人化
Satisfaction
満足感
S-1: 自然な結果
S-2: 肯定的な結果
S-3: 公平さ


もうちょっと具体的なものとしては,NTTデータ経営研究所シニアマネージャー加藤真由美さんの「MSAP(Mind Shift Action Program)モデルによる効果的な研修の実践的手法」もあります。これは日本語教育関連ではありませんが、タイトルにあるように、教育関係者なら役に立つでしょう。
(1)Attention(注意・関心:おもしろそう)
色彩にも配慮し、視覚的にも見栄えがよく楽しいテキストを作成し、スピード感・リズム感のある司会進行を心がけること。
柔軟で変化に富んだタイムテーブルにより、受講者にマンネリ感を持たせないこと。(受講者の心情に合った音楽を効果的な場面で流すこともある)
(2)Relevance(関連性:やりがいがありそう)
職場で活用できそうな現実的かつ具体性がある課題設定や、親近感のあるケーススタディ、ゲーム感覚で取り組めるプログラム等で、受講者の興味に合ったトピックスや時勢に合った話題を盛り込んで実施すること。
(3)Confidence(自信:やればできそう)
プログラム1つ1つのゴールを明示し、現状とゴールとのギャップを絶えず確認しながら実施すること。加えて、グループワークや個人ワークの中で、行き詰まっている受講者には、研修講師が臨機応変に適切なヒントを与えながら進めること。
(4)Satisfaction(満足感:やってよかった)
受講者と研修講師、そして受講者同士の信頼感を醸成し、互いに良い点は褒め合い、改善点は率直に指摘し合うような雰囲気作りができるよう配慮すること。
研修講師は、「北風と太陽」の物語でいうところの「太陽」となり、温かく優しい言動で受講者に接すること。
http://www.keieiken.co.jp/monthly/2008/0804-7/index.html


ケラーの本家はこちらです。
http://www.arcsmodel.com/
posted by 村上吉文 at 06:12 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
はじめまして。
ARCSモデルとの関連で引用いただいた加藤真由美です。

最近(2008年9月)、引用いただいていることに気づき、「むらログ日本語教師の仕事術」を楽しく拝読させていただいております。

頑張ってください。
Posted by 加藤真由美 at 2008年09月22日 12:44
加藤先生、コメントありがとうございます。
非常に具体的、実践的な内容でしたので、こちらで紹介させていただきました。
今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by 村上吉文 at 2008年09月24日 18:51
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