2023年05月05日

朗読してもらえば「自分の言葉になっているか」がすぐ分かる



冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

本日お話したいのは、朗読してもらうと自分の言葉になっているかがすぐ分かるということです。これを話す理由は、ChatGPTの使い方に関して心配している方が多いからです。

僕はやはり、ChatGPTやDeepLなどを語学学習で利用するときは、自分では理解できないレベルの作文を提出してはいけないというルールは守るべきだと思います。ChatGPT自体を使うことは作文の際に禁止しなくても良いとは思っていますが、少なくとも自分が書いた文章を理解できない場合は、それを語学の授業の成果物として認めるべきではないと考えています。しかし、そうすると、「理解できていないのに理解できているふりをして提出してしまう学習者にどう対処すればいいか」という問題が次に来ます。

それも、僕は基本的には別に何もしなくて良いと思います。理解できないようなものを大量に作文しても、それは学習者本人には全く役に立たないので、損するのは学習者本人だけだからです。それをちゃんと指摘した上で、それでも本人が理解できるレベル以上の格調高い作文を書いてくる場合は、それで良いと思っています。

ですが、学校の規則上、そういうことはできないこともあるかもしれません。そういう場合は、自分の作文を朗読してもらえば良いと思います。学習者が自分の作文を朗読する際に、イントネーションやプロミネンスを聞けば、自分が話している内容をちゃんと理解できているかどうかは教師にもすぐ分かります。いや、これは教師でなくても誰でもすぐ分かります。理解していない文字の羅列をただ音声化しているだけなのか、それともちゃんと意味が分かっていて読んでいるのかは、一目瞭然です。

それでは、どのように朗読の音声や動画を提出するかということですが、さまざまなアプリが存在しており、皆さんの環境に合う便利なものを使用すればいいでしょう。最も簡単なのは、VOKAROOというアプリが非常に有名です。しかし、VOKAROOは非常に簡単ですが、2倍速や3倍速で再生することができないため、教師が学習者の朗読を確認する際には、これが非常に負担になると思われます。2倍速や3倍速で聞きたいと思う先生方は多くいらっしゃるでしょうから、そのような場合は他の、倍速再生が可能なアプリやウェブサービスを使用すれば良いと思われます。

例えば、YouTubeもそのようなサービスの一つです。YouTubeでは2倍まで速度を上げることができ、さらに最大10倍ほどまで再生速度を上げることができる拡張機能も存在します。ですので、YouTubeにアップロードするのも一つの方法だと思われます。ただし、YouTubeの場合は音声ファイルのみをアップロードすることはできず、画面キャプチャーが必要になります。画面をキャプチャーして実際に読み上げている文章を表示し、それを音声で読み上げている部分を録画して、それをYouTubeにアップロードする形でもいいかもしれません。YouTubeには「一般公開」の他に、「限定公開」という方法もあり、リンクを知っている人だけが視聴できるようにすることができます。もし内容を全員に見せたくない場合は、そのような限定公開のリンクを教師に提出することもできます。

また、音声だけでやりたい場合は、僕が使用しているものでも最も簡単なのはSpotifyAnchorというアプリです。先程も言及しましたが、VOKAROOのようなもので録音したものをMP3などの音声ファイルにして、SpotifyAnchorにアップロードし、それをGoogle Podcastに接続すると、Google Podcastでは少なくとも3倍速ぐらいまでは倍速再生できると思われます。SpotifyAnchorのウェブサイトでは、直接2倍速や3倍速で再生する機能はおそらく存在しないと思いますが。

さて、こういうことをすると、学習者にとっても教師にとっても手間が増えてしまいます。学習者はそれを朗読しなければいけないし、それをアップロードしてシェアしなければいけないという問題が出てきますが、教師の場合はそれを確認するために朗読を聞かなければいけません。

確かにそういう手間は増えてしまいますが、これはただ単に「学習者の不正を防ぐ」ということだけではなくて、学習効果も僕はかなりあると思います。いわゆる音読になるし、しかもそれが自分の書いた文章なわけです。自分の書いた文章なので、第2言語習得で言われているスピーチプロダクションモデルでいう最初の「メッセージの生成」とか「概念化」の部分をちゃんとあるわけです。最初は「概念化」と言いますが、「概念化」して「形式化」して「音声化」するというモデルです。そういうスピーチプロダクションモデルに沿った形で、しかも、発話のところまでいっているので、第2言語習得上も僕はこれはそれなりに学習効果があるのではないかという風に思っております。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
この記事の音声版
https://spotifyanchor-web.app.link/e/r5KuedWIxzb
posted by 村上吉文 at 14:06 | TrackBack(0) | 人工知能と日本語教師 | このエントリーをはてなブックマークに追加

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